クリーンヒット!            060

60 大江山 いく野の山の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立

 おえやま いくののやまの とければ まだふみもみず あまのはしだて


【カテゴリ】人生、時代

【タグ】女性 貴族 平安中期 金葉集


【超訳】言いたければ言ってれば?

母のいる丹後って遠いのよ? 私は行ったこともないし、母に代作を頼んだことも、母から手紙も受け取ってないんだけど、それが何か?


【詠み人】小式部内侍こしきぶのないし

和泉式部(56)の娘。母とともに中宮彰子に仕える。


【決まり字】おほえ(3)


【雑感】当時、彼女の歌が優れているのは、お母さんの和泉式部が代作しているのではないかと噂されたそうです。これは歌合うたあわせに呼ばれたときに、藤原定頼(64)に「お母様に代作は頼みましたか。(お母様のいらっしゃる)丹後から手紙は届きましたか」とからかわれ、即興で返した歌だそうです。

 目の前で詠んだのだから、代作のわけがない。とっさの返歌だったのに、掛詞をいくつも使ってその場の人々をうならせたそうです。定頼は返歌もできず、退散したそうです。

 なんだか、胸がスカッとするエピソードですよね。その場で歌を返すだけで代作疑惑は晴らしているし、その上にこのような素晴らしい内容の歌を詠んだのですから。「代作なんてしてもらってません」と正面切って反論するのではなく、さりげなく切り返した小式部内侍。クリーンヒットです。いや、逆転満塁ホームラン? 

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