華やかなる宮中絵巻           058

58 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする

 ありまやま いなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする


【カテゴリ】女子悲恋

【タグ】女性 貴族 平安中期 後拾遺集 恋


【超訳】なに言ってんのよ。

心変わりだなんて、どの口が言うのかしら。そっちなんじゃないの? 心変わりしたのは。私? どうかしらね。変わってないんじゃないかしら?


【詠み人】大弐三位だいにのさんみ

紫式部(57)の娘。母の死後、中宮彰子に仕える。


【決まり字】ありま(3)


【雑感】紫式部の娘さんは恋の歌で選ばれました。宮中にお仕えしていたころ、ある貴族と恋をしたそうです。そのカレがしばらく通ってきてくれなくなった。おまけに自分のことは棚に上げて「あなたが心変わりしたのではないかと心配です」なんて歌をよこしたそうです。「なに言ってんのよ。心変わりはあなたでしょうよ。私は変わってないわよ」と皮肉たっぷりに返した歌がこの歌です。


 本来、良家の姫はお屋敷から一歩も出ず、暮らしていました。例外が宮中への出仕お勤めだったと思います。天皇や天皇のお后さまのお付きとしてお仕えするのです。娘を宮中のお務めに出すのはその家にとってもステータスでしたし、そこで気に入られて天皇の女御(奥様)になることもあったようです。家に閉じこもっていた年頃の女の子が突然華やかな御所にあがって、大勢の人と出会い、最上の文化に触れ、まるで物語の世界のようだったかもしれませんよね。そう、この方のお母様の書かれた物語のように。そんな華やかな宮中ではさぞ恋の花も咲き乱れたことでしょう。


 実際、この方や紫式部が仕えた時代の宮中は華やかだったようです。彼女たちがお仕えした中宮彰子さまは優雅なサロンのようなものを作り、そこで紫式部や和泉式部たちを囲い、趣味にいそしんだようです。おしゃれに装い、知識も教養も美貌も競わせ、まさに宮中に華を添えたのでしょうね。「オンナの戦い」なんていうのも想像がつきますが、表立っては美しい光景だったと思います。ウラは……? ドロドロ? 「大奥」の世界? 

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