恋に破れた結末             045

45 哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな

 あはれとも いべきひとは おもえで みのいたらに なりぬべきかな


【カテゴリ】男子悲恋

【タグ】男性 貴族 平安中期 拾遺集 恋


【超訳】もうだめだ。

もうキミに会えないんなら、せめて同情くらいはしてくれない? 誰にも心配もされずにオレは消えていくんだからさ。


【詠み人】謙徳公けんとくこう

藤原伊尹ふじわらのこれまさ藤原忠平ふじわらのただひら(26)の孫。


【決まり字】あはれ(3)


【雑感】好きだった女性からつれなくされて、逢ってもらえずに詠んだ歌だそうです。逢えないんだったら、せめて「かわいそうに」と憐れんでくれないか。それも叶わないならあなたを想いながらむなしく死んでいくことになるだろう、と嘆いています。

 こうして自分の弱いところを見せて女性の同情をひこうとしているのか、本当に相手を想いすぎて落ち込んでいるのか。

 源氏物語の「柏木」のエピソードはこの歌が投影されているんだそうです。となると、恋に溺れて、恋に破れて、身を滅ぼした男の気持ちを表した歌ということになるのかしら?

 「柏木」も許されない恋のお話です。ざっくりまとめると、才能豊かな若手のホープ柏木中将かしわぎのちゅうじょうが光源氏の奥さんを好きになっちゃった。許されない恋なんだけど、突っ走っちゃって子供までできちゃった。彼女(源氏の奥さん)は子供を産んでから、罪の意識で出家して尼になっちゃう。尼になったってことは自分は捨てられたってこと。源氏にもバレちゃった。彼女にはフラれるわ、彼女のダンナにはバレるわで具合が悪くなり、とうとう死んでしまった、というストーリー。

 このお話に発展させたとなると、元のこのお歌も恋の病に倒れていく歌ってことになるのでしょうか。

 なんだか複数の人と恋愛を楽しむ人がいると思えば、好きな人に相手にされなくなって、「もう死にそうだ」と落ち込む人が居たり……。この時代の方々って恋に全力投球ですよね。

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