月はいづこへ?             036

36 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ

 なつのよは まだよながら あけぬるを くものいづこに つきやどるら


【カテゴリ】夏

【タグ】男性 貴族 平安中期 古今集 月


【超訳】もう朝? 

まだまだ夜だと思ってたのに、もう夜明けなわけ? 月もさ、もう仕事は終わりで雲のどっかに泊まっちゃってんの? 


【詠み人】清原深養父きよはらのふかやぶ

清少納言の曾祖父。


【決まり字】なつ(2)


【雑感】月と言えば中秋の名月に代表されるように秋の歌が多いのですが、これは珍しい夏の月の歌です。秋の「夜長」に対して夏は「短夜」といいます。月を擬人化して見えなくなってしまったことを宿に泊まったと例えています。夏らしい明るいサファイヤブルーの夜空にアッシュグレイの雲。そこに宿ったパールホワイトの月。

 この歌人は清少納言(62)のひいおじいさま。清少納言は「枕草子」で「夏は夜、月のころはさらなり」と書いています。おそらくこれはこのひいおじいさまの歌を踏まえてのことではないか、その感性や美意識が受け継がれているのではないかとされています。

 月、大好きです。ワタシ。毎日昇っては沈んでいく月ですが、毎日見られるとは限りません。清原深養父さまのおっしゃるように雲のホテルに泊まっているときは地上からは見えません。雨の日もそうですよね。雨雲ホテル? 空にはあるのだろうけど、見られない。それに昇ってくる時間帯が自分の生活時間帯とあわない日も見られない。そんなこんなで見上げた空にそれを見つけた日はなんとなく幸せな気分になれるのです。いつもあるけど、見られるのは当たり前じゃない。そばにあるけど気づくことができるのは当たり前じゃない。なんか幸せと似ているのかもしれません。月って。だから見惚れて、焦がれるのかもしれません。



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