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26 小倉山 峰の紅葉ば 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ

 ぐらやま みねのもみじば こころあらば いまひとたびの みゆきまたな


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 貴族 平安中期 拾遺集


【超訳】できることなら

紅葉よ、もしお前に人の心があるのなら、天皇がいらっしゃるまで散らないで待っていてくれ。お願いだ。あまりにお前が美しいからわが子にも見せたいんだよ。


行幸みゆき 天皇の外出や旅のこと


【詠み人】貞信公ていしんこう

藤原基経ふじわらのもとつねの四男、藤原忠平ふじわらのただひら

貞信公は死後につけられたおくり名。

藤原時平・仲平は兄弟。摂政・関白となり藤原氏全盛期の礎を築いた。


【決まり字】をぐ(2)


【雑感】作者の藤原忠平ふじわらのただひらは上皇(天皇を引退なさった方)のお供で小倉山へと出かけ、上皇が美しい紅葉に感動されました。天皇であるわが子にも見せたいものだ、と上皇がおっしゃったのを受けて、忠平がこの歌を詠んだそうです。紅葉を擬人化して、心があるなら、もう少し散らないで待っていてくれ、とお願いしています。

 美しい景色を見たとき、その場にはいない愛しい人や親しい人にも見せてあげたい、そのためにも今目の前に広がる風景を留めておきたいと願う気持ちはよくわかります。桜もそう、お願い、どうかもう少し散らないで。夏の花火は夜空に咲いた状態で止めてしまいたい。白い雪景色もどうか溶けずにいてくれないかしらと思ってしまいます。

 現代でなら、写真も動画も撮れますけれど、それでも本物の景色を見せてあげたいと思うのですから、このころの方々はもっとそれを望んだことでしょう。まして、上皇や天皇など、気軽に外出が許されなかったご身分ではなおさらのこと。

 瞳を閉じたらシャッターが押されて、念じて瞳を開けたらその写真が目の前に映し出されればいいのに。

 でもそんな未来って意外とすぐにやってきそうな気もします……。

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