これは独占したくない          023

23 月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど

 つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 貴族 平安中期 古今集 月


【超訳】僕だけが不幸なんじゃ……

秋の綺麗な月を見ているとね、なんだかいろいろと思いだしちゃって物悲しくなるんだよね。別に僕ひとりに秋がやってきたんじゃないってわかってはいるんだけどね。


【詠み人】大江千里おおえのちさと

漢学者。在原業平(17)、行平(16)は叔父にあたる。


【決まり字】つき(2)


【雑感】22番「吹くからに」に引き続いての秋の定番、物悲しい歌です。おまけにこの歌人は秋は自分にだけきたんじゃないか、秋の悲哀は僕だけが味わっているんじゃないか、と嘆きます。そんなはずはないんだけどね、と自虐的にもとれます。

 月も中秋の名月のようにとても綺麗に見える季節。紅葉も散る前は色鮮やかで綺麗。暑い夏も終わり過ごしやすくなる気候。天高く馬肥ゆる秋。そんなに落ち込まないで過ごしていきましょう。ね? 


百人一首には選ばれませんでしだが、この方の作った有名な歌を紹介させてください。


照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜に 似るものぞなき

(照り輝くのでもなく曇り空で見えなくなるのでもない、春の夜の朧月夜は最上の月夜だ)「新古今集」


源氏物語の源氏と朧月夜の君との恋のモチーフとなっています。寂しい秋の歌もいいのですけれど、朧月夜の春の歌がワタシに響くのは、ワタシが月好きだからだけかしら?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る