嵐という字               022

22 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ

 ふくからに あきのくさきの しるれば むべやまかぜを あらしといふら


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 貴族 平安中期 古今集


【超訳】オレって頭よくね?

山から風がふいてくるから山に風って書いて嵐っていうんだぜ、きっと。で、その嵐が秋の草や木を荒らすんだ。


【詠み人】文屋康秀ぶんやのやすひで

六歌仙のひとり。


【決まり字】ふ(1)


【雑感】この意訳を読んだとき、「へぇ~~」とうなりました。そう言われればそうだ。山に風と書いて嵐だわ。そして「嵐」と「荒らし」をかけているなんてね。百人一首には選ばれていませんが木毎きごとに花をつけて梅になるなんて歌もあったそうです。

 六歌仙の撰者でもあり、古今集の編纂にも携わった紀貫之(35)は「言葉遣いは巧みだが中身がない歌」と酷評したらしいですが、数百年後のワタシはへ――なるほどね、ホントだ! と手をたたきましたよ。恋だの愛だののお歌もいいけれど、こんなお歌もあっていいのではないのかしら。

 冬へと向かう冷たい北風。山から吹きおろす風は秋の草を散らし、木を痛め、秋の山や野を荒らしているのでしょう。ヒューっという寒そうな音が聞こえてきそう。やっぱり秋って寂しい歌になってしまいますね。明るい秋の歌はないのかしら。食欲の秋だとか、スポーツの秋だとか、芸術の秋だとか。秋の夜長も恋人を待つせつない歌が多いし、明るく楽しく過ごす秋の宴会はなかったのかしら。夜は長いし、実りの秋で食べ物は美味しいだろうし、そんな「美味しい」歌はないものかしら……。

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