1 飛鳥・奈良時代( ~ 793 )

イケメン天皇の心配事          001

1 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

 あきのたの かりほのいの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ


【カテゴリ】秋

【タグ】男性 天皇 飛鳥 後撰集


【超訳】 みんなタイヘンだよなぁ。

 御所の庭を歩いていると草花が夜露に濡れていた。

 前に行った田んぼの小屋は葦の屋根が粗くて小屋の中でも夜露に濡れたよなぁ。今頃農民たちは粗末な家で夜露に濡れているんだろう。これから冬を迎えてますます寒くなるのに、気の毒だよなぁ。


【詠み人】天智天皇

 第38代天皇。皇太子時代は中大兄皇子なかのおおえのおうじと呼ばれる。中臣鎌足とともに起こしたのが大化の改新(645年)。弟は天武天皇(大海人皇子おおあまのおうじ)。政治も有能な手腕を発揮したが、「万葉集」等にも歌が残っているように優れた文化人でもあった。


【決まり字】あきの(3)


【雑感】歴史の教科書に必ず登場する天智天皇。小学校の歴史でも学びます。大化の改新の内容を知らなくても、645年と答えられる人は大勢いるんじゃないかしら? 政治にも文化にも優れた才能を見せた天智天皇ですが、ワタシはその他にも想い入れがあります。

 大和和紀さんの漫画に『天の果て地の限り』というものがあります。これはこの時代を描いた漫画です。のちに天智天皇となる中大兄皇子と弟で天武天皇となる大海人皇子と歌人として有名な額田女王ぬかたのおおきみの恋愛に焦点をあてた歴史漫画です。もちろん漫画なので脚色はしてあります。まあ、登場人物は全員が美男美女! 中大兄皇子も大海人皇子もロン毛を風にたなびかせてまあ、カッコいいこと、カッコいいこと。額田女王も超美少女。単純に感情移入してしまいます。ワタシなら中大兄皇子、大海人皇子、どっちにする? なんてしょうもなく迷ってみたこともあります。

 そんな中大兄皇子が詠んだ和歌。秋も深まり、刈り入れは終わった頃かしら。藁などで作った粗末な屋根では夜露が家の内側にも染み入り、ぽつぽつと滴が落ちてくるのでしょう。農民たちは家の中にいるにもかかわらずその露に濡れてしまうのではないか。冷たいだろうに。寒いだろうに。ご自分は天皇で住んでいらっしゃる御所ではまさか室内で滴に濡れることもないでしょう。それでも国を治める長として威厳を保ちつつも農民のことを想いやるなんてなんて優しいんでしょう。リアル天智天皇がイケメンだったかどうかはわかりません。大和漫画ファンのワタシとしては超イケメンのデキる男であってほしいと願うのは言うまでもありません。


 また百人一首は詠まれた時代順に1番から100番まで番号が割り振られています。この天智天皇の歌が栄えある1番です。そして天智天皇をお祀りしている近江神宮は現在「かるた(百人一首)の聖地」として各種大会が開催されます。高校かるたの全国大会も行われ、漫画「ちはやふる」でも描かれました。映画化もされましたね。

 千年以上も前に詠まれた歌が伝えられ、競技となり、今日もどこかで「あきのたの〜」と読みあげられている。素晴らしい日本文化です。

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