なるべく自分を主語にして話す

 太宰治の『人間失格』の中に、「~世間が許さないからな」と言う人に対して、「世間というのは君じゃないか」という言葉が舌の先まで出かかったけど相手を怒らせるのがイヤで引っ込める。という場面があります。

 確かに「世間が」という言葉は、自分の考えを一般的に正しいように言いくるめているようなところがあり、相手から不快感を持たれやすい言い方です。

 少し似ている言葉で、「私たち」とか「みんな」という言葉もあります。

 「私たち」は、「あなたも私の仲間になりなさい」というメッセージが含まれていることが多い。また、「みんな」という言葉も、「世間」に似ていて「自分の言っていることが多くの人に認められた正しい意見である」ということを押しつけている場合が多々あります。これらも、注意して使った方がいい言葉です。

 それから、「○○して下さい」「あなたは○○だ」と言うのではなく、「自分はこう思います」「自分はこうしたいんだけど、協力してもらえませんか」「自分はこう思うんだけど、それについて解決策を一緒に考えてもらえませんか」といった言い方をすることで角が立ちにくくなります。

 例えば、彼氏とのデートの予定が彼氏の仕事の都合でキャンセルされた場合、「約束を守らなきゃ駄目じゃないの」「あなたは、約束が守れない人なのね」などと言わないで、「(自分は)デートできなくて残念です」と言った方が相手も「次はちゃんと約束を守らないと」と考える可能性が高い場合が多いでしょう。

 「(あなたは)~駄目じゃないの」「(あなたは)~約束が守れない人なのね」という言葉は相手を否定的に評価していますが、「~残念です」というのは自分の思いなので相手の領域にはみ出していません。 

 いきなり相手に関することを言うのではなく、まずは自分の事情・希望などを話すと角が立ちにくくなります。また、自分の気持ちや置かれている立場などを確かめることもできます。

 なるべく相手に要求したり相手のことを評価したりしないで、相手の領域にはみださないための工夫が大切です。 また、要求したくなる場面でも、 「○○して下さい」だと、相手に対して命令し支配しようとする雰囲気が感じられ、相手は息苦しく感じたり、脅威と感じたりすることもあります。そうすると、それに対し、反撃したり防衛したりということになってしまいがちです。

 「○○して下さい」ではなく、「(私は)○○してくれるとありがたいんだけど」と依頼する方が話し方がソフトで角が立ちにくくなります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る