「敵もさるもの引っ掻くもの」と考える

 以前、高校の教員になる前に本屋を経営していた頃、店のカウンターで業務をしていて不動産業者から電話がかかってきました。

 その時のやりとりが印象に残っているので、紹介します。

 「こんにちは、新築のマンションの販売をしている○○(名前はもうわすれた)不動産と申しますが、店長さんはおられますか」

 「この店は店長という名前で呼ばれている人はいませんが、私がオーナーです。新築のマンションは買いません」

 というとすかさず、「それでは中古マンションだったら買うんですか」と言われました。

 その時、なぜか、「敵もさるもの引っ掻くもの」という格言を思い出し、そのおかげでイライラしないで済みました。この格言を思い出さなかったら、イライラして「人の揚げ足をとるな」なんて言って怒鳴っていたかもしれません。

 「それにしても、『新築マンションは買わない』と言ったら、そのとたんに『中古マンションなら買うんですか』と言うとは、なかなか機転がきく。これはやはり『さるものだ』」と思い、真面目くさってこんなことを言いました。

 「今、『新築マンション』と言ったから、こちらも新築マンションのことを答えました。中古マンションについては、もし聞かれたのであれば、やはり『買わない』」と答えます」

 すると業者は、「わかりました」と言ってあっさり電話と切りました。

 このようにして、意外と短い時間で電話対応を終了させることができました。

 「敵もさるもの~」なんていう言葉は、言い古された言葉ですがなかなかユーモアもあり、実用性もあっていい言葉だと思います。いい言葉だから、長年生き残ってきたのでしょう。ちょっとしたことでも、なるべくユーモアを持ちつつ相手のいいところは認めるようにしましょう。

 そうすることで怒りやイライラが減る場合も、意外とあります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る