2 怒り・イライラに関する5大公式
怒りに関して大ざっぱでもわかりやすく理解するために、5大公式というものを作りました。
と言っても、これは私が考えたものではなく、いろいろなところで言われていることの中から特に役に立ちそうなものを選んだものです。
公式1 意外性+不利益=怒り・イライラ
公式2 意外性+自己愛が傷つく=怒り・イライラ
公式3 怒り=心の悲鳴
公式4 不安感が強い=怒りやすい・イライラしやすい
公式5 怒り+ゆるし=心の平安
心理学ではおなじみの考え方ですが、今まであまり心理学に縁がなく「初めて聞いた」という人もいるかもしれません。
「意外性」「不利益」「悲鳴」「不安感」「自己愛」「ゆるし」といったのキーワードが出てきます。
なんだかホラー小説と自己啓発書と宗教の混ざったような雰囲気ですが、非常に重要なものなのでばかりです。できればお付き合い下さい。
順番に見ていきます。
「公式1 意外性+不利益=怒り・イライラ」ですが、これはまさに基本中の基本です。不利益になることでも、もともと予期していたことだとそれほど怒りは感じないで「こんなもんだろう」とあきらめることが多いし、予想外のことでも利益になることであれば、驚くかもしれませんが怒りを感じるどころか喜ぶのが普通です。
ただし、天変地異などの不可抗力で不利益を被った場合、諦めてしまって怒りやイライラを感じない場合もあります。
「公式2 意外性+自己愛が傷つく=怒り・イライラ」という視点ですが、これは、有名なアメリカの心理学者コフートなどが説いていることを参考にしました。非常にわかりやすい当たり前の見方ですが、これも重要な視点です。コフートの心理学は、わりあい当たり前のことばかり言っていて面白みがないのですが、実用性が高いのが特徴です。
自己愛が傷つけられる原因は、「無視される」「バカにされる」「人格攻撃をされる」「上から目線で物事を言われる」等が考えられます。
蛇やサソリに恐怖や嫌悪を感じることはよくありますが、怒りを感じるということは通常ありません。怒りは、主に対人関係などで心が傷つけられる経験があって生じる場合が多いと思います。
公式1と2は似ているのですが、一味違います。片方だけがあてはまることもあるけど、不利益を被り自己愛も傷つくという両方があてはまる場合も多いと思います。
「公式3 怒り=心の悲鳴」という捉え方は「対人関係療法」の日本における第一人者・水島広子の著書(『「怒り」がスーッと消える本』など)に出てきます。公式1や2に比べるとやや情緒的な言葉を使っていますが、これはこれでうまい表現だと思います。
「怒っている当人が困った状況にある。そのために心が悲鳴を上げている」という視点です。
この視点に立つと、自分の怒りに振り回されそうになった時は、「自分が困った状況にある」ということを認識し「自分はいったい何に困っているのだろうか」というふうに順を追って考えていくことができます。
他人が怒っている場合でも、「あの人はどういうことで困っているんだろか」という視点から考えていくことができます。
「公式4 不安感が強い=怒りやすい・イライラしやすい」というのは経験則です。
これも大切です。心配性の人ほど、怒ることで自分の不安を打ち消そうとします。あるいは、イライラしやすくなります。
自分の怒り・イライラでも他人の怒り・イライラでも、「その怒りの裏には不安心理が働いているのではないか」と考えると心理的な見通しが立ちやすくなります。「どんな不安なのか」ということをうまく見ぬいて自分の心を整理する、あるいは相手の心理状態を理解する。ということが大切です。
また、過度の心配性にならないためにはいわゆる「心の体力をつける」ということが大切です。
「公式5 怒り+ゆるし=心の平安と自由」。これは、国際的に有名な精神医学者、ジェラルド・G・ジャンポルスキー博士などが説いていることで、キリスト教的な見方です。
ゆるすことで人間は自由になれる。怒りや批難の悪循環から抜け出すことができる。自分の本当の姿がわかり、心の平安を得ることができる。
ということを表している公式です。
「ゆるす」と言うと自分が正しいことを前提にしているみたいで上から目線な感じがするのですが、こういう考え方も大切です。
でも、「ゆるす」の代わりに「忘れてしまう」とか「水に流す」と言った方が日本的でいいと思う人もいるかもしれません。
「頭に来た+でもそれを忘れてしまう=心の平安」の方がいいと言う人はそれがいいと思います。「腹が立つことは忘れるのが一番」という考え方です。
五つとも役に立ちそうな公式ですが、場面場面で自分にとってどれが一番役に立つか考えていくことが大切だと思います。
また、いろいろな事例を考察する上でも、どの公式が当てはまるか考えると考察しやすくやすくなると思います。
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