3 怒りの種類

 怒りにもいろいろな種類があり、種類によって対応方法が異なる場合があるように思われるので、ここで、怒りについて考えていく方法のひとつとして、怒りにはどんな種類があり、どういうふうに分類することができるのか考えてみます。

 また、種類や分類について考えながら、怒りについて表す日本語にどんな言葉があるのかも見ていきます。

 

 量的にとらえる方法と質的にとらえる方法


 量的には、大きさと持続性の二つの方向からとらえることができます。

 まず、大きさから見ていきます。

 大きな怒りには「激怒」という言葉があります。「イラっとした」という表現は小さな怒りについて言っているとも考えられますが、ごく短い「イライラする」状態を言っているとも考えられます。このあたりは、厳密な定義があるわけではありません。

 「むかついた」という言葉は、「ちょっとむかついた」「超むかついた」など修飾語をつける場合が多いので、「むかついた」という言葉自体は、中くらいの怒りを表していると考えられます。

 持続性からも分けることができます。

 長く続く怒りのことを、「恨み」と言う場合があります。例えば、「イスラエルの軍隊に親を殺されたパレスチナの人々が、イスラエルに対し長年にわたって怒りを心に抱き続けている」という場合です。この場合には、容易なことでは消えない持続力のある怒りが存在し、それを「恨み」という言葉で表していると考えられます。一言で言えば、「根が深い」場合です。

 逆に瞬間的な怒りというのもあります。例えば、道で人とぶつかって少しいらっとしたが、すぐに忘れてしまうような場合です。

 量ではなく、質でとらえることもできそうですが、これはなかなか説明が難しいと思います。「からっとした陽性の怒り」とか「ネバネバしたしつこい怒り」「ドロドロした怒り」という言葉もありますが、感覚的表現で、持続性ということとどう違うのかという説明はなかなか難しいかもしれません。


 大・中・小の怒りを表す言葉


 怒りの大きさを表す言葉はいろいろあります。

 たくさん知っていた方が、自分の心を言葉でうまく表せるようになり、自分の本当の気持ちを知りコントロールしていく上で有利になります。

 どんな言葉があるか見ていきます。  

 大きな怒り。

 「怒り狂う、激怒、憤怒、憤り、超むかつく、カンカンに怒る、はらわたが煮えくり返る、青筋立てて怒る、真っ赤になって怒る、火のように怒る、ブチキれる」など。

 大きな怒りが一番いろいろな表現があります。ドラマチックで話題性があるので、いろいろと表現を工夫するのでしょう。赤という語と青という語が両方出てくるのが面白いところだと思います。

 続いて中くらいの怒り。

 「怒る、むかつく、立腹する、腹を立てる、カッとなる、頭に来る、キれる」など。

 中くらいの怒りは、大きな怒りほどいろいろな表現はありません。

 小さな怒り。

 「むっとする、わずらわしい、邪魔だ、嫌だ、違う、イラッとする、モヤモヤする」など。

 最後の「モヤモヤする」は、まだ怒りなのかもわからない段階ですが、怒りである場合もあるので、一応書いておきました。 

 なお、「イライラする」という言葉が、かなりよく使われます。いろいろな場合に使われ、なかなか大きさを特定しずらいのですが、しいて言えば、無視できるほど小さくはない、小の上の方から~中くらいの怒りを表すのではないでしょうか。そして、期間についても一定以上の持続性があります。


 大きな怒りと中くらいの怒りは、本当に怒る必要がある時以外はできるだけ減らした方がいい感情です。

 小さな怒りは、自分の気持ちに敏感でないと見落としてしまうことがあります。が、まず、そこのあることを気づくことが大切。見逃さないでうまく対応することで、怒りを大きく育てないようにすることが大事です。

 

 急性・慢性・超慢性


 持続性については、病気と同じように急性・慢性・超慢性という区別をすることができます。

 急性は、「その時は怒ったけど、ちょっと時間がたってみればどうってことない」という根に持たない怒りです。からっとしていて、すぐ忘れてしまうものです。  

 慢性というのは、1ヵ月~3ヵ月とか、長いと1年とか、かなりの期間続く怒りです。「チキショー腹が立つなあ。もう3か月前のことだけど、妙に腹が立つ」といった感じのものです。

 超慢性というのは、病気で言えば腰痛とか糖尿病のような、長年続くものです。

 「子どもの頃、親から虐待された時の怒りが大人になっても消えない」とか「政界における旧田中派と旧福田派の間の怨念」とか、そういったものです。 

 それぞれ、対策が異なります。

 あくまでも、大雑把な一般論ですが、次のようなことが言えます。

 急性の場合は、Ⅲの「1 キレないための応急手当」にある対応方法が大切です。とにかく、その場で怒りによっておかしな行動や発言を行わないようにすれば、時間とともにうすれていきます。

 慢性・超慢性の方が対応に手間と時間がかかります。Ⅲの「3 レコーディング精神安定法―本格的な怒りとじっくり取り組む方法―」「4 逃げるが勝ちという方法(間接アプローチ)」にある対応方法が有力です。

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