サイレンサーの使えるリボルバー、ナガンM1895

 この銃を解説する前に、そもそもなぜサイレンサー(サプレッサー)はリボルバーでは使えないのかという話をしましょう。

 サイレンサーの項目でも少し話題に出しましたが、リボルバーは構造上弾倉兼薬室であるシリンダー部分と銃身の間に僅かな隙間があり、そこから燃焼ガスが漏れるため、若干ではありますが圧力低下による弾丸の威力の減衰やガス吹き出しによる指などの負傷のリスク等があります。

 その隙間のせいで密閉空間を作ることが出来ず、音が漏れちゃうので基本的にリボルバーにはあまり用いられない、ということです。


 

 そこで今回の主役のナガンM1895おばあちゃんです。

 ベルギー人のナガン兄弟によって設計され、名前と同じ年にロシア帝国が採用。採用年からちょっと間を空けて納入され、以降1950年くらいまで使用された実績のある拳銃です。

 装弾数は7発とちょっと多め。使用する弾薬も7.62mm×38R弾という専用の特殊弾を使います。特殊な弾は用いますが、PSS拳銃のように弾薬そのものに消音機構が内蔵されているわけではないので、M1895はあくまでサイレンサーを使わなければ消音・減音効果を得ることは出来ません。

 作動方式はダブルアクション、トリガーは少し……というかかなり硬めのようです。引くのに力がいるので、ちょっと命中率はあんまり良くないようですね。

 シリンダーは固定式なので最近のリボルバーのように横に倒して装填、とかは出来ずフレーム横についたローディングゲート、シリンダーから弾がこぼれないように押さえておく蓋のような部品を開き、シリンダーを回転させながら一発ずつ弾薬を差し込んでいく装填法です。コルトのSAAに近いですね。ただしM1895はSAAのように撃鉄を半分起こした状態のみシリンダーが自由に回転するというわけではなく、撃鉄が起きていなくともくるくる回るようなので取扱には注意が必要ですね。知らない内にシリンダーが回転してて、いざ撃つぞってときに撃鉄が撃ち終わった空薬莢の底を叩いた、なんてことになると大変です。一応ローディングゲートが閉じている間はこれがシリンダーを押さえ込んで回りにくくなるようですが、手で動かそうと思えば動かせる程度のようなので過信は禁物ですね。

 さらに面倒なのが排莢で、もしシリンダー内部に薬莢が張り付いた場合、エジェクターロッドを使用して空薬莢を突っついて落とさないといけないのですが、M1895のロッドは一度ネジのように回してロックを外し、引っ張り出してからロッドをシリンダー側に倒すという工程を経ないとロッドが使えません。ちなみにSAAは特に複雑な操作は必要なく、エジェクターロッドは手前に引くだけでいつでも空薬莢を突っつけます。

 

 と、不安はある銃なのですが、それと同じくらい魅力に溢れた銃でもあります。

 M1895の弾薬は変わった形をしていて、弾丸が薬莢の中に埋まっています。見慣れない人には空薬莢のように見えてしまうかもしれませんね。この特殊な形状と、銃の機構によりサイレンサーの効果が発揮できるようになる仕組みです。

 M1895は独特の機構を持っており、撃鉄が起きるとシリンダーが回転しながら前進、銃身とシリンダー間の僅かな隙間を無くし連結します。この際に弾丸を内包した薬莢先端は銃身に入り、その状態でトリガーを引き切ると装薬発火時の圧力で薬莢前部が膨らみ、銃身に張り付くことで銃口以外に燃焼ガスの漏れる場所のない密閉空間を作ります。

 この機構のおかげで、サイレンサーを使えるわけですね。


 と、いいところもある銃なのですが、先述した通り古い上に少々扱いにくい面も多々あります。リボルバーという信頼性はありますが、装弾数や操作性を考えるならオートマチックの銃にサイレンサーを付ける方が確実なのかもしれません。もちろんロマンを目指すのも自由ですが、こんな年寄りを好むような方は、相当な変わり者でないといけませんね。

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