銃か魔法か

 魔法と銃、一見全く別のジャンルのように思えますが、ファンタジー世界には稀に銃が入ってくるお話も多く、結局の所どちらが有用なのかという議論も見かけるようになりましたね。それについての私なりの考えをまとめてみたものが今回の話です。もしかしたら、創作でファンタジーと銃を混ぜたいと思っている方には何かの参考にはなるかもしれません。ですが所詮個人の見解なので、どうか私の考えにとらわれず広い目で見て、自分なりの答えを探してみてください。


 まず前提として、最終的に『作品の設定による』という結論になるのを前提にして読んでいただけると幸いです。結局魔法や銃がどうのと言ってもそれは舞台を盛り上げる道具や装置でしかなく、物語そのものを構築するのは練られた世界観やお話、登場人物達ですから。この世界ではこうなんです、と言われたらそうですかと頷くしかできません。銃が弱い世界もあれば、強い世界もある。魔法が万能な世界もあれば、役に立たない世界もあるでしょう。それは皆さんが書いたり描いたりする作品の設定に左右されますので、銃は魔法はこうでなければならない、と断じることなどできませんからね。


 魔法は解釈の仕方でどうにでもなりますが銃は一応道具なので、まず両者ともに使い勝手の良し悪しから見ていきましょう。

作れる世界なのかとかは置いておいて、現代の銃器は弾を装填し引き金を引けば弾が出ます。簡単にね。それに対して魔法は、魔法使いという専門職が多くの作品で見受けられる以上、取得し使用するにあたっての難易度は比較的高めの印象があります。少なくとも知識もなくいきなり使うのは難しいと思われます。スキル制だとしてもまずは取得しないといけないですからね。

 極端な言い方ですが、弾さえ装填してあるなら引き金を引くだけで赤子ですら弾を撃ち出せるのが銃です。ですが魔法は、それこそ触媒だとか詠唱だとか、準備にも手間がかかりどの魔法を使うかを選択しそれを間違いなく発動させるための手順が必要となるわけです。誰でも使えるという点では、銃が勝っていると言ってもいいかもしれません。


 次に戦闘面での話ですが、基本的に銃は矢よりも長い射程、弾数、連射性と威力があります。弓の名手が使ったら~とか銃の種類はともかくとして。それだけでも銃は強そうに思えますが、誰が使っても威力はそこまで変動することがないというところが重要です。熟練度にかかわらず、銃は必殺とも言える一撃を何度も相手に撃ち出すことが可能です。少なくとも普通の人間が相手ならば十分な性能と言えるでしょう。

 ですが魔法は、おそらく熟練度により害する規模や威力が変動し、一定の技量に至っていない場合正確に相手に向けて発動するかどうかも定かではありません。銃は銃口を相手に向けて引き金を引けば最低限の威力が保証された銃弾を放てるわけですから、これも銃が優れていると言ってもいいでしょう。また直感的な操作で使えるのも銃の特徴です。魔法は一瞬だろうと頭で考える余地が必要でしょうが、銃は考えるより先に体が動いて抜いて撃つ、が出来なくもない道具ですので。まあもちろん魔法でも設定によっては同じ芸当が出来る作品もあるかもしれないので、これこそ設定によるってやつですね。

 と、銃を賛美するようなことばかり書いていますが全部そういう話で埋め尽くすつもりはないのでご安心ください。例えばですが、銃と魔法、広範囲に影響を及ぼすもので比べると、機関銃なら弾倉の弾が尽きるまで広い範囲に銃撃が可能です。ですが魔法なら一瞬の内に倍の範囲を焼くなり陥没させるなり自由な方法で攻撃することが出来るかもしれません。もちろん銃よりも手順が多く必要で準備の時間がかかるかもしれませんが。

 それに銃は点の攻撃です。面で攻撃しようと銃弾そのものが当たらなければ効果はありません。遮蔽物に遮られるだけでも効果が薄れることでしょう。また、射線上の物体を問答無用で傷つけてしまうのも銃の便利であり不便な点です。人は不要だけど家や物資は確保したい。そんな時、魔法なら確実に人だけを殺める性質の、毒霧だとか呪い殺すだとか、そういう手法を取ることが出来るわけです。そういう細かい調整がきくのは、魔法の方ですね。

 銃弾は誰が使っても同じくらいの威力ですが、つまりそれは調整の幅が狭いということでもあります。小口径の銃弾を使おうとも、銃弾では加減が効かずに重症を負わせてしまいます。掠めるだけといってもどこまで正確に傷を負わせられるか分かりませんし、逸れて直撃させてしまうことも無いとはいい切れません。ですが魔法なら、傷を負わせず気絶させるか無力化する手段があるかもしれません。

 そういう小さなものから、自然災害に匹敵する規模まで自在に変化させることが魔法の強みでしょうね。それはさすがに銃だと厳しいです。大砲やミサイルとか現代兵器にまで範囲を広げればその限りでもないかもしれませんが、どの道対象に著しい破壊をもたらすというものですから、不殺や自在に範囲を指定とはいかないものです。BC兵器とかも同様に。

 銃は簡単に扱えて、更にとてつもない破壊力を持っています。ですがそれは突き詰めると物凄い威力の弾を真っ直ぐ飛ばす、というものです。相手との射線を確保していなければいけませんし、何らかの方法で射手は相手を見なければ狙いを定めることもできません。またサプレッサーをはじめとした消音減音器に頼らなければ音を消せないと隠密性にも難があります。ですが魔法なら、どこかに隠れながらなにか呪文を唱えるだけ、あるいは念じるだけで対象を倒す事が可能かもしれません。

 携行性は、拳銃なら懐に忍ばせられますし機関銃ならちょっと長距離を持ち運ぶのには不便ですね。魔法に関してはそもそも何も持たなくてよかったり小さな杖から鈍器になりそうなものまで大小様々なのでこちらはちょっとどっちもどっちかもしれません。ただ小さい杖で大きな魔法を出せるなら魔法の方がいいのかな、とそれくらいです。

 ですが銃は弾がなければ鈍器です。弾もなかなかかさばりますし、ファンタジーな世界では街や商人など入手できる経路が限られるでしょう。対して魔法は、詠唱とかで魔力を集めたり杖や触媒が魔力源になっていたり使用者の保有する魔力で発動でき時間とともに回復~のような設定もあるようなので、補給面でも魔法が有利なのかもしれませんね。

 

 銃は基本的に対象を破壊、あるいは殺傷する道具です。対して魔法は、火を起こす、敵を探知する、気配を消すなどあらゆる状況に合わせて使用できることが、銃にはない強みになるのではないかなと思います。万能性というべきでしょうか。銃もやろうと思えば弾から火薬を引き出して火種にしたり脅しの道具として使用することも出来はしますが、それでも魔法ほど柔軟に対応できる局面は少ないですからね。

 どちらが優れているとは言い切れません。単純に武器として使うなら銃のように容易に扱えるものが必要になるかもしれませんし、より繊細に確実性を求められる状況なら魔法が求められる局面もあるでしょう。それぞれの持ち味が違うのです。


 ここまで書きましたが、少し捕捉を。銃は確かに誰も撃つことが出来ますが、当てるとなると少し訓練が必要です。定められた手順通りの操作を行うのも、整備もそれなりに練習が必要なのですべての人が正しく正確に使えるというものではありません。ですが矢や剣が効く相手なら大抵それ以上の効果はあるはずなので、簡単な操作で強力な威力を発揮する武器であるということに変わりはありませんね。

 とはいえファンタジーと言えば伝説の武器、鎧、怪物は当たり前の世界です。どれだけ通用するかは分かりません。人間にしろ銃弾を見切れるような人達ばかりならどれだけ有効かは定かでないですから、武器の性能だけに頼らず策を練ってみましょうね。

 

 ちょっと比較対象の魔法が少しばかりゲーム的な感じなのは、本当の意味で神秘の力となると銃と比較するような話でないですし幻想的なものにそういう現代のものがどうのというのも無粋なので、そういう範囲……というと少し失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、流行りな感じの方向性の魔法を対象にさせていただきました。

 それとこれは個人的な話になってしまいますが、せっかくのファンタジーですから、あまり現実世界の科学力で蹂躙、という内容よりはその世界にあるものを活用したり、現代の技術を使うにしてもあまり大げさに優劣を定めるのではなく得手不得手を明確にしてそれぞれのいいところを描写してあげるといいのかもしれませんね。解説した通り、銃も魔法も何でもかんでも全てにおいて万能というわけではないのですから。時代が進んだ技術や知識だからといって、絶対はありませんからね。

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