武蔵野と角川武蔵野ミュージアムを知るツアー(2021年8月16日)

東所沢は今日も雨だった

 昨年開催された角川武蔵野文学賞コンテスト。

 昨年だけで終わるのかと思ったら今年も2回目を開催することになりましたね。

 第1回は箸にも棒にもかからず見事に玉砕したので今年は止やめとこうかなあと思ったのですが、


 創作のための特別ツアーが開催される!


 との発表をカクヨムで読みまして、

 応募するかどうかはともかく「ところざわサクラタウン」は前から気になっていたし、

 こんな企画でもなきゃ金払ってミュージアムに入ろうなんて気にはならないだろうなあと思われたので、

 参加することにしました。半分遊び気分です。


 8月16日月曜日。武蔵野線に乗って初めて東所沢駅で降りました。

 この駅舎、たぶんリニューアルされたんでしょうね。外観がカッコイイです。近くには大魔神の胸像みたいなのもありました。これは上映中の映画「妖怪大戦争」のPRでしょうか。角川の宣伝力、凄まじい。


 当日はあいにくの雨。さりとて小降りでしたし、夏の雨はどちらかというと気持ち良いので問題なし。

 サクラタウンまでは徒歩で10分ほど。後で知ったのですが駅からサクラタウン内の神社まで参道が整備されていて、LEDで発光するマンホールが28基、道中に設置されているそうです。

 そうと知っていれば参道を歩いて行ったのになあ。途中から全然違う道を歩いてしまいました。残念。


 10時からツアー開始。定員15名の大部分は女性。小学生くらいのお子様もみえました。夏休みの自由研究でしょうか。ご苦労さまです。

 説明を担当するのは男性2名。ラノベに詳しい学芸員の方と雑誌「武蔵野樹林」編集の方。よろしくお願いします。


 まずは外に出て神社の見学です。拝殿の中に入らせていただきました。神殿は茅葺き屋根で国産の桧造り。特に扉は樹齢500年の木曽桧の一枚板を使っているとか。それだけで有難く思えてきますな。


 ここでは宮司の小川様からお話を伺いました。口調が穏やかでいかにも神様にお仕えする方という感じです。


 印象に残っているのは2点。ひとつは天井画。角川のロゴマークである鳳凰が描かれています。作者はアニメ「ガッチャマン」でおなじみの天野喜孝さん。

 原画をスキャンして製作されているのですが、その原画も3メートルくらいの大きさで金箔を貼った板に描かれていたとか。気合いが入っております。

 現代アートと日本画がまぜまぜになったような天井画は一見の価値ありです。


 印象に残ったもうひとつは神殿の左右で睨みを利かせている二体の神使像。狐に見えますが日本狼です。

 畑の害獣である猪やイタチを退治してくれる狼は昔から信仰の対象として人々に敬われ、武蔵野には狛犬の代わりに狼を置いている神社も幾つかあるのだそうです。万葉集には大口真神おおくちのまかみとして神格化されて登場しているほどなんですって。なるほどねえ。


 しかしそういう話を聞くと歴史ってのは理不尽だなあと感じますね。人々から敬愛を受けていた日本狼は絶滅し、害獣として嫌われていた猪やイタチは今でも生き残って畑を荒らしているんですからねえ。

 そんなストーリー、もし歴史を綴っている神様に編集が付いていたら確実にボツですよ。こんな話、誰が喜んで読むんだよ、ってね。

 で、編集に言われて神様が書き直した「武蔵野には狼が生きている」ってネタで何か書けそうな気がしますな。今回はこれで応募してみますかね。


 さきほど「まぜまぜ」なんて言葉を使いましたが、実はこれ、このミュージアムのコンセプトなんです。説明の方いわく、まぜまぜすることによって新しい発想、創造が生み出される! 

 この神社も電飾の鳥居、御神木でクリスマスツリー、二柱の御祭神を祀っていながら日本のアニメ聖地の一番札所と、かなりまぜまぜしています。メディアミックス大好きな角川らしいコンセプトですね。


 再びミュージアムの中に戻って1階のマンガ・ラノベ図書館に移動。

 ここでは角川のマンガ3千冊と18の出版社から提供されたラノベ2万9千冊が読み放題。一日ではとても読み切れません。

 ラノベは18社から提供と書きましたが、ざっと見たところほとんどが角川のレーベルでした。ラノベ分野では角川のシェアは圧倒的ですから仕方ありませんな。


 角川以外の書籍としては、

 ハヤカワ文庫 栗本薫「グイン・サーガ」シリーズ

 早川書房 光瀬龍 「百億の昼と千億の夜」


 あたりが目に付きました。読み放題です。最近ではこんな作品もラノベなんですかね。まあ「まぜまぜ」ですからね。いいんじゃないでしょうか。


 奥には児童書、絵本、デジタルコンテンツのコーナーもありました。小さいお子様も楽しめます。


 この後、外に出て角川書店創立者角川源義の自宅庭園を再現した「源義庭園」を見学しました。ミュージアム外壁に使われているのと同じ花崗岩に源義の俳句が刻まれています。


「ロダンの首 泰山木は 花得たり」


 季語は「泰山木の花」季節は夏。


「見てくれよ、オレの枝にでかくて白い花が咲いたぜ。まるでロダンの首みたいにカッコイイだろ、ひゃっはー!」


 と泰山木が大喜びしている句です、と解釈しました。異論は認めます。

 まあ実際に源義が見たのは、白いロダンの首の像と、白い花をつけた泰山木が立っているだけの風景だったのかもしれませんが、こんな表現をされるとこんな風に解釈したくなるのが俳句の持つ恐ろしさでございますね。

 ロダンの首を咲かせた泰山木ってイメージ的に面白いなあ。ホラー小説が書けそう。


 ここで休憩。トイレに行ったり図書館で本を読んだりして一服です。


 15分後、ツアー再開。3階「EJアニメミュージアム」は別料金が必要なので飛ばして4階「エディットタウン」移動。


 乱雑!


 が第一印象です。本と本棚とその他が芸術しているって感じでしょうか。

 なんて言うかなあ、例えるなら教授の部屋に入った時と同じような感覚でしょうか。


「うわー、教授、散らかってますね。少し片づけましょうか」

「絶対に触るな。どこに何があるか全て把握しているのだ」


 という有り触れた一コマを想像してしまいました。天才の部屋や机は散らかっているって言いますからね。

 ちなみに私の部屋は全然散らかっていません。この時点で凡人確定です。頭の中は散らかっていますけど。


 散らかっていても教授がどこに何があるかわかっているように、このエディットタウンもきちんと分類されています。通常の図書分類法ではなく内容の近いものを9つに分けて展示しているのだそうです。ブックストーリーと並行して展示されている荒俣ワンダー秘宝館も乱雑の極みですね。まさに「まぜまぜ」です。


 奥にある本棚劇場は圧巻でした。高さ8メートルの本棚を背景にして行われる約3分のプロジェクションマッピングは見る価値ありです。


 ちなみに同じ階にあるギャラリーでは歌人俵万智さんの企画展が開催されていました。俵さん、来年還暦ですか。は~、年は取りたくないもんですね。でも短歌は少しも古びてはいません。与謝野晶子の歌はさすがに現代には合わないものがありますが俵さんの歌は今でも新鮮な感動がありますね。令和の時代でもその輝きが失われることはないでしょう。

 ここで一首。


 武蔵野が好きだと君が言ったから時は武蔵野記念日


 う~ん、字余りが苦しいなあ。だいたい4時ってなんだよ。記念日に時間指定っておかしいじゃないか、って自分でツッコミたくなりました。


 本棚劇場横のアティックステップを上って5階に移動。ここが今回のツアーのメイン、武蔵野回廊と武蔵野ギャラリーです。

 回廊入り口には雑誌「武蔵野樹林」のコーナーがありました。編集室が出張しているような感じです。

 そこを過ぎて中へ入れば武蔵野のさまざな資料、写真、絵図などが怒涛の如く押し寄せてきます。特に良かったのはギャラリーの真ん中にある大きな武蔵野立体模型かな。プロジェクションマッピングで様々な地図を投影してくれます。時代による武蔵野の変化を空から眺めているような気分になります。

 本気で「角川武蔵野文学賞」の入賞を狙っているのなら、一度はここに足を運んで資料を集めるべきでしょう。4階と5階は1200円で入場できますよ。


 こんな感じであっと言う間の2時間でした。宮司の小川様、スタッフの皆様、ありがとうございました。参加者の皆様、お疲れさまでした。皆様の中から入賞者が出るといいですね。私は絶対に入賞しないような作品しか書けないので今年も一次落ち確実です。それでは張り切ってプロットを練るとしますか!

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