第247話 青い髪の少女(下)
やはり・・・知っていたッ・・・!
ルツィアナはセルノア・アヴィスを知っていた。
こんな時代だ、ネットどころかテレビもラジオも存在しない。新聞もあるかどうか・・・
ということは普通の人は公卿の名前を知らないだろう。知っていたとしても三公や有名な公卿のみであろう。ましてや後宮の奥深くに住む
だが喜びに打ち震え、高揚する有斗にルツィアナはにこりと笑うと涼やかに言いきった。
「セルノア・アヴィスは私の実の姉でございます」
有斗は望んでいた答えと違う返答が帰って来たことにぐらり、とよろめく。
「姉・・・? セルノアが・・・?」
「はい私はルツィアナ・アヴィス。セルノアの一つ下の妹でございます」
有斗は魂が抜け出るような感覚に襲われ、深く椅子に腰を落とした。
そうか・・・それならば、全てが符合する。
ルツィアナがセルノアとよく似ているのも、セルノアの名前に反応したことも。
よく見るとルツィアナはセルノアより髪の色はくすんでいる。そしてセルノアより少し面長で目は切れ長である。別人だと分かると、何故か今までは見えなかった細かな違いが次々と目に付いた。
いや、違う。見ようとしなかったのだ。ルツィアナがセルノアであればいいという願望が差異の全てを有斗の目から隠していたのだ。
有斗は大きな落胆に包まれた。
有斗は無言のまま椅子に深く、深く沈みこんだ。アリスディアもグラウケネも有斗を気遣って沈黙を保った。
沈黙に耐え切れずに最初に口を開いたのはルツィアナだった。
「・・・陛下、・・・その、大丈夫でしょうか? 何か私が陛下を落胆させるようなことを言ってしまったのでしょうか?」
自分が粗相したのではないかと心配そうに見上げるルツィアナの言葉で、ようやく有斗は自分を取り戻した。
「だ、大丈夫だよ。・・・そうだ・・・セルノアから実家に連絡があったりとかしないよね?」
もしそうならば宮中にも連絡が来るはず。それが道理だと分かってはいても、そして聞いても無駄だとは分かっているものの、有斗はそう訊ねずにはいられなかった。
「・・・?」
ルツィアナはその有斗の言葉に大きく首をかしげた。
「先程からお話を伺ってますと、ひとつ腑に落ちないことがあるのですが・・・姉は四師の乱で行方不明、逃走した経路に置いても一切の痕跡が見つからず、死んだものとして探索が打ち切られたと私は聞いておりましたのですが・・・? 我が家では葬式も既に行いました。もちろん空の棺でしたけれども・・・今までのお話を聞く限り、まだ生きている可能性があると、陛下はお考えでおいででしょうか・・・?」
「え!?」
そういえば・・・セルノアの探索を命じたはずだけど、その報告を一度聞いたきりで・・・その後、一切聞いていないぞ? いつの間に打ち切ったんだ?
有斗は驚きと共に命じた当の相手であるアリスディアを見つめた。有斗の視線に申し訳無さそうにアリスディアは頭を下げる。
「申し訳ございません。ご報告いたそうと思ったのですが、陛下が折に触れセルノアのことを口にするものですから、陛下のお心を考慮して言い出せずにおりました。罪はわたくしにあります。・・・如何様にも処罰をお命じください」
処罰なんてとんでもないと有斗は首を振って否定し笑いかける。
「そうか・・・そうだよね・・・あれから二年も過ぎ去ったんだ。生きているのなら例えどんな境遇にあろうとも、当然既に行方がわかっているはずだよね。でも僕はそう考えたくなかった。セルノアがもういないと認めたくなかったんだ。だからそんな僕を気遣って言わないでおいてくれたんだよね・・・ありがとう、アリスディア」
そう、アリスディアはいつも有斗に気を使ってくれている、有斗のことを考えてくれている、罰するなんてとんでもない話だ。
こんどの件だってそうだ。ルツィアナがセルノアの幽霊なら、死んだと思っていたセルノアが現れたのなら、それが例え魂魄だけであろうとも僕が喜ぶと思ったので、『幽霊ならよかったのですが』と思わず言ってしまったのであろう。
そんな風に周囲に気を使わせていることも気付かないなんて、と有斗は自身の至らなさに穴があれば入りたい思いだった。
苦笑しつつルツィアナに笑みを向けて頼みごとを言う。
「また来てくれないかな。頼みたいことがあるんだ。それにセルノアの話を聞かせて欲しいんだ」
有斗の言葉にルツィアナは顔を上げると顔に満面の喜びを表した。
「はい! 陛下がそれをお望みでしたら、必ず!」
翌日、現れたルツィアナに椅子を勧めると有斗はさっそくお願いをしてみた。命令ではなくお願いである。
「その・・・絵のモデルになって欲しいんだ。迷惑かもしれないけど」
絵を描くのは宮廷画家とかいう奴だ。暇を囲っていた
もちろん王命である以上、例え望んだ仕事でなくても彼らに拒否権は無いのではあるけれども、彼らは王直々の指名と言うことで張り切っていた。
何せ今の中書令は無駄というものが大嫌いだ。仕事が無ければいつ首になるかわかったものじゃない、不安で眠れないというのが彼らの心境だった。だが少なくとも王が仕事を命じている間だけは首の心配をしなくてすむのだ。張り切ろうというものであった。
「そんな! 迷惑だなんてとんでもない! 陛下のためでしたら例え一糸まとわぬ姿になろうとも平気です!」
「え!?」
今、何か素敵なキーワードが聞こえたような気がするけど、と有斗が喜ぼうとすると、
「陛下、いたいけな少女を裸にしようなどと考えちゃだめですよ!」と、斜め後方からわざとらしく刀の鍔を鞘に押し当てて音を出して脅された。
王を脅すなどと言う言語道断なことを目論む奴は、言うまでもないことだがアエネアスである。
何故かこういう時に限ってアエネアスが用も無いのに執務室にいたのだ。有斗は何か適当な理由を考えて、アエネアスを追い出す下工作をしなかった己の
「アリスディアに手伝ってもらって、これに着替えて欲しいんだ」
と衣装上下一式をルツィアナに手渡した。
いっとくが特殊な趣味ではない! コスプレではないぞ! 典侍の正式な衣服だ。通常時ではなく儀式などの典礼用の特別な奴だ。
「そしてこれを髪に飾って欲しい」
有斗は机の引き出しから、この前、内匠寮に作らせたばかりのエメラルドグリーンの髪飾りを取り出した。
「そう、ほとんど同じなんだけど髪はもう少し鮮やかで・・・そう、夏の終わりごろの空のような色で描いて欲しい。目も実物より、もっと丸く大きいかな・・・」
有斗が画工司に細かな指示を出すのを聞いて、有斗が何をしようとしているのかルツィアナは察し、有斗の説明をさらに補足した。
「・・・あと顔が少し私の方が細面です。姉は少し丸顔でした」
「そう・・・そうだったね。たぶん並んでみたら君の方がお姉さんに見えるんじゃないかな?」
確かにセルノアのほうが妹みたいだ、と有斗はそう言って笑って見せた。
「姉と言っても成長が止まっておりましたし、それに・・・もう私の方が年上になってしまいましたから」
「あ・・・」
そう、死人はもう年を取らない。月日が過ぎ去ってもあの日の姿のまま生者の心に残り続ける。
「そうだね・・・そういうことになるんだろうね」
明るい笑い声が執務室に響きわたった。それはルツィアナの笑い声だ。
姉妹だけあってルツィアナの笑い声はセルノアのそれとよく似ている。だけど少しだけ違う。それが少しだけ悲しい。
だけどセルノアの笑い声に似た声が耳に響くだけで有斗の心には、しばらく忘れていた何か暖かいものが流れ込んでくることを感じていた。
「そしたら川に落ちた姉は、洗濯の手間が省けたと言ったのですよ」
「へぇ・・・いかにもセルノアらしい」と有斗が笑うと、
「はい」と言ってルツィアナも笑った。
「そして昔から元気印だったんだね」
「はい。姉が悲嘆にくれたところを私は見たことがありません。いつも笑顔でした。それがどんなに周囲の者を救ったことでしょう。もちろん妹である私もです」
というとセルノアが女官になった理由を話してくれた。
「アヴィス家は士大夫の家柄でございましたけど、何代も下級役人がせいぜいの家柄でしたので、それほど裕福ではなく、さすがに娘二人両方に師をつけて科挙を受けさせるほどの余裕はありませんでした。両親は悩みました。どちらに師をつけるか考えた結果、姉を選んだのです。だけど妹として生まれた私は、可愛がられて
・・・
昔から自己犠牲の人だったんだな・・・
その自己犠牲があんな形となってセルノアの命を奪うことになった。そう思うと有斗はいたたまれない気持ちになる。
また逃げ出してしまいそうになる。・・・だけど逃げるわけにはいかない。もう一度逃げたら、きっと有斗は本物のクズになってしまう。
そう・・・そのセルノアに報いるためにもアメイジアを統べる天与の人にならねばならない。それが有斗にできるセルノアへのせめてもの罪滅ぼしだ。
「・・・立派なお姉さんだったんだね」
有斗はようやくそれだけを言うことができた。それ以上話したら、いろんな気持ちが一気に噴出しそうで、口を動かすことができなかった。
「はい!」
有斗の心の葛藤を知らぬルツィアナは無邪気に笑う。
その顔はやはりセルノアによく似ている。それがまた有斗には辛かった。
「・・・?」
アエネアスは執務室の扉の陰に隠れるようにして立っているというセルウィリアに声をかける。
後宮の警備責任者でもあるアエネアスには見過ごすことができない明確な不審な行動である。
「どうしたの? なんか怪しい人になってるよ。入ればいいじゃない」
「しっ! 黙ってください! 敵情視察をしていますの!」
「敵情・・・?」
セルウィリアに習うようにしてこっそり執務室を覗き込むと、そこには今日もルツィアナが座って絵のモデルをしながら有斗と談笑していた。
「・・・・・・なるほどね」
確かに王配の地位を狙っているらしいセルウィリアにとっては敵ということになるであろう。
「しかし陛下のお心を捕らえて離さないと聞いたからどのような美人かと思ったら、あの程度ですか。たしかに美しいことは美しいですが、後宮の女官としてはあの程度の美しさ並み以下です。あれならわたくしのほうがずっとずっとずぅーっと美人ですわ」
有斗の心を捕らえているのが自身ではないということにいたく傷ついているのか、セルウィリアは『ずっと』という副詞をことさら強調した。
「あはは。アメイジア中にその美を知られてる関西の王女様にかかったら、ほとんどの女は美醜では太刀打ちできないだろうね。でも・・・陛下が好きなのはたぶん外見じゃないんだよ。そんなものだけで人を判断する人じゃないもの」
ルツィアナとセルノアは違う、とアエネアスはセルウィリアに言ったつもりだった。
「貴女は随分と余裕ですね。かつて愛した人、そして最後まで結ばれなかった人とそっくりの人が現れたのです。想い出は想い出であるが故、過ぎ去った過去であるが故、輝きます。生きている人間は未来は作れても、過去は改変できない。余裕を見せていると陛下はあの女に取られてしまいますわよ?」
「別に陛下が誰を好きになるかは陛下の勝手だよ! わたしには関係ないじゃない。それに陛下はルツィアナさんを選ぶことはないと思うのよ。陛下が好きなのはセルノアさんだもの。彼女と共に過ごした時間が何よりも大切なの。セルノアという女性の外面じゃないよ」
「羽林中郎将は随分陛下をご信頼してらっしゃること。男は意外とロマンチストですのよ。過去に囚われ、美しい過去だけを脳裏に浮かべ、現実に目を閉ざし暮らしていくことができる生き物なのです。例え本人ではなくとも、似ているからと言う理由だけで心の空白を埋めることができる生き物です」
そう言うセルウィリアはぎゅっと下唇を噛み締めていた。
もしもう少し力があったら間違いなく掴んだドアの端を握りつぶしそうなくらい、もし王女でなかったら歯軋りでもするんじゃないかと思うくらい悔しそうだった。
嫉妬とは欲しいものを持っている者に持っていない者が抱く感情である。
ふうん・・・こんな何でも持っているような王女様でも他人に嫉妬することもあるんだ、とアエネアスは意外な思いでセルウィリアを見つめた。
二週間後、絵は完成した。初めて絵を見ることになったルツィアナは興味津々だった。
恐々と完成した絵を覗き込むと、そこにはルツィアナではなくセルノアの姿があった。
ルツィアナはそれがとても嬉しく、そしてそれが少し悲しかった。
「陛下、幸せですね姉は。陛下ほどのお人にここまで思われるなんて」
「そうかな・・・?」
「少し不敬なことを申し上げてもよろしいでしょうか?」
「いいよ。ルツィアナにはこうして毎日来てもらっているんだ。何でも言ってくれてかまわない」
「私、のぼせ上がっておりました。だって陛下にこうして毎日呼び出されてお話を賜うことができるのですから。陛下は未だ独身であられます。そして姉をたいそう愛しておられます。ひょっとしたら私が姉に代わって・・・後宮の主になる日が来るのかもしれない。そうなったらどうしよう? でも・・・亡き姉もきっと喜んでくれるはず・・・それに、いつか私を愛してくれるかも・・・なんて思っていたりもしちゃって・・・不敬な考え方ですね。申し訳ありません」
「・・・いいや」
有斗にはそういった気持ちは思い浮かばなかったが、そういったことで悲しみを埋めようとする人がいることもなんとなく理解できた。
それに有斗だってルツィアナとの会話で心の寂しさを埋めようとしなかったわけではない。ということはルツィアナの想像は完璧な誤りと言うわけでは無いのだ。
「ですがこの絵を見て確信しました。陛下は私ではなく、私の向こうにある姉の姿を見、私の中にある姉の記憶と話していたのですね」
ルツィアナは困ったような、悲しいような顔で笑う。
「陛下。姉に成り代わり感謝申し上げます。これほどまで愛していただいて姉は果報者です。だけど・・・同じ女性として少し羨ましいです。死んでも好きな人の心を捕らえ続けるなんて、少しロマンチック過ぎます。ですが陛下・・・陛下は一般人とは違います。姉一人の陛下ではありません。陛下はこの世界全てを背負っておいでです。姉に囚われないで下さい。新たな女性を見つけて生涯の伴侶となさってください。きっと姉もそれを願っていると思います」
そう、それが陛下が背負うべき役目。
そしてそれを告げることがきっと姉に似ている私の役目、そうルツィアナは感じていた。
有斗は驚きで大きく目を見開いた。
その時のルツィアナの顔はまるでセルノアの顔そっくりだった。ルツィアナの身体を借りて、セルノアの霊魂に言われたような気がしたのだ。
その日、ルツィアナが退室した後、有斗は執務をせずにずっと天井を見つめているだけだった。
だがアリスディアも有斗の気持ちが分かるだけに一言も文句を言わなかった。
「アリスディア・・・」
有斗がアリスディアの名前を呼んだ。
「はい」
「欠員にしていた典侍、
官吏が増えると同時に、女官も増員し、グラウケネをはじめ典侍は三名にまで増やしていた。
三名なのは、最後の一人を埋めることを断固として有斗が認めなかったからだ。そこはセルノアの場所である、と。
「陛下・・・無理に増やさなくても大丈夫です。別に今の人数のままでも後宮はやっていけます」
最近はセルウィリアの我儘も大人しくなった。もとより有斗は女官の多寡を問題にするような君主ではない。
今現在の数でやっていけている以上、無理をしてまで増やす必要はこれっぽっちもないのである。
「して欲しいんだ」
「陛下・・・」
「区切りをつけなくちゃいけないと思う。いろんなことに」
そう、いつまでも過去に囚われているわけにはいかない。有斗の下には今この瞬間にも裁可を必要とする多量の問題が持ち込まれているのだから。
悲しいけれども忘れなければいけないのだ。それが王と言うものなのだろう。
有斗はようやく王というものがどれだけ孤独な存在なのかを感じた。
「・・・御意」
アリスディアは深く叩頭すると、足早に立ち去りラヴィーニアの下へと向かった。
残った有斗は入り口近くにアエネアスがいることに気が付いて、「アエネアス手伝ってくれない?」と、頼み込んだ。
「何を?」
「絵を飾るんだ」
アエネアスはとうとうその絵を見てしまった。これまで見ないように見ないようにと避けていたその絵を。
青い髪の優しい、明るく元気そうな少女がそこにいた。
「かわいい人だね。これがセルノアさん?」
「うん」
「優しそうな人・・・有斗が好きになるのもわかる気がするよ」
わたしとはまるで正反対だ・・・とアエネアスは思った。
「・・・うん」
飾るとすると場所が問題になる、とアエネアスは部屋をぐるりと見回して候補地を選定する。
「で、どこにする? 有斗から見えるところがいい? それとも有斗の真後ろに飾ろっか?」
「こっちだよ」
有斗は通常時は垂れ幕で隠している、執務室の奥の扉を指差した。
「あ・・・」
そこは確か、とアエネアスは記憶を手繰り寄せる。南部から王都に攻め入った時に有斗が向かった部屋、燃え落ちて半ば崩れた有斗の昔の執務室だったはずだ。
部屋は
「ここでいいの? せっかく綺麗な絵ができたんだから、何もこんな煤けた場所に飾らなくてもいいんじゃないかな?」
「ここでいいんだ。だってここが僕とセルノアの場所なんだから」
そう、こここそが二人がいた場所、僕の原点なのだ。
「この部屋は新法で反乱を起こされた僕の愚かさの象徴だ。そしてセルノアと過ごした思い出の場所でもある。僕が一生背負っていかなくちゃいけないことだ。この部屋も、セルノアのことも」
だけどそれは表に出しちゃいけないことだ。
苦しくても悲しくても辛くてもそれは人間としての僕の感情でしかない。王としてのものじゃないんだから。きっと他の人には見せるべきものでは無いんだ。
「有斗・・・大丈夫?」
「ゴメン、アエネアス。しばらく一人にしてくれないかな?」
有斗は絵を見上げたままアエネアスのほうを見もせずにそう言った。
アエネアスはそっと溜息を洩らすと静かに部屋を後にする。
執務室に入ると、戻ってきたアリスディアと鉢合わせになる。きょろきょろと顔を左右させている。どうやら有斗を探しているらしい。
「アエネアス? 陛下がどこに行ったか知りませんか?」
「しっ!」
アエネアスは唇に人差し指を立てて静かにするように合図を出す。
そして顔を開かずの扉に向けてアリスディアに有斗の居場所を暗示する。
「あ・・・」
それだけでアリスディアには大体の事情が理解できた。アリスディアは口に手を当てると押し黙る。
「セルノア・・・」
遥か遠く二人の間を運命が裂いてより、歳月だけは過ぎ去った。
声も姿も両共に遠いものとなってしまった。
思えば最近はセルノアが夢に現れることもなかった。
そう、理性ではわかっていたのだ。セルノアと再び会うことが無いことを。
額縁の中で笑っているセルノアに有斗は謝る。
「セルノア・・・ごめん、僕は・・・」
有斗は一時間以上、部屋から出て来なかった。
有斗はその夜、夢を見た。
夢の中でも有斗はいつもと変わらず大量の仕事に追われていた。
その横には幸せそうに笑うセルノアの姿があった。
有斗は幸せな気持ちで素晴らしい夢を夢見ていた。
だけど・・・
だけど・・・有斗は何故か寝ながら涙を流していた。
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