第164話 韮山崩れ(Ⅵ)

 左翼が壊滅した後、カヒの兵は次なる獲物を求めて中央部へと襲い掛かった。

 その横からの強襲に多大な損害を出しつつも、それなりに王師は健闘し、しばらく持ちこたえることに成功する。

 先の撤退で大きく傷を受けていたバルブラ隊は押されるままにずるずると退いたが、プロイティディスが左翼に兵を回して戦列を作り、そこでカヒ兵の足を一時、食い止めたのだ。

 見苦しいほど乱れに乱れて後退していたエザウの部隊は、代わりに一息入れることができた。

 だがエザウは自身の部隊を纏め上げると、己の代わりに盾となってくれたプロイティデス隊と槍を揃えて敵に立ち向かうのではなく、一刻も早い戦場離脱を試みようとした。

 それは自身の上官であるバルブラの許可を得ぬ行動だったが、エザウはヘシオネを己の上官と思い、バルブラを同格の副将軍と受け取っていたから許可を得なくても構わないだろうという横着な考えだったのである。

 そもそも既に左翼のアクトール、ベルビオ、ステロベ三隊が逃げ出しているのだから自分が逃げ出したとしても何の不都合もないとも考えていた。

 もっとも一番の理由はカヒ兵の噂に違わぬ剽悍ひょうかんさに恐れを抱き、一刻も早くこの場を逃げ去りたいと感じたからであった。バルブラの許可など待ってられるかというのが本音なのである。どこまでも自分勝手な男であった。

 だが戦場で退くにあたって命を守るには部隊でまとまって退くしかない。一人、敵に後ろを向けて逃げ出すなどは、殺してくださいと言っているのも同然なのだ。もちろんエザウもそれくらいは承知している。

 だから部隊の隊伍を整えて、それから向きを変えて逃げ出そうとしたのだが、そこはエザウのことである。プロイティデスやバルブラのように手早く兵を動かすことができないだけでなく、せっかく整った隊伍を乱すありさまである。

 そこを見逃すような甘いカヒの兵ではない。カヒの痛烈な攻撃がエザウ隊の無防備な側面に突き刺さった。エザウ隊はひとたまりもなくバラバラになった。

 安全なところに逃れたと、ひとたび気を抜いていたエザウは完全に虚を突かれる形となった。

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 恐怖で錯乱したエザウは考えることを放棄し、本能の赴くままに敵の攻撃のないほう、敵兵が少しでも見当たらない方へと兵を置いて駆け出した。

「む、あやつ、またしても勝手なことを!?」

 バルブラはエザウの味方の足並みを乱す行動に眉をひそめる。王が戦場を無事に落ち延びるためには、今こそ全ての部隊が心を合わせて行動すべき時なのである。

 だがエザウは文字通り目の前のことしか考えられなくなっていた。敵兵の薄い方角に逃げたのはよかったが、なんとそれはあろうことか敵主力がいる方向だったのだ。

「エザウ殿!! どこへ!?」

 部下たちは慌ててエザウを追いかけた。真実を考えると滑稽なことだが、その姿は外からは果敢にも敵に向かっていくように見えた。

「バルブラ卿、エザウ殿は味方の為に盾となる気では?」

「ほう・・・・・・」

 思わぬ成り行きに流石さすがにバルブラもしばし言葉を失う。

 エザウがそんな行動をとるとは、ほんの少しも思わなかったのだ。

 だがエザウ隊だけで津波のように圧し掛かるカヒの大軍を支え切れるとはとても思えなかった。エザウがそれほどの将才の持ち主なら、バルブラはこれほど苦労しなくて済んだのである。すなわちエザウの行動は兵をあたら無駄に失うに等しい。

 そして今のバルブラにとってエザウ隊の兵力を失うのは大きな痛手ではある。

 しかしエザウはそもそもバルブラのコントロールを受け付けない。はなっから戦力として期待はしてない。ならば防衛線を崩壊させるような余計な行動をされるよりはマシである。

 突出して戦い、敵軍の足を止めてくれるのなら願ったり叶ったりである。その戦いで敵の陣形を崩せば付け入る隙が見えるかもしれない。

 エザウ隊の兵を見殺しにすることになるので気が進まなかったが、ここは兵を殺して王を逃がす時間を稼ぐのが己が領分であると心を鬼にする。

「・・・・・・あやつにも勤王の心があったと見ゆるわ」

 バルブラは珍しくエザウを褒めた。

 一方のエザウにしてみれば、褒められたところで嬉しくは無かっただろう。周囲は見渡す限り敵ばかりであり命の危機である。そもそもバルブラの言葉を知りうる手立ても無かった。

「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 エザウにできることは半泣きで、鼻から鼻水を垂らして大声で叫びながら目の前の敵と戦うだけだった。手を止めたら殺られる、その思いがエザウの身体を限界ぎりぎりまで動かしていた。

 さすがのカヒの兵もエザウの異様な風体に腰が引けたか、当初は押され気味だったものの、そこは突出した孤軍、やがて一人、二人と討取られ始めるとエザウ隊は雪崩を打ったように敗色を濃くし、兵士たちは次々と落命していく。

 奮戦していたエザウも、それを見てとうとう闘志を失った。目の前の立派な鎧で身を固めた男をカヒの名のある武将であろうと見て、武器を捨てて跪き、命乞いを始めた。

「どうか命だけはお助けを! わ、私には妻も子もいるのです。まだ死にたくない! も、もし、命を助けて下されれば、このエザウ、生涯かけて忠誠を誓いまする!!」

 だがその武者はエザウのその哀れな姿を見ても、心動かされることは無かったようである。

「腰抜けが!」

 エザウの顔面に蹴りを入れ、その肥満した巨体を地面に転がした。

「うわっ!!」

 無様に転がったエザウの首を狙って、一斉に徒士武者が取りつき押さえつけ身動きを取れなくすると、冷たい刀の刃を首元にピタリと押し当てる。

「やめ、やめろおおおおおおおおおおお!!!」

 もちろん、カヒの兵はエザウの必死の声など聴く耳を持たなかった。鈍い刃が首にゆっくりとめり込み、エザウの命を絶った。

 統率する者を失うと、エザウ隊はたちまちカヒの兵にりつぶされ、逃れ得たものは十に三という惨状であった。


 邪魔者を片付けたことでカヒの中軍への攻撃は一段と激しさを増す。それをプロイティデスが懸命に支え続けていた。

 それにプロイティデス旗下の元関東王師中軍である第一軍は関東王師の最精鋭である。だからこそ絶望的な戦況の中でも心を折ることなく必死で戦列を保ち、三方からの攻撃にも守り続けることができた。

 守る対象は王だ。王旗が戦陣に立っている以上、例え最後の一兵になろうとも、その周囲に敵を近づけるわけにはいかない。例え他の友軍全てが逃げ出したとしても、彼らだけは逃げ出すわけには行かぬ。そういう意地があった。

 逆に言えば、王旗がなくなれば、心の支えを失った彼らは崩れ落ちる危険性がある。


 有斗の説得に成功したアエネアスはすぐさま逃げる準備に取り掛かった。羽林の兵を集めると手短に命令を下す。

「荷物は持っちゃだめ、捨てて行く。旗も馬印も無用、いいわね。馬を連れて来て。急いで!」

「へ? 僕は馬になんて乗れないよ?」

 戦場でも馬車で移動していた有斗はすっかりそれで帰るものだとばかり思っていた。

 それに乗馬訓練をたまに受けてはいるのだが、いまだに馬は有斗の命令を素直に聞いてくれはしない。馬を乗りこなすというよりは馬の上に乗っているのが精一杯といったレベルだ。

「だからといって撤退するのに馬車みたいな遅いうえに目立つ乗り物と言うわけにはいきませんよ? 大丈夫です。私の後ろに乗ってください。陛下は黙ってつかまっていてくださればいいのです」

 それなら有斗にもなんとかなりそうである。

「う、うん。わかった」

「へんなところを触らないでくださいね。馬から落ちちゃいますから!」

 こんな時でも相変わらず減らず口を叩くアエネアスに有斗は苦い顔を見せた。

 アエネアスはひとつにまとまって退却する策を取らなかった。

 後方から追撃されるのである。兵が何人いようと所詮防ぎきることはできない。ならば素早く小回りがきく少人数で行動し、逃げたほうが逃げ切れる可能性が高い。それに羽林の兵は派手だ。戦場では実に目立つ。それが一塊になって動いていたら、いかにもそこに有斗がいますよと言っているようなものであった。だから羽林の兵を三つに分けてそれぞれ離れて行動することにした。

 用心のためである。もし他の隊を王と誤認してくれれば逃げ切る確率はさらに高くなる。

 だがその計画はあっけなく脆くも崩れ去る。

 カヒの騎馬突撃によって追い散らされたベルビオ、エザウなどの敗兵で既に街道はごった返していた。騎馬で駆け抜けようにも、その空間が無かった。これでは徒歩となんら代わりが無い。いや、目立つぶんだけ徒歩より始末が悪い。

 さらにはそれを追ってバルカ隊が後方の逃げ道に蓋をするように回り込んで迫っていた。

 アエネアスは連れて来た馬を綱を解いて放つと振り返り、有斗に予定と変わることを告げた。

「このままでは追いつかれちゃう。徒歩で行ってほうがいいかもしれません」

「大丈夫かな・・・」

 有斗は後方を振り返る。

 そこには王旗がまだ高々と上がっていた。そしてそれを守らんとするかのように王師たちが必死に戦っていた。

 兵を置いて退却することに納得はしていたが、それでも自分を無事に落ちのびさせるために戦っているのだ。気にならないほうがどうかしている。

「今は彼らのことは考えちゃダメです。陛下が落ち延びることだけを考えてください」

 いかに王とはいえ、今の有斗に彼らにして上げられることは何一つ無い。王都に帰ってから彼らの犠牲に好きなだけむくいてやればよいのだ。

「う・・・うん」

 有斗たちは街道を落ち延びる兵たちに紛れ、西へと足早に歩き出した。


 有斗が落ち延びて、統一した指揮が執られなくなったにもかかわらず、まだしばらくの間は王師はカヒの攻勢に対して持ちこたえていた。

 挟撃を受ける形となったプロイティディス隊は極度の苦戦に陥り、王の本営近くまで陣を割られていたが、決死の覚悟をもってして、なんとか全面崩壊だけは食い止めていたのだ。

 だがその働きももはや限界が近づいてきている。陣は寸断され、将は満足な指揮が取れず、カヒの兵が本営に取りつきつつあった。

 王旗を間近に見たカヒの兵はいきり立って王旗に殺到してきたが、そこにはバルブラが、もはや空になった本営の前に兵を折り敷き待ち構えていた。

 先の撤退戦で大きく傷を負い、次いでエザウ隊を失ったバルブラ隊で戦える兵は既に四千を切っているのは確実だったが、数量で圧倒するカヒの兵をことごとく跳ね返した。

 カヒの兵が王旗をの当たりにして逆上して無秩序に掛かってきたことも要因の一つであろうが、それだけバルブラの指揮が際立っていたということでもある。

 しかもカヒの攻撃をバルブラ隊は四度も跳ね返した。二度目以降は一度目と違ってカヒの兵も組織だって襲い掛かってきたにも関わらずである。

 もはや負けが決まった戦で、手元には僅かなくたびれ果てた兵があるのみ。戦いは何の備えもない野戦であり、守り切ることは絶対に不可能である。だがバルブラの心は決して折れることなく、むしろ震え立つと同時に冷え冷えと冴えわたっていた。

 対してプロイティディス隊はカヒの攻勢の前にもはや寸断され、崩壊する寸前であった。あと一歩のところで踏みとどまれたのは、カヒ軍がプロイティディス隊の壊滅よりも本陣に取りつくことを優先したためと、プロイティディス隊を割って攻め寄せてくる部隊をバルブラが叩き返していたからである。

 バルブラは騎兵を率いて本営の前を東西に縦横無尽に駆け巡って、劣勢の味方を支え続けた。

 だがバルブラ隊は寡兵の上、肝心の兵が気力も体力も尽き果てていた。バルブラがどれだけ奮闘しても敵軍の勢いをいつまでも削ぐことはできない。やがて混戦となった。

 混戦の中、部隊があちこちで寸断され、統一だった動きが取れなくなるが、それでもバルブラはカヒの兵を肝心の本営に一歩たりとも踏み入れさせない。

 しかし戦いが長引くにつれ、次々と兵は落命し、バルブラの行動圏は本営の真ん前に限定されていく。誰の目にも劣勢は明らかだった。

 それでもバルブラは敵兵を押し戻そうと幾度も突撃を繰り返す。カヒの百人隊長はバルブラの指揮ぶりに舌を巻き、正面から戦っても負けはしないものの優勢に持っていくには時間がかかると、馬の足に戈を掛ける戦い方に切り替えた。

 次々と兵が馬上から叩き落された。衆寡敵せず、バルブラの馬もとうとう足を刈られてしまう。

 落馬したバルブラの首を狙って兵が一斉に押し寄せた。

 バルブラは片膝を立てて起き上がると、自慢の総鉄槍を力いっぱい振り回して敵兵を弾き飛ばした。老齢に似合わぬその俊敏で力強い動きに、カヒの兵も思わず怯む。

 しかもそれにもめげずにかかってきた、自分より何周りもの年若の、肩の筋肉が異様に盛り上がった、いかにも腕の立ちそうな武者を僅か三合で切り捨てた。

「ば、化け物か!?」

 カヒの兵の剽悍さは広くアメイジアに知られているが、そのカヒの兵士たちをも怯ませる驚愕の戦いぶりであった。

 だが長い白兵戦でバルブラは満身創痍で、体のあちこちから血が流れだしていた。

 気が飛びそうになることもなくはない。ずっしりと重い疲労が老いた身体におぶさっていた。

 それでもバルブラはまだ戦っていた。立っていた。生きていた。

 何故だろうか?


 戦国の時代に生きる武者にとって生きるとはなんであろうか。

 他者を殺戮し奪い去る悦楽にふけるような、享楽な日々に明け暮れて生きているのであろうか。

 そういう者は実は稀なのである。

 確かに若いうちは、そういった生き方に染まるものは少なくない。

 戦って勝てば多くのものを得ることができる。負けても生きてさえいれば次があると思うことができる。

 死んだ奴を見ても、あいつは運がなかった、あるいは力がなかったとあざ笑えば済む話だ。

 だが年を経るにつれ人の考えは変わるものだ。生き残れば得るものも増え、守るものも増える。持つものが多くなるにつれ、新たに何かを得てもその感動は失われる。家族や親しい者を戦で失うたびに虚無が心を蝕んでいく。失敗を重ねるたびに、次への行動を移すための気力が湧きでなくなる。

 生き残って戦いに勝利しても、失うものが得るものより大きくなっていくのだ。

 そして死は避けがたいものである。身近に死がありふれている生活で暮らしているからこそ、彼らは強く実感する。

 特に戦国の世に武人として生きるからには、畳の上で死ぬことなど贅沢過ぎる望みといっていいだろう。

 己がそれまで獲ってきたいくつもの兜首を考えるがいい。次に彼らの仲間入りをするのが自分でないとはとても否定できまい。

 それに死ぬのは戦だけと限ったわけではない。謀略、暗殺、政略・・・今日、どんなに栄華を誇った権力者であっても、明日には屍となって野に捨てられる可能性はゼロではないのである。

 自分だけが例外であるなどと思えるはずもない。

 惨たらしい死をいくつも目にするからこそ、彼らは最後に願うのである。

 幾千幾万もの両軍の兵士の目の前で、痛みも苦しみも感じないほどの戦場の熱狂と興奮の中で、生と死の狭間を越え、幾数年も語り継がれるような、余人の羨むような鮮やかな死を遂げんことを。

 バルブラもその例外ではなかった。

 兄弟や戦友、そして子供を失うたびに、戦場にてどう果てるか、そればかりを考えていたといってもいい。

 誰もが羨むような大功を立てて死にたい。後の世に長く語り継がれる英雄的な末路を迎えたい。

 だからバルブラは霞む目を見開き、遠くなりかけた意識を無理やりに引き戻して、力を振り絞って槍を振り回した。

 己が意地を通すだけならばもう充分である。

 だが、まだ王が落ち延びてから多くの時を経てはいない。王が無事に逃げおおせるかはバルブラが一秒でも長く戦い、一兵でも多く地獄への道連れを作ることに掛かっている。

 バルブラは王を戦場から落ち延びさせることと引き換えに死ぬことで、己が生きた証をこの世界アメイジアに残さんと欲したのである。


「ええい! 弓だ! 弓を使え! 弓を射よ!!」

 腰の引けた兵士たちを見て、士官は事態を打開しようと接近戦にもかかわらず弓を射させる。半ば乱戦である。そのような状況では味方にも当たるし、矢の威力もたいしたものにはならない。背に腹は代えられなかったのだ。

 だがこの攻撃で残り少なくなったバルブラの手勢のほとんどが討ち死にした。

 バルブラは槍を振り回して飛んでくる矢を落とそうとするが、もちろんそのようなことで防ぎきれるわけもなく、体中に幾本もの矢が突き刺さった。

 バルブラの口から鮮血が飛び散った。

 動きを止めたバルブラにカヒの兵が襲い掛かるが、バルブラは体に刺さった矢を槍の柄で叩き落すと、再びカヒの兵を一兵残らず叩き返す。

 そしてバルブラは渾身の力で地面に槍の石突を叩きつけ地面にめり込ませると仁王立ちし、まるでけだものの遠吠えのような大きな叫び声を上げ威嚇した。

 それまでの鬼神の如き戦いぶりと、憤怒の形相にカヒの兵は怖気づき、それ以上、バルブラに掛かって行こうという勇気ある者は現れなかった。

 奇妙な静寂が生まれた。

 戦場の中でそこだけ時間が止まった。


「良き敵なり! 我こそはカヒの百人隊長ビエノルである。いざ参る!」

 膠着した事態を打開しようと、腕に自信のある男が名乗りを上げると剣を構えてバルブラに相対する。バルブラは尚も不動である。

 しかしビエノルが声を上げ、構えを変えてもバルブラは反応しない。ビエノルはなかなか隙を見いだせず斬りかかれずにいた。

 だがやがてバルブラと自分の目線とが噛み合ってないことに気付くと、ビエノルは剣を下ろし、同僚の静止の声を無視してバルブラに無防備に近づいた。

 バルブラはなおも動かなかった。

 ビエノルはバルブラの肩に手を当て、体重を乗せてゆっくり押した。

 バルブラの身体はその体勢のまま、音を立ててあおむけに倒れこんだ。

「既に死んでおったか」

 ビエノルは頭を軽く下げて礼を示すと、ベルブラの首めがけて剣先を振り下ろす。


 カトレウスの傍を離れて前線に出て兵を指揮し、その戦いの一部始終を見ていたニクティモが苦々し気に呟く。

「恐るべき男よ。恐るべき男が王師にはいる」

 それはバルブラのことだけを指して言ったわけでは無い。

 この男は自ら望んで殿となり、死ぬまで戦ったのだ。王を守るために。

 兵を喜んで死に向かわせることができるということは誰にでもできる芸当ではない。特に目の前の男のような、人生経験も豊富で、多くの兵を率いることができる将軍に対して。

「王にはそれができる・・・それだけの価値がある男だということか」

 生かしておいてはいけない。我らが御館様が天下を手中にするためには、そのような男を決してここから生かして逃がすわけにはいかない。ニクティモは強くそう思った。

「とく急げ。王が首を所望ぞ」

 ニクティモは幕僚たちをも戦場につぎ込む。ここで手持ちの余剰戦力の全てを叩きつけることで、戦いを完全にカヒのものにしようとしたのだ。


 バルブラが死んだことで、カヒの兵の足をとどめるものはもう何もない。

 雪崩を打って本営にカヒの兵がなだれ込む。

 夕闇が戦場を包み込む前に王旗は倒れた。

 正面にいたニクティモらには後れを取ったが、プロイティデスの第一軍を斜めに突っ切るように寸断したバアルの勢いは留まることを知らず、エレクトライ隊の後備を襲い、バルブラの死と共に崩壊したバルブラ隊を蹴散らして、戦場に高々とあがる王旗の下にまでたどり着いたのだ。

「くそっ!! やはりもう逃げ出していたか!」

 陣幕につっこんだバアルは人一人ひとひとりいない本営を見て落胆する。

 共に付いてきた兵たちも腹立ち紛れに陣幕を切りつけ、王旗を倒し、床几を蹴倒す。

 ここに王がいれば全ての片がついたはずなのだったが。

 とはいえバアルも半ばいないであろうと覚悟はしていた。こんな状態になってもまだ戦況をひっくり返せると思って陣中に留まっているとしたら、それはよほどの愚か者である。

 しかし王はいなくても王の本陣を強襲したことは無駄にはならなかった。王旗が倒れたその瞬間、王師に辛うじて残っていた勇気のかけらが砕け散ったのだ。

 バルブラ隊、プロイティデス隊に次いで、ヒュベル隊も、エテオクロス隊も、エレクトライ隊も相次いで潰滅した。

 王師は終に全面崩壊し、もはや軍隊の態をなしておらず、カヒの槍先から逃げ惑う哀れな子羊の群れと化していた。

 バアルに王旗の下まで追随してきた兵たちは一割にも満たなく、しばしその波に揉まれないようにまん丸になって守らなければならなかった。

 もちろん彼らは逃げるのに精一杯で、バルカたちに構うことなどそうそうなかったのではあるが、それでもその退路をバアルたちが塞ぐ格好になれば死に物狂いで反撃をしたであろう。彼らを押しとどめるには三百を切る兵では、さすがに数が足らなかった。

 やがてバアルの周囲は逃げ惑う敵兵から、それを一方的に虐殺するカヒの兵へと様変わりする。

 と同時に、バアルの旗印を見つけてカトレウスから預かった三翼の兵が集まってくる。

 さすがに疲労の色は隠せないものの、勝利の興奮でまだまだ気力は衰えてはいない。

 よし、これなら追撃はできるであろう。我々も体力的には辛いものがあるが、敵はきっとそれ以上に疲れているはず。

「完全に闇に包まれるまではまだしばしの時間がある。王はそれほど遠くまで逃げてはいないはず。こんな好機はめったにない。追撃をしたいが、皆の意見はどうだろうか?」

 バアルは念のために皆の意見を聞いておくことにした。聞く前から返って来る答えは、もちろんわかりきってはいたが。

「むろん追撃しましょう!」

 三翼の将軍たちは鼻息も荒く同意した。王を捕らえるのなら逃げた王を追撃するしかない。

 それに逃げる敵を追撃する時が敵に一番被害を与えることができるのである。カヒにとってもバアルにとってもそれは望ましいことである。

 だがバルカが独断で兵を動かし追撃したということになれば後々問題になるかもしれない。

 かといってカトレウスに許可を貰いに行くことは気が進まない。使者が行って帰ってくるまでの間にも敵は遠ざかってしまうのである。そんな時間のロスは避けたい。

 それにカトレウスは慎重な男だ。兵の疲労や、まもなく闇に包まれることを理由に追撃を止めるかもしれない。バアルにこれ以上手柄を立てさせて名前を上げさせるのを不快に思い、他の将軍をその役目に当て、バアルの進言を婉曲に拒否することだってありうる。さらに王を捕まえようと兵を進めることが、それほどまでに功が欲しいのか、浅ましいなど思われ、カヒの諸将からいらぬ嫉妬を買うかもしれないからである。

 だがそれが指揮下に与えられた三翼の将軍との合議の上でだったとしたら、その全ての口を塞ぐことができるのだ。

「結構。では追撃する。遅れるな!」

 バアルは兵を率いて東山道を駆け出していった。


 王旗が倒れ、敵陣が砂上の楼閣のように崩れ去る光景をカトレウスは呆然と見守った。

 その時、彼を捉えた感情は達成感でも喜びでもなかった。未知の感情だった。強いて言えば驚き、が一番近かったであろうか。

 彼は有斗のように積極的にこの世をうんぬんしたいという思いがあったがために戦ってきたわけではない。ただ生きるために、生き残るために必死に戦ってきただけだ。

 とはいえこの戦国の世で名を上げたい、何か偉大な人物になってみたい、という若い時に漠然ばくぜんと抱いた思いは、今だ彼の心の奥底を明々と照らし続けていた。

 今、それを俺はやり遂げたのだ、とカトレウスは思った。

 召喚の儀とやらで呼び出された天与の人とやらに率いられた王師の大軍を正面から打ち破ってみせたのだ。これが偉大なことでなくてなんだというのだ。

 どうやらこの世に神はいたらしい、と突然カトレウスは長年疎遠にしてきた信仰心とよりを戻すことを決意する。

 その神様とやらはこの戦国の覇者にテイレシアでもセルウィリアでも有斗でもなく、この俺を選んだらしい。そう都合良く解釈した。

「万を超える兵同士の追撃戦は始めてだな」

 いくつもの胸のすくような勝ち戦を戦った。地べたを這うような負け戦も。

 だがそれは所詮は河東の局地戦、このような大軍を率いて、天下分け目の戦いでの大勝はカトレウスの記憶にはなかった。

「古今、未曾有のことでしょう」

 目の前に繰り広げられているこの光景をカトレウスと同じように酔ったように見つめていたガイネウスが呟く。

「兵を休ませるなよ。直ぐに追撃にかかれ。一瞬でも休めば気が緩み、疲労が体を襲う。そうなれば明日まで兵は使い物になるまい。今は絶好の好機なのだ。王師の連中にもうカヒの兵など見たくないと思うくらいに恐怖を植えつけるのだ」

 そうすれば畿内で行われるであろう次の戦いを有利に進めることができる。

「はい」

「それにもしかしたら王がまだ手の届くところにいるかもしれぬ。問題は王がどこまで逃げているかだが・・・」

 もはやカトレウスの興味は次の段階に移り始めていた。この追撃戦でどれくらい戦果をあげるかといったことや、早くも畿内に大兵をもって攻め込む未来を想像し始めていた。

 諸将への恩賞、同時に諸侯の懐柔も進めねばなるまい、いやはやこれからはしばらく忙しい日々を送らねばならぬようだ、と夢は膨らむ一方だった。

 だがそれすらも不要になるかもしれない。このまま王の首を取ると言う望外な戦果があがりさえすれば。

「バルカ卿が既にいち早く追撃に移っているとのこと。敵を追い散らしつつ先へ先へと進んでいるそうです。ひょっとしたら追いつくこともありうるかと」

「目聡いやつよ。若いのに実に抜け目がない」

 カトレウスは日頃の疑い深さもどこへやら、上機嫌でバアルの活躍の報にも眼を細めていた。


 東山道は平野よりも峠、山道、山のふもとなど山がちな河東を縫うように走る街道である。

 であるから陽を隠す障害物には事欠かず、もう街道は薄暗かった。これならば追撃も時期に止むだろうと、王師の兵士の中にはほっとした者も多かった。

 だがバアルの追撃は執拗しつよう苛烈かれつだった。立ち塞がる者など無きが如しだった。

 五万の兵でごった返す街道を槍を突き入れてこじ開ける。もはや戦意を無くした兵は抵抗することもなく悲鳴を上げて逃げ回り、道を明けるばかりである。敵兵の影におびえ山に逃げ込む兵も多かった。

 バアルは雑兵には眼もくれず、ただ名のある人物と見れば襲い掛かった。その中に王が紛れ込んでいないとも限らない。

 一度ちらりと顔を見ただけであるが、戦場に似つかわしくない少年だ。間違えることはまぁありえない。

 逃げる王を追ってただただ前へと兵を進める。敵中に突出することになるが、バアルは一向に気に解さないが如く振舞う。その豪胆な姿に安心し、配下の将士も平然と敵を追うことができた。

 だがバアルのその平然さには理由がある。カトレウスは慎重な男だ。だからこそ三翼の兵が突出したまま孤軍となって何かの拍子に全滅することを恐れ、兵を後詰として送り出してくるに違いない。

 だから討ち洩らした雑兵は彼らが始末してくることを疑いもしなかった。

 それに道に迷う心配は無かった。まず逃げる敵を追っていけばよい。それに敵はご丁寧に分岐点には目印となる印をつけていたのだ。それを辿って行けばきっと王の下へ辿りつける。

 バアルは馳せた。ただただ駈けた。


 やがてそれまでの攻撃をすれば逃げるだけの敵とは違う反応が返ってきた。前に行こうとするバアルは抵抗に会い後退を余儀なくされた。

 王師は逃げているのである。武器を手放す者も多い。それどころか邪魔とばかりに鎧も旗もとにかく荷物になるものは脱ぎ捨てて逃げて当然なのである。

 だが彼らは違った。この混雑する流れの中を鎧も武器も、それどころか軍旗すら手放さず旅する一団がいたのだ。

 バアルの進軍を止めたのはその敗走に似つかわしくないその一団だった。

 脇へ避け、逃げさる味方に目もくれず、彼らは武器を構えて、バアルたちに立ち向かおうとしていた。その中に見た目も彩ないでたちの一団がいる。戦場で目立つそのみやびないでたち、羽林の兵に違いない。バアルは心の中に沸き立つものを感じた。

 彼らがいるということは・・・近くに王がいてもおかしくない。

 というより、王を守るためにこの兵たちはバアルたちに立ち向かっているのではないだろうか? 

 ならばこいつらを蹴散らしさえすれば、その向こうに王がいるはず・・・!

 バアルの心は震えた。

「突撃! この向こうに必ずや王がいるぞ!」

 バアルの声に励まされ、兵は次々と駆け出した。塊となって前面の戦列とぶつかり混じりあった。

 敵は敗残兵である。こちらは名高いカヒの騎馬兵である。敵は一旅一千を遥かに下回り、こちらは三翼三千である。道は平坦で障害物もない。敵は負け戦で士気衰え、こちらは勝ち戦で意気は天にちゅうしている。攻撃するのはこちらで、防御するのはむこうだ。どう考えても立ち向かって勝てる相手ではないのだ。馬鹿なやつらだ、くらいにカヒの兵が思っていたとしても無理のない話だ。

 だがありうべかざることが起こった。勢いよく攻め込んだバアルたちは再び跳ね返されたのだ。

 弾かれるだけならまだいい。だが尋常でない被害をこうむったことと、手痛い反撃を食らって士気が落ちることが問題だった。

 今バアルたちを支えているのは勝ち戦がもたらす高揚感である。それが兵たちの思考をいい方に麻痺させている。それが無くなったら敵中に孤立している不安や、疲労や空腹が次々と兵たちに襲い掛かり、バアルたちはこの先追撃することができなくなってしまうだろう。

 だがこの一回の攻撃でバアルは五人の死者と十を超える負傷者を出した。だのに敵は一人の死者も出さなかった。

 敵はまるで壁だった。これでは穿うがつことはできても、いつまでたっても割ることはできない。

 問題は街道のまさに中央に一人陣取って、十文字槍を自由自在に振り回す一人の男だった。

 迫り来る馬の頭を石突で叩き伏せ、体勢を崩した馬上の武者の首を一振りで貫き、回す刃先でその隣の武者の右腕を鎧ごと切断し、次の瞬間、頭上越しに背中へと振りかぶるような動きで槍を回し、背後から襲いかかろうとした武者を兜ごと叩き割った。

 まるで後ろに眼があるかのような動きだった。

 剣術ではちょっとやそっとのことでは引けを取らないバアルだったが、ちょっとものが違う、そんな感じだった。

 戦場を静寂が包んだ。

「・・・我が名はバアル・バルカ。貴殿の名は?」

「ほう。関西にその名も名高き七経無双か。アエティウス殿の仇でもあると聞く。ならば相手にとって不足なし! 我が名はヒュベル、第三軍の将軍である。存分にかかってこられるが良い!」

 そう言うとヒュベルは十文字槍を振るい、槍先の血を払い飛ばす。

 バアルもゆっくりと剣をさやから抜き放った。

「参る」

 バアルが剣でヒュベルの手首を狙う。

 ヒュベルは十文字槍の柄で軽く受け止める。

 だがそれも計算。バアルは剣を柄で滑らせ、長物を持つ指を飛ばそうとした。

 と、ヒュベルが左手を離し体を捻ってそれを避けきると、てこの原理で十文字槍が回転しバアルに襲い掛かる。

 見たこともない技・・・! 予想外のその動きに驚きつつも、身をのけぞらしてバアルは刃一枚の距離で辛うじてかわす。

「ほう」

 初見でこれをかわすやつがいるとはな。ヒュベルは敵将の腕に驚くと共に高揚する。手ごわい敵ほど勝った時の達成感が大きいというものだ。

 五合、六合、バアルは奇手を繰り出しヒュベルを攻め立てるが、その全てをヒュベルは受けきった。

 強い・・・!

 十文字槍は突く、引っ掛ける、切ると部位によって使い分けが可能だ。しかもそれを持つヒュベルの技量は生半可なものでは無い。

 十合、二十合、手数が増えるにつきヒュベルが圧倒しだした。

 勝てる。

 強いことは強いが、俺を上回ることはないな。そうヒュベルは感じた。何より二人の間の技量の差より、得物の長さと重さが圧倒的に違った。

「バルカ卿を援護せよ! 全軍突撃!」

 危うしと見たパッカスがそう叫ぶと、カヒの兵が一斉に突進する。

 ヒュベルが取り囲まれると思い、王師と羽林も負けじと前進した。

 二つの塊がぶつかり合うと、一つの大きな塊となって一進一退の攻防を繰り広げた。剣がぶつかり合う金属音、怒号と罵声、断末魔の悲鳴。夕闇が迫る中、大混戦が続く。その混乱の中、ヒュベルとバアルはお互いを見失った。

 やがて数と勢いに勝るカヒ側が圧倒し、王師は四散して逃げ出すしかなかった。

「申し訳ありません。一騎打ちに手助けなど無粋だとお思いでしょうが・・・ 余計なことをしました」

「いや、助かった。礼を申す」

 それはバアルの偽らざる本音。ヒュベルとかいう敵将は強かった。あのままではいずれ首を取られていたのはバアルであったであろう。

「これからいかがしますか?」

 パッカスは念のためバアルに問いただす。答えは決まっているであろうが。

「もちろん追撃する。おそらく王まで後少しだ」

「はい」

「夜通し逃げる敵を追うぞ! ついて来い!」

 だが文句を言うカヒの兵は一人としていなかった。前途には王の首と言う名のまばゆい栄光が待っていた。


 ヒュベルは兵を辛うじて纏め上げての後退に成功した。

 逃げながら体のあちこちに負った傷の手当をする。バアルを助けるためにヒュベルに兵が集中したためだ。

 だが敵はヒュベルに傷を負わせ、バアルを救出するために十の死屍を積み上げる羽目になった。

 事実上の敗退だが、目的は達せたはず。何と言っても王が逃げるだけの時間は稼げたはずだ。それにこれから周囲は闇に包まれる。こちらも退却しにくいが、敵だって追撃しにくい。

 このまま逃げ切れるかもしれない。


 そのころ、有斗はすでにその場を離れていた。

 実はバアルが背後から迫ってくるのに気付いた時点で有斗はヘシオネの提案に従って、ヘシオネにヒュベルと羽林の兵を半分残して、しばしその場に留まってもらい追撃する敵の目をくらますことにしたのだ。

「ヒュベル殿が時間を稼いでくれています。この間に逃げ切らなければ戦うために残ってくれた皆にも、ヒュベル殿にも申し訳が立たない」

 アエネアスはついに敗残兵で溢れる東山道を諦め、幾人かの兵がそうしているように山道を歩いて大河を目指すことを決意する。

「本当に大丈夫・・・?」

「星と太陽があります。とりあえず方角が分かれば何とかなります。西へ向かって進んで大河に出ればいいんです」

 そうアエネアスは有斗に微笑む。

 本当に大丈夫かな、とも思うけれども、道が狭くなったり障害物があるたびに大渋滞をする東山道をこのまま歩いても、いずれまた追いつかれる。

 ヒュベルが食い止めている今の間に、敵の目の届かないところに移動しなければならない。今は生き延びることが何よりも優先される。

「ここで隊を二つに分ける」

 念のため街道上に一隊残しておく。有斗を守る兵力が半減することになるが、こうしておけば敵は東山道を進むこちらの羽林の兵の群れに王がいるに違いないと思い、山中を歩いている王のことなど気にも留めず、東山道を進むであろう。

 細い、獣道か人が通る道か分からぬような道を一旦南西に出た後、西へと分け入り、山中を歩き続ける。

 やがて日が落ちた山中は完全に暗闇に閉ざされる

 進むべき方角を探そうと空を見上げても、木々で覆われ肝心の星が見えない。

「どうしよう・・・」

 アエネアスと有斗は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。

「とりあえず落ち葉と朽木を集めましょう。動くにしろ留まるにしろ火がいります」

 羽林の兵は手分けして火を起こし、薪になりそうなものをどんどんくべていく。

 周辺を探っていたアエネアスが絡みついた葉っぱや木切れを払いのけながら戻ってきた。伸びた枝でひっかいたのか頬に引っかき傷が見える。

「暗闇の中、山中を動き回るのは得策ではありませんね。思ったよりも進むことができそうにないもの。今日は休んで明日、日が昇ったら進みましょう」

 有斗はアエネアスの言葉に従い、その日は休むことにする。アエネアスや羽林の兵はともかく、肝心の有斗が疲れ切って夜通し歩く体力がないのだ。

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