第10話 ありがた迷惑
上野にある国立西洋美術館が、世界遺産に指定されましたね。
外国人建築家、ル・コルビジェが設計し、ピロティーというエントランスや富士山をモチーフにした窓、自然光を取り入れた展示が目玉らしいです。
何年か前に入った時、私はロダンの彫刻にハアハアしており、あまり建物の構造に目が行きませんでした。
あまつさえ知らないおじさんに、
「この建物はどこまで続くの?」
と訊かれ、困惑する一幕もありました。
結構広いんですね。こっちが聞きたいくらいでした。
私は美術館に行くと隅々まで見物したくなるのですが、西洋美術館は取り分け疲れました。
さらに、今回の一件で集客力が上がってしまいました。もうお終いです。私は一人静かに見学したいのです。芸術を独り占めにしたいというエゴではないのですが、鑑賞というのは集中力がいるのです。皆さんお静かに願います。
集客力といえば、東京都美術館の伊藤若冲展は、大変な混雑だったらしいです。
「ド素人が……、並んでんじゃねえよ」
私はマスコミの煽り報道を苦々しく思っていましたが、少なからず興味はありました。
伊藤若冲は、江戸時代の絵師です。採算度外視とも思える絢爛な色彩と、病的なまでに研ぎ澄まされた筆致が特徴です。
若冲のことは、何年か前に知り合いに教わりました。
だからというわけではないのですが、あの変態チックな絵師のことは、以前から気になっていました。
そもそも、代表作の
今日のように、優れた芸術が人目にさらされるのは良いこととは思いますが、製作者の意図しないところもあるのではないのでしょうか。
というわけなので、みなさんは故人の遺志を汲んで、美術館には立ち入らないでください。
草むらでポケモンでも追っかけてるといいですね。新しい出会いがあるかもしれませんよ?
え? 美術館が迷惑するって?
これこそ、ありがた迷惑な話ですね。
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