第5話 引き際

植物は偉い。

栄枯盛衰がはっきりしている。盛りの花が枯れないことはないし、それが終われば、システマチックに次のサイクルが始まる。

人間もまた火を使い、言葉を用い、文化を創造してきた。それは非合理的でもある。

人間は動かずにはいられない。それは植物と違い、動く必要があるわけだが、次はどこに行く?

月か、火星か、木星か。

根を張るには覚束ない場所に思える。

年月を経た古木の水分が抜けるように、我々にも老いに向き合わなければならない時が必ず来る。

できれば、他人から進退を決められることなく自分の意志で降りる覚悟を持てる強さが欲しい。

老いを認めることは、弱さを認めることより難しい。弱さは乗り越えられるかもしないが、老いは向き合だけで改善する見込みはない。

だが、その自由すらうばわれようとしている。文明とは厄介だ。植物になりたい。


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