高校生は思い悩むサナギ。ボキッと鳴るは腰。


そんなこんなで、買い物を終えたのは一時間ちょっと後。


黒江さんの買い物メモがあるので、一人で今夜の献立はああでもないこうでもないとやっていた時期と比べると、驚くほどスムーズに済んだ。


ただこのメモ、若干の自由度があり、『果物』ってヤツだけは曲者で、スーパーの青果売り場を右往左往した果てに選んだのは、よりにもよって旬の大玉スイカだった。倉内(嫁)の長話で脳細胞の半分が死滅していた私が、『あれ、これゴロゴロに入らないんじゃね?』と気付いたのは会計後。仕方なく重い重いスイカを手に提げ、ゼエゼエ言いながら蒸し暑い商店街を横断する羽目になったのである。


「帰ったよォ!」


息も絶え絶えに玄関で大声を上げると、目に飛び込んできたのは、脱ぎ散らかされた近所の女子高指定の靴だった。両手いっぱいのビニール袋をぶら下げ居間に入ると、無作法な靴の主は検定模試の真っ最中で、ピンクのイヤフォンを片耳に、座卓に突っ伏すように座っていた。


「相変わらず、景気の悪い顔してンなあ――」


私がそう毒づくと、少女は顔を上げる素振りすら見せずに、


「先生ほどじゃないけどね」


「生意気言うじゃないか――当たり前だ、うちはそもそも羽振りが良くないんだ。面と家計でバランス取ってんだよ」


折角捨て台詞を吐いてやったのに、肝心の女子高生は「フーン」と気の無い返事をした。


この娘の名前は土安つちやす萌々香ももか、通称モモ。厳しい校則と件の鬱陶しい母親のお陰で、一見真面目で地味そうな女子高生に見えるが、それは大間違い。このいけ好かないピンクのイヤフォンや、よく見ると地味にカールさせているセミショートの髪からも判る通り、『ご勉学に励む良家のお嬢様』と言うのは世を忍ぶ仮の姿。実際は、異性への保健体育的関心と、男性アイドルや今風のファッションで頭の中がパンパンのポンコツだった。


まあ気の毒なのは、彼女にとって家庭は公の一環であり、教師と親の目が行き届かない通学路に習い事や塾だけが、制服のスカートを器用に折り込んで膝上五センチの制限を越えられる数少ない環境だと言うことだろうか。


なま物を冷蔵庫に詰め込んだ私は、案の定入り切らなかったスイカを両手に『はて、どうしたものか』と考えながら、仕方なく居間に戻る。冷かしに、ポンコツもといモモの答案を覗きこんでみる。


「おいおい、間違いだらけじゃないか。言っただろう、『mezzo-』(メゾなんとか)とか『-etto』(なんとかエット)とか『-ino』(なんとかイーノ)は、全部『やや』とか『少し』って意味だって。『フォルテ』が『強く』だったら『メゾフォルテ』は『やや強く』。『アレグロ』は『速く』なんだから、『アレグレット』は『ちょっと速く』、つまり『アレグロ』よりは遅い勘定になるじゃないか。遅い順に並べる問題、四番目と五番目が入れ替わってる」


返事なのかただの鼻息なのか判らない音を立て、モモはおもむろに消しゴムを掴む。すると、ふとその手の動きが止まり、やる気のない口調でこう言った。


「ねえ。『アンダンテ』って『歩くようなスピードで』だよね。『アンダンティーノ』ってのもあるよね。『やや歩くようなスピードで』って、日本語としておかしくなくない?」


おかしいのはお前の日本語だ。


「おかしくなくなくは無くもない(エエイ、ややっこしい)。なんだ、そんな問題まであるのか?」


「うん、ほら」


密かにうっすらとマニキュアが塗られたモモの指先には、確かに『アンダンテ』と『アンダンティーノ』の相互関係を問う設問があった。


「けしからんな」


「え?」


「この問題が、だよ。『アンダンティーノ』って言うのは、一般的には『アンダンテ』よりやや速くと解釈されているが、厳密なものじゃない。曲のニュアンスや形式によっては、一般的な『アンダンテ』の速度――一分間に八十拍程度より遅くすべき時がある。他にも『モデラート』だって『中庸な』と訳されるが、その速度範囲は『アレグレット』と結構被るんだ。だけど、『やや速く』と『中庸な』は違うし、曲によって『モデラート』の方がメトロノーム上では速くなってしまう場合だってある。速度記号はメートル法みたいな単位じゃない。単独で決して成り立つものではなく、曲があって初めて産まれる概念で――」


いよいよ音楽学の深淵な講義に入ろうと言うときに、不意に邪魔が入った。


「つまりケースバイケースと言うことですよ。モモちゃん、この場合は『アンダンティーノ』は『アンダンテ』よりやや速い、が正解なんですよ。先生、いつも仰っているじゃないですか、『目的にあった最適解を模索するのが大切だ』って――飽くまで今回の目標は、モモちゃんが無事検定に合格することなんですから、不必要に混乱させるのは、ねえ」


黒江さんだった。奥の部屋へ、五線譜を印刷しに行っていたらしい。


私は憤然と言った。


「いや、だからって本質を捻じ曲げて良い道理にはならないだろう。目的と言ったって、こんな検定のどこに意味がある? 利権絡みのあくどい商売で、モモの将来には何の役にも立たん――」


「生活のためです。その意味では、私達も利権を食い物にしているんですから、還元するのは当然かと――」


「それ以前に、これしきの豆知識で大混乱を来たすヤツの脳の方にこそ問題が――」


「ミノルさん!」


「ハイ!」


鋭い語調で窘める黒江さん。私は思わず上擦った声を上げた。


肯定では無く、『ごめんなさい』と『もうしません』を含んだ反射的な叫び。


恐らく、私は本質的に女性恐怖症なのだ。絶対に、万が一にも結婚した場合、立派にカミさんの尻に敷かれる自信がある。でもそれもまた、世の既婚男性の有様を見ていると、賢い生き方なのかもしれない。茶の間の座布団のように、普段はドッカリと重い尻を乗せ、掃除の時は隅へ追いやられる。そんな、座布団のような、座布団としての本分を全うする人生――まあ、有りなのかな、とも思う。


まあ結婚する予定はおろか、相手の陰すらも無いわけだけれど。


それにしても黒江さん、僅か一年でよくぞここまで私の扱いを心得なさった。


これが世の母親だったら、鬼の首を取ったかのように騒ぎ立てる大失言なのだが、ヒネくれたいお年頃のモモには『どうでもいいこと』のようだった。無関心に、まるで独り言のように呟いた。


「『将来』、かぁ――」


私は、モモの口から両親への不満と、学校のつまらなさと、なんだか良く判らないファッションと男性アイドル以外の真面目な話が飛び出たことに、驚きを隠し得なかった。よりにもよって、『将来』って。


「いいじゃないか。おまえンちの場合、ママさんパパさんがオーダーメイドで将来設計までやってくれるんだから。寸法測って、態の良い、適度な稼ぎの亭主を見繕ってくれるさ」


その時、私はなにかギクリと来る視線を感じて竦み上がった。振り向くと、おい黒江さん、なんて目で仮にも雇い主を見てやがる――ハイ、ごめんなさい、もう言いません。


けれど意外なことにモモは、その言葉には反応した。相変わらず気だるげな銚子で、


「ンー、なんか違う気がするんだよねー――だからって、なんになりたいとか、何々をやってみたいとか、ある訳でもないんだけど」


「思春期特有のモヤモヤだな。悩め悩め。漠然とでも色々可能性があると思えるのは今の内だけだぞ。社会に出た大人達を見てみろ、アレをやらなかったからあの道は諦めた、アレでしくじったからあの門は閉ざされた――そんな消去法で生きて、過去の可能性に思いを馳せている連中が殆どだ」


モモは眼を丸くして言った。


「ヘー、意外。先生も、そうやって生きてんだ」


「俺が?」


私が微かに笑い声を上げながら反論しようとすると、なぜか黒江さんが引き継いだ。


「先生は違いますよ。先生は自由人です。先生は社会に『出なかった』人ですから」


流石は黒江さん。


私が言いたかったことを即座に代弁してくれる。ただ、その言い方、色々マズい解釈も出来ちゃいそうなのは、気の所為だろうか。


でもそこは黒江さん。


きちんと正しい一言を添える、気配りの達人。


「先生はね、ご自分の居場所――社会は、ご自身の手で創り上げてしまう人なんですよ」


キョトンとしているモモを尻目に、私はボケーッと持っていたスイカを机の上に置き、告げ口癖のあるチビ達の前ではついぞ喫えないタバコを吸いつけた。


「まあな――ほら、俺はこんな性格だし、まず海外経験が長すぎるだろ? 日本の、十把一絡げで新卒をブロイラーのように流す大企業の体質や、出る杭は叩き潰そうとする価値観の前だと、いかんせんユニーク過ぎて受け入れられないし、また自分自身窮屈さも感じるんだ。別に俺は一代で財を成して、立派なマイホーム建てて、海外旅行にジャンジャン金を使って、子供にも最上級の教育と贅沢をさせようだなんて気は毛ほどにもないしね。日々を平和に、小さな社会で和気藹々と過ごせりゃ、それが何にも代えがたい贅沢だと思うわけよ。だったら、何でもやりながら生活費を稼ぎつつ、自分の社会を創って篭っちまうほうが、よっぽど性に合うって判ってね。誰かに責任を丸投げできる代わりに迎合しなきゃならない既成の社会より、それこそ自己責任のオーダーメイドの社会の方が、生きる実感も沸くってモンだ」


「フウン――そんなこと、アタシぐらいの年から考えてたわけ?」


その質問に対し、黒江さんがクスクス笑いを漏らした。


「その点、先生は筋金入りですよ。なにせ、小学生の時からの夢が一貫して――」


「年金受給者。まあ高校に上がった頃にはもうちょっと現実的になって、家賃収入と株の配当金を当てにするようになったがね」


モモは、呆れも隠さず眼を白黒させて、


「うわ……スケールちっさ」


「どうとでも好きに言いやがれ」


確かに、夢と希望に満ち溢れた青春性とは、対極の位置にある野望だとは思う。


ただ、自分の中での拘りというか、一つだけどうしても生理的に受け入れがたかったのが、現代のどこから金が流れ込んでくるかもよく判らない、形の無い架空のフィールドに根差した商売だった。


例えば、IT産業は伸び盛りで、若くして一攫千金を望める無二の分野だとは思う。けれど、それは飽くまで電脳空間というバーチャル世界があって初めて成り立つもので、アナログ人間の私にはどうしても実感が沸かない。同様に人材派遣、コンサルタント、ディーラー――人の頭数と市場ばかりが大きくなったからこそ、存在する職業というのは幾らでもある。


かと言って、物作りに拘ったり、眼に見えるもの以外を取り扱う商売を一段劣る物と看做したりもしない。


今の日本には物が溢れ返っているし、建築なんかも建てては壊し、建てては壊しを繰り返して新築物件を売り捌いている。テレビは毎年のように新型が出て、より薄くなっただのより画素が増えただのと謳ってはいるが、どう見ても飽和状態にある。


私自身は、介護サービス等の肉体労働や、農業漁業酪農業等の一次産業の崇拝者である。ただ、何よりも大変そうだし、今まで積み重ねてきた経験を全部打っ棄ってまでそこに飛び込んで行く度胸は無かった。


要は、私は旧式で、怠け者で、それでいて人の役に立とう、世の中の為になろうという気概の一切無い――まあ謂わば『ゴミ』のような人間だった。


モモは、再度間違いだらけの答案用紙に眼を落としながら言った。


「でも、なんか納得。先生、うちのお母さんが言ってるような、立派なインテリの雰囲気あんまりないもん」


「意外に思ったり、納得したり、忙しいヤツだな――それよりも、おまえンとこの母さんが、そんな風に俺のことを思っていたって方がよっぽど意外だよ。そこまで、まあ、敬われた扱いを受けた覚えが無いからさ」


どちらかと言うと、ブリキのクズ入れのような扱いを受けているものだとばかり思っていた。


モモは私が言わんとしていることを察したのか、軽蔑的に鼻を鳴らした。


「当たり前じゃない。うちの――あのヒトが、大した理由も無く、娘の習い事の先生決めると思う? うち、そもそもこっからそんなに近くないし。『先生は海外で研鑽を積まれた音楽家で、四ヶ国語を喋られて、文化史と数学も学ばれたスゴい方なのよ』っていつも言ってるし」


確かに私の経歴は、一風変わっていて人目を惹くところがある。


海外歴十五年。小学校高学年以来、ずっと西ヨーロッパで暮らしてきた。


最初はイギリス、次にドイツ。ドイツで高校を終えた後は、オーディオマニアでヘタクソなピアノ愛好家だった父の影響か否か、私自身もクラシック音楽に興味を持つようになっており、偶々素晴らしい師匠に巡り合えた縁でフランスの音楽院に入学した。でも職業芸術家が一切いない我が家において、音楽一本で食って行くと豪語するのは至難の業で、当初はドイツの工業大学にも籍を置き、数学科と二足の草鞋を履くことにした(ダブルスクーリングが認められているヨーロッパならではの現象だ)。


まあ結局、数学と音楽を天秤に掛けた際、軍配が上がったのは音楽の方で、同時に私は並々ならぬ移動距離とドイツと言う国柄に辟易としていた為、フランスに居を移し、また一から大学生活をやり直すことを決めた次第である。そして、その時は入り易さよりも遣り甲斐を重視し――音楽学という文化史要素の強い学問を選んだ。そんな訳で、私の履歴書には横文字の学校名がズラーっと、『音楽』『数学』『文化史』という単語が並ぶようになったのだ。


日本で『平音楽教室』を開くにあたり、客寄せとしてそれらの経歴と、そこから派生する雑多なサービスを売りにしたのもまた事実なのだが――


いやはや、まさかそんな判り易く胡散臭いエサにガップリと食いつく親御さんがいるとは思わなかった。


私はどんよりとした視線を浮かべて言った。


「そりゃあご親切にどうも……まあその幻想も粉々に打ち砕かれただろうけれどね」


「いや、そうでもないみたい。なんだかんだで、先生はあのヒトの事、相手にするじゃない。そうすると、『ああ、あの先生は親切だ。ちゃんと話を聞いてくれる』って勝手に満足するみたい」


実の娘の辛辣な意見に、私と黒江さんは思わず苦笑した。想像以上に判り易い。


まあ私の話はさておき。


「で? モモちゃんは、なにか将来の夢とか、やりたいなあって思うことはあるのかしら?」


と、黒江さん。


モモは暫く宙を見つめ、器用に片手でシャーペンを回しながら考えていた。やがて、ポツリと、雨垂れのように呟いた。


「海外、かなあ――」


「海外ィ?」


思わず素っ頓狂な声を上げる私。


第一それ、夢でもやりたいことでも無いし。日本国外全域だし。


「海外って、おまえ――なにをしに、なんの目的の為に行くんだ?」


「そりゃあその――留学、じゃないの? なんの勉強かはまだ決めてないけど」


呆れ果てた私は、ざらついた耳障りな声で叫んだ。


「なんだアレか? おまえは、なんの目的の無いまま海外出て、暫くそっちに居たら人生の活路が見いだせるとでも思っているクチか? 一昔前に流行った、『自分探しの旅』ってヤツか? インドに行って、ガンジス川の飲料水も下水道もごった混ぜの空気を吸いこんだら、ガンジーもビックリの悟りが開けるとでも?」


「いや、そこまでは思ってないけどさぁ――けど、先生は留学の相談や斡旋もやってるんでしょ?」


「やってるが、うちは高いぞ」


私はキッと睨みを利かせて言った。


「高校生の小娘が、バイトをして稼いだなけなしの日銭だったら、何年あっても足りないほどにな」


「うちの学校、まずバイト禁止だし……それに、そんな時間ないし」


モモはどんよりとした口調で返す。


「でも業界最安値なんでしょ? サイトで見た」


「ありゃ釣る為のエサだ。うちは個人経営だし、業務に融通が利く。だから基本料金を安くして、それで格安感を出してるんだ。アレはサイドビジネスに過ぎんしな。だから、私の一存でオプションやら違約金やらで幾らでも水増し出来るんだよ。プラン通りの手配だったら、楽だし速く行くんだが、講習会ひとつとっても不測の事態ってのは山ほど起きるモンでね。やれ空港に送迎の車が来ないだの、やれ延長を頼んだら通訳のヤツに追加料金を請求されただの。一番酷かったのは、学生寮で便所が共用だから他の場所探せって言ってきたアホンダラだな。二十四時間常駐してるコンシェルジュはいるかとか(こう言ったんだぞ――管理人じゃなく、コンシェルジュ!)、区画別に男女は分かれているかとか――一年の長期留学に出発する十日前に言ってきたんだぞ……えーと、なんだっけ」


あの忌まわしい想い出に怒りを爆発させるのに忙しく、私は当初の論点を見失いかけていた。


「あ、そうだ。だから、あの時は基本料金の軽く四倍は吹っ掛けてやったんだ――時差の関係で、こっちもほぼ毎晩徹夜で国際電話かけてたしね。そんな訳だから、気軽にできる買い物じゃないんだよ、うちのは」


モモは、大人しく私の暴言のオンパレードに聞き入っていたが、それが終わるや否や、関心なさげを装った見え透いた演技をして言った。


「フウン――そんな阿漕なことしてたんだ。それ、他人に言っていい?」


それだけはやめてください、ごめんなさい。


私がそう懇願すると、モモは『どうしよっかなあ』とでも言いたげな鼻持ちならない素振りを見せていたが、そこに黒江さんが割って入った。


「先生の如何わしい見識はどうであれ――たしかに、遊び感覚で留学を決めるのは余り良くないのは事実ですよ、モモちゃん。もう少し、漠然とでも良いのだけれど、せめて方向性だけでも見出さないと。それとも、日本に――家族と居たくない理由でもあるのかしら?」


「そりゃ当り前だろう、あの母親――ハイ、ごめんなさい」


黒江さんに、穏やかながらも確固たる制止の一瞥を投げ掛けられて、口を噤む私。


モモは、溜息を――その年頃の少女には似つかわしくない、倦み疲れた、ある種老成した溜息を吐いた。


「そうかも。あたしは単に――家から、この窮屈な日本から逃げ出したいのかも」


そう言って、ピンクのイヤフォンを耳に掛け、再び答案の前に突っ伏す。


そのモモの背中は、余りにも小さく――けれど、意外なことに――未来へ羽ばたくことを夢見る生命力は、強くたぎっているように感じた。


高校生は謂わばサナギの時期である。


その成長期の大人の殻の中で、まだ幼虫のフワフワとした部分が残っている。変化をしている最中なだけに不器用で、身動きが取れない。


はて、自分があれぐらいの時、どんな感じだったかな――



思い返してみると、それはそれは反骨精神に満ち溢れたガキだった。


音楽にうつつを抜かし、親も神も仏も敵と見做し、自分を貫こうとした熱い時代。




「まあ、その内治まるだろ」


そんなケセラセラな結論に達し、私はようやくスイカを座卓の上から持ち上げた。



腰が、軽くボキッと言った。



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