DL.00.01.0013 くぎゅうインパクト 

 DL.00.01.0008 B.100.04.10.00:00


「だあー死ぬかと思ったー!」

 召還したと同時に大きく息をし大声で叫ぶ航、反射的にビクっと強ばるクレープ。

「あいつらー…!あ、いつものどうぞ」

 賢者少女はすぅっと一呼吸おいてから持っていたメモ帳を手に取り。まるでテストの答え合わせをするかのように質問する。

「さて…私は初めてだけど、一応聞いておく。あなたは今何週目?」

 航はクレープの強い意志を何度も観たのでその想いに答えようと思った、そして思う。

 お前が強い意志で生きたいと願って。覚悟をもってその行動を毎回するのなら、俺も強い意志でお前に答えよう。

「初めましてクレープ、今は[DL.00.01.0008]だ。ちなみに俺の特技は神経衰弱だ。その意味が後で解ってくるだろう、その時に恐れおののくが良い。フハハハハハ!」

 大賢者クレープは前もって用意しておいたメモ帳通りの言葉を発する。

「大丈夫? おっぱい揉む?」

 クレープは自分の胸を揉み揉みして恥じらいながら目をそらす。柔らかそうなおっぱいを凝視した。

「…」

「…」

 お互い変化球同士の再会となった。

「一応聞いていいか?」

「え…うん…」

「何故このタイミングでおっぱい揉み揉み?」

「メモ帳にはそろそろループしすぎて気が狂ってくるだろうからコミカルさを入れて和ませようと…」

 和み空間とはまた遠い空間が完成してしまった。

「や!やっぱ今の無し!忘れて!」

「いやだから俺記憶力いいからお前の言葉も仕草も声のトーンまで鮮明に記憶」

「イヤーァアアアアアアそれ以上言わないでえぇえええええええ!」

「ふふふ…人は黒歴史を乗り越えて大人になっていくのだよ、強く生きろよ少女よ」

「もういい!何も言うな!」

 その間に航は勉強机の横にあった登山用ブーツを履き、床に転がってたチョークをポケットの中に入れる。

「さてと、じゃあ行くぞ」

 そう言って航はそそくさと鏡の中へ入っていった。

「あ、ちょっと置いてかないでー!」

 手を前に出しながら、クレープも後に続く。


 DL.00.01.0008 B.100.04.10.00:35


 クレープは恐る恐る質問したくない事を確認のため聞く。

「あのう…これは全部で何個あるんですか?」

「あん?鍵100個だ!がははははは!」

 鍵束にはそれぞれ番号が振られている、1から100までランダムに鍵束に一つになってくくりつけられている。

「この中にあの小熊の鍵があるんですか?」

「そうだ、全部で3つだ」

「ちなみにその鍵の番号は?」

「流石にそれは教えられねえな!がははははははは!」

 頭の回転が速すぎてクレープが速攻で逃げようとしているその時、航はクレープを引き留める。

「待てクレープ」

「へ?」

「…」

 航は少し考えたあとクレープに確認するように言う。

「クレープ、俺も流石にループする事にも慣れてきた。ループしたくないから『今』だけを全力で生きてきた。だがこれからは違う、だから実験したい」

「うん…うん?」

 今回は残り1手で当たりの鍵を当てなきゃジ・エンド。何が関わっているか解らないからそれ以外の工程はほぼ全て同じ動作で来た。航は右手に鍵束、左手にD時計を握りしめ数字を凝視する。

「ちょっと無茶するぜ…」

「何をするの?」

「説明してる暇はない」

 すると航は固まった。そしてぼそぼそと、淡々と謎の数字を読み上げる。

「8、9、10、11…」

 クレープにも航が今何をしているのか・・・何かとんでもないことをやっていることがジワリジワリと理解できてゾワッっと鳥肌が立つ。

「あ…あんた…まさか…」

「12、13!」

 バアっと13で航は3つの鍵をつかみ取る、数字にして1、34、87の鍵。ちょびヒゲおやじも一発で正解の鍵を手にした事に対して驚く。

「こ…こりゃあ…あ、あんた超能力者か!?」

 そして航はゼイゼイっとマラソンかランニングをしたあとの清々しい汗とともに決めゼリフっぽく言う。

「超能力じゃない、努力だ!」

 ちょびヒゲおやじの酔いが吹っ飛んでしまうほど驚いているが。

 頭の回転が速すぎるクレープは某小学生名探偵バリにピロリン!っと電流が走る。

 ちなみに航もクレープもIQ150である。またIQの平均は一般で100、日本の東大生で120、IQ150以上と言えば天才IQ軍団の非営利組織メンサ(mensa)に入る資格が余裕であります。ちなみにちなみに某小学生名探偵はIQ365。

【1を教えれば10知ることができる】のが真の天才なら、【1を教えれば3知ることができる】のがこの2人。航とクレープ二人コンビで会話を始めると【1を教えれば6知ることができる】のが今の状態。

 クレープの紅い心の目と航の蒼い心の目が炸裂する。

「あ…あんた、ここにくるまで一字一句同じ動作で来たわけよね…」

「ん?そうだが?」

「ってことは…私たちの最初の出会いの場面も・・・」

「おお、5回おっぱい揉み揉みするところを観てから来たぜ。流石にボッキしちまったよ」

「…ッ!こんのー!」

 恥ずかしさのあまりクレープの怒り爆発の右拳が振り上がる。航は180度方向転換して全速力で逃げる、っと見せかけて全力で白い小熊の檻の方へと向かう。

「あ…!」

 ちょびヒゲおやじがまずいと思って手を挙げて静止して欲しそうに追おうとするが…。

「うりゃー!」

 クレープの怒り爆発の右拳がちょびヒゲおじさんの顔面を襲う。全く関係ない方向への暴力に理不尽さを覚えるおじさんだが時間が惜しい。檻の前に来て1番の鍵で檻を開ける。っとそこで「いたぞー」っと騎竜と兵隊が現れる。クレープがその姿を目視で確認したので航に伝える。

「急いで!」

 右手に87番、左手に34番の鉄球を外した。小熊は目をキラキラと輝かせながら言う。

「ありがとう!蒼いパジャマの王子様くぎゅう!」

「さァ闇の力は解き放たれた!今こそ我が軍師の力をみせるとき!存分に暴れていいぞ!」

「合点くぎゅう!」

 白い小熊の獣人エリは臨戦態勢に入る。毛並みを立たせ、空気がゴゴゴゴっと揺れているような錯覚さえ感じた。

 兵隊達が拳銃を構える。瞬間、子熊エリの姿が消える。次に地面が爆発したように盛り上がったがこれはエリが力強く足を踏み込んだだけだ。

 残像が左右に移動しながら兵隊の方へ接近する、兵隊が拳銃を発砲するが狙いが定まらず当たらない。高速移動をしている、その速度は時速40キロ。人間の軽いジョギングで時速8キロなのでもはや人間の動きではない。

 だが、拳銃は射程範囲が50mある状態で時速1000キロ近くある、狙いが定まらないとはいえ捕らえられない速度ではない。太ももにかすり傷を負ったエリは「本気出すくぎゅ!」っと言って更に時速400キロまで加速する。時速400キロと言ったら新幹線レベルである。

 これでも拳銃の速度には劣るが扱っている兵隊の目ではエリを捕らえる事は難しい、加えて変則的に左右に体を動かすことで足りない部分を補っている。反発か撃っても当たらない。

 相手の懐まで近づいたエリは腕を1回転させたあと「クマさんパンチくぎゅう!」っと言って兵隊一人の装甲を粉々に砕く。目にも留まらぬ速さで攻撃されたのでエリが攻撃したと気付いたのはやられた兵隊が吹き飛んだあとに残像としてエリがそこに居るのだと感覚のみでしか確認することは出来なかった。そのあとに目が追いつく。

「ぐおォ!」

「ぎょえあ!」

「だはあ!」

 兵隊が吹き飛び空中から地面に落ちる間にふんふんふんと楽しそうに踊っていた、何故踊っていたのかは本人にしかわからない。恐らく踊りたかったからだろう。残りの兵隊が踊っている所をようやく見つけて銃を構えて撃ったあと。当たったっと思ったら残像のように消えてしまった。

「くぎゅう!」 

「ぴょげあ!」

 ドゴンと強烈な音がした後、地面に人間がめり込んでいた。兵隊のほうは全滅、残りは騎竜のみとなった。ギャオオオっという方向が聞こえてエリが騎竜の方を振り向く、キリっと真顔になった後ににこりと微笑みカンフーの達人のような構え方をする。

 騎竜がダイナマイトのような火炎放射を発射したあと、エリは腕を3回転させたあと「クマさんパンチくぎゅう!」っと言って火炎放射を真っ向から相殺させる。

 航はその光景をみて核心する。

「フフフなるほど、わかったぞ。なぜこんなファンタジー世界で俺の好きなアクションが無かったのか」

「頭脳特化のプロが二人いて戦闘能力底辺じゃ戦闘にすらならなかったわけね」

 航が言おうと思っていた答えをクレープが先に言ってしまった。航は「おい先に言うなよ」っと言いたそうな顔でクレープの方を見る。

「ま…まぁ今のでこれくらいは誰にでもわかるな」

「そうね」

 ギャオオ!っと騎竜はが叫んだあと、エリが地面を割りながら蹴りジャンプする。真っ直ぐ小細工せず一直線に飛び腕を10回転させたあと「くぎゅうインパクト!くぎゅう!」っと言って騎竜の胴体目がけて轟音を響かせる。

 騎竜もひとたまりも無かったが、その衝撃波で後ろにあった石の家もひとたまりもなく崩壊した。

 航もクレープも誇らしげにその答えを同時に口にする。


「「彼女は、戦闘特化のプロ」」


 戦闘のあとには二人に対して満面の笑顔で答えるエリだけが立っていた。

 

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デイライフ ゆめみじ18 @hanadanngo

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