DL.00.01.0007 奴隷商人と鍵
DL.00.01.0007 B.100.04.10.00:35
小屋の前でクレープがコンコンとドアをノックする。そのあと航が「すみませーん」っと声をかける、今その連係プレイが居るのかとも思うがドアは開かれた。すると今はオフですと言わんばかりのちょびヒゲおじさんが酔っぱらいながら出てきた。
「何だよこんな夜中に・・・うーヒック!」
とりあえず情報がないので情報収集をするため話をすることにする。急いでるのは山々だが、この際仕方ない。クレープはなるべく平静を装いながら言葉を発する。
「あなたが奴隷商人さんですか?」
「あの白い小熊のくぎゅうって言ってる子が欲しい、売ってくれないか?」
「!?」
クレープは航の方を振り向く、顔を赤らめて売春でもする気か!っとツッコミを入れたくなったがなるほど・・・っと思ってしまった。下手にあの子を何とか解放して下さいというよりよほど賢い。お金で解決出来るのならその方が速いし、相手は商人。お客様なら話は聞きやすいだろう。
「あーっらうーヒック!なんだお客さんか。あいつは100万ダイだぜ」
「ダイ?この世界の通貨か」
航は日本円にしてどれくらいなのか見当がつかない。
「熊の獣人族は巨人族と比べれはそれほどではないけど力仕事に便利だから馬車と同等の値段がするわね、ちなみに私の所持金は5万ダイ。全然足りないわね」
「おお、流石大賢者。なるほど車と同じくらいの値段か・・・ってことはまずこの力で宝くじでも買って・・・」
「残念でした、今は真夜中の0時35分、宝くじ屋さんだって開いてないわよ」
「そうだった・・・」
ちょびヒゲ奴隷商人は別に毛嫌いするわけでもなく酔っぱらいながらでも普通に接する。そこは商人、お客さんには優しい。お客さんには。
「うーヒック!どうします?また改めて来ます?お客人さんよ」
「いーや、こうなったら・・・」
航が何をしようとしているか解ったクレープは話の間に割り込む。当然航がやろうとすることは、強行突破して鍵を奪って牢屋を開けて小熊を助けて逃げるっというものだろう。わかりやすすぎたので別方向からクレープが攻める。
「あー!わたくし!鍵マニアでしてあの牢屋と鉄球の鍵はさぞかし高名な方が作った物なのだなと思いまして!是非ともその鍵の装飾を見せていただきたい物かと・・・!」
「ふ~ん・・・」
航とクレープを値踏みするかのように交互に見つめるちょびヒゲおじさん、お酒を飲んでるのもあってかそのあたりの判断がゆるくなった。
「ま、いっか。見せるだけならタダだし・・・」
「おー!」
「本当ですか!?」
「ただし、1分だけだぜ。俺だって速く寝たいんだ」
そう言って家の奥の方にちょびヒゲおじさんは入っていった。航とクレープは出入り口のドア前で待っている。小声で航とクレープは話す。
「あとは鍵を使って・・・」
「でも鍵が10っ個ぐらいあったらどうする?」
「そんときゃやり直す。もうあと1手で追いつかれるだろう、そろそろ死ぬ覚悟決めとけよ」
「うげ・・・嫌な宣告・・・」
そう言い終わったあとにちょびヒゲおじさんは二人の前に鍵束を持って現れる。
「ほれ、これが鍵だ」
「ありがとうちょびヒゲおじさん・・・いい!?」
その鍵束を渡されて驚く、10個鍵束ぐらいなら覚悟していた。しかしこれはそれ以上にある。クレープは恐る恐る質問したくない事を確認のため聞く。
「あのう・・・これは全部で何個あるんですか?」
「あん?鍵100個だ!がははははは!」
鍵束にはそれぞれ番号が振られている、1から100までランダムに鍵束に一つになってくくりつけられている。
「この中にあの小熊の鍵があるんですか?」
「そうだ、全部で3つだ」
「ちなみにその鍵の番号は?」
「流石にそれは教えられねえな!がははははははは!」
顔が青ざめる航、確率は100分の3。どう考えてもあと1手分じゃ間に合わない。
クレープは早々に諦めてコミカルに逃げ出す。
「あばよおっちゃーん!」
「逃げるのはや!?」
その時、「ギャオー!」っと騎竜が追いついた、航の方を凝視している。航がその騎竜に目を奪われていると。クレープが逃げた方向から銃声、兵隊達が拳銃片手にクレープめがけて発砲し終わり倒れたあとだった。クレープの倒れたあとから血が流れている、観たくもない物を観たあとデイライフを唱えようと思った矢先。左胸に激痛が走る、瞬間遅れて銃声。あいつだ、スナイパーだっと思ったがそんなことよりまず声を出さなければならない。だが出来ない、肺に穴が開き喉の血が逆流し呼吸困難になる。
書くもの・・・書くもの・・・!っと思ったが書くものが何もない。
血・・・血だ・・・!かすれ消えそうな意識の中、口から出た血でデイまで書き終わったあとにドン!っと銃声、右腕が丸々吹き飛ぶ。デイまで書いた赤い血は自分の吹き飛んだ手に上書きされ真っ赤になる。デイの文字は無くなってしまった。
やばいやばいマジでやばい!
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!
もはや視界が無くなり目の前が真っ暗になってしまった。何も見えない。
かろうじて左手が痙攣してるのと耳だけが聞こえていた。虫の息とはまさにこのことである。呼吸ができず激痛で失神してしまいそうな中。
航は最後の力を振り絞り左指を地面にコツコツコツと叩いた。
兵隊達が奴隷商人を殺害し終わったあと、雑談を始める。
「死んだか」
「痙攣してやがる、放っておいても死ぬだろう」
「我らサジタリウス、3本の矢に敵う通りは無し!」
一人が無線機を取り出す。
「任務完了、ボス。これより帰還する」
ははははははっと笑い声を聞いたあと。
航の意識は完全に飛び絶命する。
生気のある瞳は完全に無くなり瞳孔が開いたままだった。
左指の人差し指が浮いた状態で無気力に地面にコツンと当たる。
モールス信号。
最後の動作を終えデイライフが発動する。
ゴーン、っと除夜の鐘がなり時が静止し。時の狭間で豪華な時計が動き出す。
生命のない状態の中 航は心ない心を叫ぶ。
「タダ死にはしねえ、待ってろよサジタリウス!」
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