Gの王子様

@Kus

Gの王子様

   「ハァー。今日も婚活うまくいかなかったなあ」

 もうどんな男でもいいから結婚したい。高年収のイケメンは諦めるから――

 こんな私でも、二十代の時はそれなりにもてた。時間は過ぎ、気がついた時にはもう三十代後半。その後彼氏を見つけたと思ったら騙されてお金が取られたことが数回。もう駄目かと思いながらも奇跡を信じ婚活を続けたまま今日まで至る。

台所に行き夕ご飯でも作ろうかと考えたところ、ゴキブリを見つけた。直ぐに台所においてあるゴキブリスプレーを取り噴射しようと思った瞬間、何処からかイケメンボイスで私に話しかけた。

「おい、俺を見ろ」

そういわれて辺りを見渡しながらゴキブリに標準を向けるとまた聞こえた。

「俺だよ俺。今目の前に居るよ。」

ハア?と思いながら前を見てゴキブリを観察するとゴキブリの口が人のように動いて私に話しかけて来た。

「お前は俺を見えないのか?」

「私の目の前に居るゴキブリかしら?」

そう返すとすぐに答えた。

「ああ、お前の目の前に居るゴキブリだよ。」

ゴキブリが話せることにびっくりしながら観察しているとまた話しかけて来た。

「私は王子だ。だが悪い魔女に騙されてゴキブリに変身されて此処に転移されたのだ。もし人間の女が私をキスすると私は元に戻る。信じられないかもしれないが、証拠は...まあ、私を観察すると多分だが人間くさいことが分かると思うぞ。」

相違晴れて半信半疑視ながらとりあえず信じることにした。

「今は殺さないけど今人間っぽい事してみてよ。」

「しょうがないなあ」

そう言ってなんと二本立ちした。

「何...だと」

想像するだけでもおぞましいGがなんと人間みたいに二本立ちしてSAN値がゴリゴリと削られる。それが実際に目の前でやると私の正気度がほぼゼロになった。こんなキモい物を見て正気でいられる人は居ないだろう。イケボ、しかも二本立ちが出来る事で私は半ばやけぐそ気味でそのゴキブリにキスした。

その瞬間、何処からか白い霧が現れてごきぶりをおおった。私が一歩下がると、私と比べるとちょっと高い影が霧の中に現れた。そのまま霧が晴れると、私は叫んだ。

「キャアアアアアアアアアアアア」

そのまま私の手に持っているゴキブリスプレーをそのおぞましい等身大のGに向かって発射した。スプレーが空になるまで押した後恐る恐るソレを見るとぴくぴくしながら私に話しかけた。

「私の姫よ、なぜ私を裏切る。私は王子だ、それも世界が恐怖するゴキブリ帝国の。なぜ......」

おぞましいヤツが話してる途中で私は新たに用意したゴキブリスプレーをまたそいつに噴射した。

そいつが死んだ後、私はつぶやいた。

「私のファーストキスがゴキブリなんて...」

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