ノウハウ編 第1話 性の伝授
今回この話を発表しようと思ったのは、人が見ていないと長年に渡る自分の歴史をまとめられないだろうと思ったからだが、もうひとつ大きな理由がある。
それは、日本の社会には世代間の「性の伝授」が欠けているのではないか、という問題意識だ。
自分の経験をできる範囲で多くの人に共有することで、より豊かな性の経験を得られる人が増えるといいな、と思ったのだ。
性というものは、必然的にプライベートな要素を帯びる。
まず恋愛の重要な要素であるセックスは人に見せるものではないし、そもそも恋愛という営み自体が二人の人間がお互いの想いを紡いでいくものなので、そこに「厳然たる客観性」は存在しない。
恋愛が盛り上がっているときは同じ想いを共有している気になっているが、恋愛の関係性とはお互いの想いや行為がより糸として組み合わさっている一本の縄のようなもので、全く同じものを共有しているわけではない。別れの際にその想いの違いを痛感したりもする。
恋愛では、確かなものよりも不確かなもののほうが遥かに多いのだ。
だから、第三者が見てもわからないことは多いし、理解されないことが秘密性にもつながっている。
他人からはどういう風にカップルの関係性が構築されているのか分からないため、誤解を防ぐためにも不必要に情報を公開しないほうが処世術としては正しいのだ。
例えば独身男女でも、職場恋愛なら公私混同されていると誤解されるのを防ぐために秘密にしたほうが賢明だし、またなかなか人には言えない浮気や不倫などで性について多くのことを学ぶこともある。
性について、「
また、日本では性が不当に蔑視され、性の本質である悦びや快楽をまるで無視した「セーフセックス信仰」が根強い。
快楽を求めるセックスは「悪」で、生殖を目的とするセックスは「善」というわけだ。
この考え方の背景には以前書いた機能不全家族をベースとした社会の仕組みがあり、現在の日本人はそれを当然だと思っているが、歴史的に見ればこの性の捉え方は極めて貧相なものだ。
例えばヨーロッパで言うと、生殖しか目的としない性の捉え方という意味では、19世紀のヴィクトリア朝時代のイギリス並の遅れっぷりだ。
性がもたらす悦びや快楽を
また、そうした汚れた性を好まない人は「自分は異性やセックスに興味が無いのだ」と誤解して自分の殻に引きこもり、結果的に非婚化や少子高齢化が加速してしまうのだ。
性エネルギーをもてあました多くの女性とセックスをする中で、口々に「こんなセックス初めて」と言うのを聞き、また初めて快感を感じられるようになってイクのを見て、「なぜ日本はこんな社会になってしまったのだろう」という疑問を持つようになっていた。
性の歴史を紐解いてみると、日本の性文化は明治以前ぐらいまではおおらかなもので、やはり近代化や高度経済成長の過程で性を
(父親は故郷の農村で年上の女性に筆おろしをしてもらったそうだ。性がビジネス化される前は、夜這いやこうした風習でカバーしていたのだろう。)
自分はたまたま年上の女性が大好きで、また性に旺盛だったこともあって、ブートキャンプの鬼軍曹(第2話参照)を含め、多くの女性から性について経験を通じてたくさんのことを教えてもらえたが、日本は社会として、世代を通じた性の技術や考え方の伝達が上手くいっていないのだろうと思う。
恋愛漫画やドラマでは同世代と付き合うことが当たり前とされていて(もちろんそのこと自体は悪いことではないが)、性の技術や考え方として触れるものがお粗末な性教育とネットのポルノぐらいだということになると、マトモな性の技術や捉え方を学べるわけがない。
ただ、女の子の場合は年上の男性と付き合うのはさして珍しくもないので、いい相手に出会えれば性について多くを学ぶことができるが(年下好きの男というのはロクなものではないことが多いという問題はある)、日本人男性の場合は年上好きはあまり多くはない。
つまり、男性から女性への世代間の性の伝授は起こりやすいが、女性から男性へはなかなか起こらないという構図になっているのだ。
これが日本人男性の幼稚化とセックスのヘタクソさを加速させ、男女間での性のリテラシーの格差を増大させているのだろう。
女性からこっそりと「あまりにも彼氏や夫の性に関する意識や技術がお粗末なのでなんとかして欲しい」と相談を受けることは本当に多い。
ただ、性の伝授は異性間のみで起こることではない。同性間での性の伝授、つまり「異性とはこう付き合うべし」という経験則なども極めて重要だ。
自分にも同性で性の伝授をしてくれた人がいるが、実はその人の顔すら知らない。
その人とは、性のブートキャンプの鬼軍曹のセックスフレンドだ。
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