第4話 長い蜜月
高校の時の初恋の相手とは1年続いたが、それ以降の子とは短い付き合いだった。
一回り上の作家とも、男女の関係にあったのは半年間ぐらいだったのではないかと記憶している。
看護師の彼女は、自分が初めて長く付き合った子だった。相手にとっても僕が初めて長く付き合う異性で、二人とも手探りで異性関係を模索した。
付き合い始めは大学生だったので、当然のように、また
本当にセックスばかりしていて、一日何回できるか(最高は7回だった)、連続で何時間繋がっていられるか(最長は24時間だった)、外でセックスしてみよう(人に言えないようなところでもやっていた)と、意味のわからない挑戦を二人でやって遊んでいた。
お互いのツボがわかっていくのも、楽しい作業だった。
そんなある日、彼女が初めてイッた。
女の子がイクのを初めて見たので、すごく感慨深かったのを覚えている。彼女は正上位を好んだが、イキやすいのは寝バックだった。
男は、特に若い男は、女の子がイクようになると調子に乗るものだ。
イカせることを目的にセックスをしていると、彼女が悲しい顔をしたので、反省した。
彼女は、いつも僕の体力が尽きそうになる限界ギリギリでイッた。
それを繰り返すなかで、当時読んでいた生物学の本で「子を産むメスはオスの能力や体力を試す」という話を思い出した。
女性のオーガズムとはテスト合格の証拠なのだ、と思った。
彼女はオーガズムを覚えてしばらくすると、中出しをさせてくれるようになった。
付き合い始めは彼女の家に入り浸っていたが、彼女の家には風呂がなく、シャワーのある僕のワンルームに住むようになった。
僕の部屋の真上は大家さんの寝室で、いつも僕らが狭い部屋でセックスばかりして大騒ぎしていたからかどうか、同棲していた3年ほどの間に、大家さんは連続して3人の子を持った。
貧乏な大学生と新米看護師の初めての同棲生活はおままごとのようなものだったが、とても幸せな生活を送ることができた。
恋愛には周期というか、賞味期限がある。3ヶ月、6ヶ月、1年、3年。
これらの節目で、男女は生物のペアとして、次のフェーズに進むかどうかを考える。
彼女とは3年続いた。カップルとしては相性が良かったのだろう。
ただ、付き合い始めの頃は大学生だった自分も、付き合って3年経ち大学院生になっていた。
彼女が結婚を意識していたのは分かっていたが、当時はちょうど就職氷河期の最もひどい時代で社会の先行きは暗く、結婚や子供のことは考えられなかった。
また、自分は研究者になるつもりだったので、修士に入ったばかりの自分には研究で食えるようになるまでの見込みは全く立っていない状況だった。
付き合って3年を過ぎる頃、彼女が不機嫌な時期が続き、ある日、彼女は些細な事で取り乱した。こちらも感情的になって、「少し離れよう」と言った。
しかし、いったん距離を置くと、彼女がとても遠い存在に感じられ、そのまま別れることになってしまった。
自分はまだ子供のままだったのだろう。
彼女とよく買い物に行っていた、老夫婦のやっていた美味しい鶏肉屋さんはしばらくして潰れてしまった。
彼女が住んでいた木造の古い家も、すぐに取り壊されて新しい小綺麗なマンションになってしまった。
彼女と最後に喧嘩して別れた川沿いの道路だけが、今も面影を残している。
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