第3話 最初のモテ期

一回り上の女性とのただれた日々は衝撃的な幕切れとなったが、当時は何しろタフだった。



若い男が持つ数少ない利点は、リビドー性的原動力が生み出す勢いと、失うものが何もないという点だ。


付き合っていた女性を他の男に寝取られたショックは大きかったものの、すぐに気持ちを立て直すことができた。



自分としてはちゃんと相手と付き合ったつもりだったが、やはり20代と30代の人生経験の違いは大きい。


対等な恋愛ではなかった、と認識できたのが立ち直りの早さにつながったように思う。



そして、その点を反省して、次は人生経験の近い少し歳上の女性を狙ってみようと考えた。


90年代後半の空虚で怠惰な雰囲気の中、よくテクノやハウスを聴いていて、クラブに通っていた。そこで仲良くなったお姉さん達と寝るようになった。


女の子と踊ったり飲んだりして、クラブを適当に退けてホテルに直行する、というパターン。20代で数を稼いだのはこの時期だ。


とにかく、新しく女性の個性に触れること、それによって新しい世界が開けるのが楽しかった。



同性の付き合いでは、同じ世界の人と繋がることが多い。男同士、お互いの世界観を尊重するところもある。


それはそれで楽しいのだけど、異性の場合は欲望とエゴによってお互いの世界に踏み込むところがあって、退屈な大学や世の中の雰囲気と比べて圧倒的な刺激があった。



しかし、相手の世界を知れば知るほど、相手を好きになればなるほど、より深く付き合いたいと思うようになるのが自然な流れだ。


考えてみれば当たり前のことだが、深夜のクラブに通う女の子は寂しい子が多い。肌を重ねて寂しさを埋められればいい、という人達だ。


よく一緒に寝る子はいたものの、深く付き合うという感じになる子はいなかった。



そこで、また出会い系サイトに立ち戻って、今度は歳が離れすぎておらず、また深く付き合える子を探そうと思った。


そして出会ったのが、1つ歳上の看護師だった(当時はまだ「看護婦」という言葉が使われていたが)。



前回書いたように、当時の出会い系サイトには地雷強度の人格障害が多かったが、男性が少ない職場である看護師は出会いを外に求めるため、マトモな子が多かった。


また、看護師は経済的にも精神的にも自立していて、さらに普段の職務で生と死に接しているためか、ナチュラルにエロい子が多かった。


あとこれは人によるが、やはり人の世話をする仕事なので、優しい子が多い。



その後も看護系の子とは縁があることが多かったが、その子とは3年付き合うことになった。


今振り返って思うと、彼女は僕のことを初めて人としてちゃんと愛してくれた子だった。

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