C-002-Section-005:Training

 学校生活から、新たな施設へと移行する事になったブラッドとリル。

 今、ティアとキュートに連れられ、新たに通う施設の様子を見学しているところであった。

 施設内は、苦しい修行をしている訓練兵が多く存在していた。汗を流しながら、訓練に意気込む姿を見たリルは感動というより、恐怖という気持ちを感じていた。

 そんな施設内を歩きながら、キュートが新たな訪問者である二人に施設の概要を説明を始める。


「特殊訓練施設エッセ。私やティアもこの場所で訓練を受けていた。訓練はハードなものばかりだが、それだけ成長が見込めるところだ」


 そして説明が終え、施設内の監督を務める責任者をキュートが発見する。その責任者は女性であった。腰部分まで伸びる長い髪に、ラフな服装で、身体中には過酷な戦いの中でついたと思われる無数の傷跡がついている。よくみると、左足は義足であり、体制を整える為に杖をついている。


「何だ、そのへっぴり腰は!! そんな事で戦いが務めると思ってるのかい!!」


 そんな障害の痛手など感じさせぬほど、姉御調の怒気がこもった大声が、施設内に響く。


「お久しぶりです。アミュ師匠」


 普段見せない敬意を払った言葉遣いでキュートは師と仰ぐ女性の名を呼ぶ。その声に気づいたアミュが、キュート達のほうに振り返った。


「キュート。久しぶりだねぇ。元気だったかい?」

「はい。お陰さまで」


 再会の挨拶を交わし、早速と言わんばかりに本題へと話が移る。


「話は聞いてるよ。カルディアのメンバーをウチで訓練してほしいんだろ? まあ、ウチの訓練はハードだよ。それは、訓練受けたアンタ達もわかってるはずだ。それにあまり時間も避けられないみたいだしねぇ。大丈夫なのかい? そのメンバーは?」


 半信半疑に不安を表情にするアミュ。その不安材料となっているブラッドが、アミュの前に立ち、自分の決意を打ち明けた。


「力が必要なんだ。その為に力をつけたいし、訓練でそれが叶うなら、何だってする」

「なるほどねぇ。アンタがクォーターの弟かい。真面目な兄に比べて、生意気な言葉遣いだね。まず、何だってするっていうんだったら、言葉遣い直しな。私はアンタの友達じゃない。師弟関係になるんだ」

「アニキの事、知ってるのか…、」


 ブラッドが再び言葉を口にした瞬間、アミュの拳がブラッドの眉間に直撃する。その一撃でブラッドは、後ろに吹っ飛び、壁に激突した。


「ブラッド!」


 倒れこむブラッドのもとへ名を呼び、リルは駆け寄る。

 そして、鋭い眼光でアミュは、ブラッドを睨み付けていた。


「言っただろ? 生意気な言葉遣いは直しな。アンタは、まだ子供であるから大人を舐める事しか知らないガキの言葉遣い。そんなアンタが大人の舞台に立てる事に、大人である私に敬意を払うのは当然なんだよ」


 朦朧とする意識の中で、アミュの説教はブラッドは心に残っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

TRIAL WONDER BLOOD 土方ユウ @y-hijikata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ