第5話 うるさい。私の勝手でしょ!!

 僕はいつものように十時ごろにお風呂に入った。最近は冷え込みが酷いので、あったかいお湯につかると、冷たくなった足がふわふわと温まり、ため息の一つも吐きたくなってくる。


 お風呂の蓋を開けて桶にお湯を汲む。銭湯でなくてもこうして体を流してから入るのがマナーだと思う。なので、僕は桶を頭の上でひっくり返すと。


「冷たい!」


 思わずつぶやいてしまった。ただ、決して冷水だったわけではなかった。むしろ水道水よりも暖かく、常温よりも若干高い程度で触れないほどではない。しかし、その温度は体感で三十度弱で、給湯器が壊れたわけではなさそうだ。お風呂のお湯は四十度程度なので、想像していた温度と違いすぎて、声を出してしまったのだ。


 僕はお風呂がこうなってしまっている原因を考えると、理由もなく妹の顔が頭に浮かんだ。しかしとりあえず今は追い炊きボタンを押して、お風呂を温めてから入った。


 僕はお風呂から上がると寝間着に着替えて、早速リビングでゲームしていた妹に詰問することにした。案の定、妹はパジャマを着ている。


「ねぇ、今日はお風呂に何時に入った?」


 僕が声をかけたが、妹の目線は画面から離れない。画面を見づらくするためにスリーディーの機能を中途半端にオンにしてやろうかと思ったけど、踏みとどまった。


「家に帰ってきてすぐに入ったから……。五時くらい」


 つまり、僕が入ったお風呂は五時間も前に入れられたものだったのだ。冷たいのもうなずける。


「早すぎだよ。もっと遅くていいんじゃない?」


「……何でよ」


「ほら、お風呂の水が冷たいと、追い炊きしないといけないでしょ? それに追い炊きするとまだお前しか入ってないからお湯があふれちゃうし、すぐに冷めるんだよね」


 僕がそう言うと妹はやっと画面から目を離した。


「うるさい。私の勝手でしょ」


 そういうと、ゲームを持って部屋にこもってしまった。

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中学二年生になった妹が横暴なんです 三枝 敦 @678705

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