第31話 袋を持っている理由

医療党に向かう美来と合流する。美来は何かが入った袋を持っていた。

「美来ちゃん、それ何?」

「えっと、後でのお楽しみ」

笑顔でそう言うが、バムは呆れた目で見る。

「出す前に忘れないでね?」

「忘れてたら教えてほしい」

「うん、分かった」

医療党の一室では、レゲインがフードのついた上着を脱ぎ本を読んでくつろいでいた。

まだ横腹が少し痛む。

なんで俺こんなことになってんだ? カクランにおぶられたなんて最悪だ。

するとノックの音がしヤギの声がする。

「レゲインちゃん、逆井さんとバムが来たよ~」

そういうと扉を開け、見舞いに来たバムと美来と共になぜか入ってくる。

「レゲイン、大丈夫?」

「に、見えるか? 流石にこの深さの傷は完ぺきには治せねーってよ、後は自然に治るの待てって」

横で話を聞きながら見ていたバムは、なんとなくレゲインの怪我をしている場所をつっく。

「いたっ! 何すんだよ!?」

「ゲレイン怪我してるのかなぁ~って」

「しとるわ! いてぇんだよ。だいたい、怪我してんだから入院してんのに」

美来はそれを見て笑っていた。そして思い出したかのように袋から箱を取り出す。

「何だこれ?」

「ほら、奢るって約束してたやつ。みんなで食べようと思って」

レゲインは本を置き箱を開けて目を輝かせる。

「フォンダンショコラじゃん! 食っていいのか!?」

美来が気前よく頷くとレゲインはそれに手を伸ばし食べる。

「でも美来ちゃん、何で四つなの?」

「えと、カクランにもって思ったんだけど、何処にいるの?」

困っているとレゲインがもう一つ取ろうとする。が、バムが取り上げる。

「ゲレインは駄目だよ、先生、食べますかぁ?」

ヤギの方を見てう言うが照れながらこう言われた。

「いや〜私は甘い物嫌いだから、あははバレンタインとかで友達にチョコをもらった後は困ってね〜」

何故ヤギの先生が照れている……。

「無駄だよそいつ、不味いドロドロのブラックコーヒーが好きだから」

レゲインが食べながら皮肉を込めてそう言った。

「逆井さ〜ん知ってる? 魔女ってね甘い物が大好きなんだよ」

ヤギがそう言うと何故かレゲインが噎せ始める。

「ちょっレゲイン大丈夫!?」

美来は、持っていた物を置き慌てて水を渡す。横で食べながら見ていたバムが笑い出す。

「ふふっ何か夫婦みたい」

「もう、バムも少しは心配してあげなよ」

「言われてするものなのか!?」

こんなふうに最後に笑ったのはいつだっただろう?

バムがそう思いながら二人を見ていた。

「美来ちゃん、カクラン先生なら隣の病室に居るよ」

「えっ? じゃあ何でヤギに勧めたの……」

バムは美来と目を合わせてニッコリしたまま何も言わなかった。


美来がカクランの病室に行こうと外に出るとメランが待ち構えていた。

「どう? いい先生だと思う?」

「えっ? カクランは」

答えに戸惑っているとカクランの病室から教頭の怒鳴り声が聞こえてきた。


「カクラン!! 何をしているだ!? 魔女を逃して御神木まで壊して!」

「御神木を壊したのは魔女ですし、レゲインも負傷してましたからそっちが優先でしょ? 校長にバレているのにこれで死人が出たら大変でしたね」

カクランがいつもとは違うからかうような声色で答えているのが聞こえた。

「私、カクランの事は正直先生だとは思っていませんが優しい人だと思いますよ? 狐だけど」

「クッハハハッよく言えるよあいつの過去も何も知らないくせにこいつ笑えるよ」

美来はメランが笑ったことに何故かイラッとした。それが美来のふくれっ面に繋がったのだろう頬を膨らませてメランを見ている。

「あれ? 怒っているの?」

「怒ってません、すぐに忘れる人なので何にも怒ってません」

教頭がイラつきながら病室から出てきた後美来はカクランの病室に入る。

「珍しいね美来が一人で来るなんて」

「隣だから、これ渡しに来ただけ」

カクランにチョコレートケーキを勧めた。

「なになに、美来の手作り? それとも僕へのプレゼント?」

「レゲインに奢るついでだよ?」

美来は真面目にそう答えるのでカクランは黙って食べる。

「大丈夫なの?」

「僕? 軽く腕怪我して足怪我しただけだし平気だよ?」

笑いかけるようにカクランが答えたので美来は安心する。届けるだけのつもりだったので早々に出て行きレゲインの病室に戻った。


ーーガラッ!

「カク〜……あ、病室間違えたか」

ヤギが出て行き三人で話し始めた時テンスラが病室に入ってきた。

「テンスラ……でしたよね?」

「そうだけど? 何で?」

美来は出て行こうとするテンスラを呼び止めカクランの家に届いていた手紙の件を持ち出す。

「手紙? あぁ、あの悪質なやつか……二年前の話をしきりにあげるね、俺もよく分かんねぇけどカクランが一年の頃ずっと取り上げられてた事件があるんだよ」

バムが思い出したようにハッとした顔をする。

「魔女の襲撃と学級崩壊のこと?」

「そーだよ、教頭はその事件がまた再現されようとしていると警戒してんだ。それで人間の君をよく思ってねぇんだよ」

「テンスラ、あの、カクランとその話ってどういう関係があるんですか? ここの先生達って関係が悪いんですか?」

突然の美来の質問にテンスラは黙ったまま三人を見ている。

「あの……」

「カクはその事件の時この学校に居たから本人にでも聞いてみりゃあいい。先生達の関係ってここの教師じゃねぇオレに聞くことじゃないだろ」

テンスラは質問には答えの出し方だけ答えまともに答えてはくれなかった。

つまり、どっちも自分の答えるような質問ではないのでカクランなどに聞くべきだということだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

プハンタシアワールド1071〜異空次元警備学校〜 ラピーク @kurape

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ