第30話 契約した理由
一年前、バムはずっと仲がいいと思っていた友達にいじめられた。
その友達はそれまで教えられたことは何でも上手くやっているバムを自分の事の様に褒めてくれた。応用が苦手なバムに一生懸命教えてくれた。そんな友達がバムは大好きで一番信用していた。
ある日その子は他の子と仲良くするようになりバムとは話さえしてくれなくなった。その上、大切なモノが消えたり二人で作ったはずの秘密基地まで荒らされるなどが続きその子がやった事を知ってしまった。
そんな事知りたくなかった、嘘に決まっている。そう思おうとした。
次の日、その子が一人の時、今までの事について問うとその子はバムに怒鳴るように言った。
『そうだよ、だから? もう、あなたには付き合えない!』
「なんで? 私、何かしたの?」
『そんな事、機械みたいに何でもできる心なんてないバムには理解できない! もう、あんたなんかの面倒は見たくないの』
バムはショックだった。信じていた友達が自分を嫌っていたことが。悲しかった、他の子にその子が取られたことが。
その子が悩んでいるとき、教えられなかったから悩みを聞くことができなかった。言われたこと教えられたこと以外は自分には何もできない。
それから嫌いになった、一人だと何もできない自分を、教えられたことは完璧にできるのに応用のできない自分が。怖くなった、周りの目が。
私、機械と同じなんだ。人なんて信じても無駄なんだ……。
そんな自分を消したかった、抗いたかった。
家を飛び出し警備学校に入った。知っている人のいない場所で変わろうとした。
でも、私は美来ちゃんを信じることができなかった。
レゲインに美来ちゃんを取られて、また一人になるのが怖かった。
レゲインを含めて班を作った日、その不安は抑えられないぐらいに大きくなった。
理由をつけて一人になった時魔女に出会ってしまった。
「あなた、どんな悩みを抱えているの?」
初めは相手にしないようにと思っていたが魔女は続けてこう言った。
「また裏切られるのが怖いの? 私が助けてあげてもいいのよ? レゲインって子が嫌いなのでしょう?」
「レゲインを知ってるの!?」
「ええ、もちろん。今まで親しい人が居なかったからあなたより話しやすい美来を取ろうとしているんじゃないかしら?」
「どうするの? 私、美来ちゃんに無視されたりしたくない」
「この紙に名前を書くだけでいいのよ?」
レゲインがそんなことをするわけない。美来ちゃんならそんな事するはずないと何処かで信じていたものも消えてしまった。魔女の誘いに乗ってしまい、そのせいで美来ちゃんに怒鳴ってしまった。
「謝らなきゃ」そう思ったのに思いどうりに動けなくなっていた。
魔女との契約のせいで。
二人で居られるそれなら他のすべてを失ってもいい。そう自暴自棄になってた。
レゲインは知らないとして、美来ちゃんはそれでも私の所に来てくれた。
私が殺そうとしてしまって諦めかけても酷いことをした私を心配してくれた。
嬉しくて申し訳なくなった。
レゲインには何とも思わないが……。
「もう良い。今回だけだぞ? バム」
バムは一人、校長室に処罰を受けにきていた。
「え? ですが……私は、魔女と契約したんですよ?」
「悪魔の憑代にされかけてその傷だらけの痛々しい姿になって、反省したろ? 見るに耐えん。それに、拉致したも同然の者から数少ない話せる者を奪うなどできんよ。君たちはまだ心も未熟だしな」
「拉致? 誰をですか?」
校長は黙る。バムが不思議そうに見つめると話してくれた。
「美来だよ、国などに許可は取ったものの、本人には許可も何も取っていないからな」
「えっ! 美来ちゃん拉致されてここにいるの!?」
校長は笑っているが笑い事じゃないと思う。でも、美来ちゃんは気にしてなさそうだし、シシア帝国から戻って数日間も別に楽しそうだしいいのかな……。
「何かあったら私にでも言え。教頭に言うよりマシだよ、レゲインもカクランも大きな怪我をするようなことをさせるしなあいつは」
「校長、逆に相談しにくいので別の人にします。ありがとうございました」
バムは一礼をして出て行く。
「なにっ! 私を頼ってくれ!?」
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