第29話 破壊成功の理由

「ふふふっほら全く取り返せない……」

カクランはアイレの作る真空により発生した風に拒まれ近づくことができない。そんなカクランに止めをさそうとアイレは手を振り下ろす。

カクランがやばいと思った瞬間、後ろの床から突然生えてきた木の枝に突き飛ばされカクランは右腕に軽い怪我をする。その木の枝は風で削られ吹き飛んだ。

「今のは……なんだ」

アイレを見ると怒っているのが分かる。

「ヘルバ! 私を利用したわね、何処に居るの! 出てきなさい!」

カクランのすぐそばにヘルバが姿を現す。

「アイレ、あなたには怒る権利はないのよ? 追放されているのだから裏切りものなのでしょう? それにここは木でできているのよ簡単に隠れられるわ」

「邪魔をしないでよ! そいつを守る意味ないじゃないの」

ヘルバはカクランを見る。

「いいえ、あたしの契約者との内容に関係するからまだ殺させないわよ」

アイレはヘルバに対して魔法を使うがヘルバは木の枝で自分の姿を隠し、アイレの後ろから現れ木の枝で刺しにかかる。

枝の先をかまいたちで削って防ぐ。


「くっ……」

レゲインも苦しそうにしている。

駄目だ、こいつの正気を奪ってる契約を解かねぇと俺まで危ない。

「まだかよ! 契約物を早く壊せよ! ぐっケホッ」

口から血を流すレゲインを見て美来はもう止めてしまおうかと考える。バムもレゲインも居なくなれば美来にとってのこの世界での友達は居なくなる。一人になるのが恐く感じたのだ。

それにレゲインも既に大けがを負った状態だ。いつ力尽きてもおかしくない。

「レゲイン……もうやめて、レゲインも倒れちゃう」

泣きそうな声で訴えかける美来を無視してレゲインは続ける。


アイレがヘルバの攻撃を防ぐのに手こずっている中、カクランは槍に狐火をともしその槍の先で指輪を指ごとかっさらう。

「!? よくも私の指を!」

アイレがカクランの前にかまいたちを起こし切り刻もうとする。カクランは指輪を指に着けたままそこに投げ込む。すると指輪は粉々になった。

それを見て今度は全体的にかまいたちを起こそうとするが、ヘルバに木の壁をつくられ手を出せなくなる。

「あら? アイレ、あなたは目に見える場所しか攻撃できなかったのかしら? 悪いわね」


指輪が壊れると同時にバムから黒い靄が抜けていき倒れる。魔法陣は消えレゲインは手を放し息をつく。

美来がバムに近寄ると、バムは目を覚まし起き上がる。

「バム? だい……」

美来が言い終わる前に美来に飛びつき泣き出す。

「美来ちゃんごめんね、あんなふうに怒鳴りつける気なんてなかったの」

バムは美来を離し謝る。

「私……」

「バム、気にしてないよ?」

「んなことより、早くこんな所から出た方がいいんじゃねぇの?」

二人ともレゲインを見る。

「何で、ボロボロになって?」

「おめぇのせいでもあるぞ。無理やり……」

レゲインは言い終えることなく意識を無くし倒れる。

「レゲインっ!」

「えっ、ちょっと!?」

二人はレゲインに呼びかけるが反応は無い。すると、カクランがレゲインを背負い上げる。

「今のうちに逃げるぞ、話は戻ってからね」

バムと美来も立ち上がりカクランの後を行く。


村まで戻ると神殿はシ神木ごと竜巻の様なものに呑まれ消え去る。

「あ~やばい、ご神木一本消えた」

カクランは棒読みでそういうとバムが聞く。

「消えたら何かあるの?」

「ご神木が消えたんだ、何本かある中の一本が、帝国の兵が捜査にくるぞ。その前に戻ろうか」

「う、うん。バムも無事だし」

兵が来る前に村を出て帝国の方に急ぐ。関わっていると知れれば何をされるか分からない。

無事に移動塔につながる建物にたどり着いた時には三人とも疲れ切っていた。レゲインは息はしているので死んではいないから大丈夫なのだろう。

外は既に夕方だ。


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