第28話 攻撃が効かない理由

「どう? 信じる価値はあるでしょう?」

レゲインは魔女のアイレの話を聞いていた。

「信じる価値? そんなもんねぇよ、魔女の言葉なんて一番信用できねぇな」

さっきから続いてた音は何だよ……美来たちか? こいつの言葉を信じて受ければ、悪魔に体を取られて俺の魂は喰われるだろうが。俺なら自我を保てる? 正気かよこいつ。

「そう、じゃあ死んでもらうわ」

アイレは手を振る、レゲインは危険を感じ横に避けるが横腹を何かがかすり少しえぐれる。

「ぐっ……てめぇ」

「よく避けたわね」

痛みを感じる横腹を押さえ立ち上がる。手を放し手のひらを見る。

やばいな、危ない、体が吹き飛ぶところだったな。

両手に短剣を握りアイレに向かっていく。アイレが手を振るのを見て下にかがみ避ける、そのまま勢いをつけて斬りつけた。だがレゲインはアイレをすり抜ける。

「なっ!? 幻影?」

そこにはもうアイレの姿はない。

「うっ……」

血の流れる横腹を押さえる。短剣は白紙の紙に戻り床に落ちた。

美来たちの所に行かねぇと、アイレの奴何するか分かんねぇ。

痛みをこらえて歩き出す。


「キャッ! うっ」

美来はバムに蹴り飛ばされる。

「痛い……バム、やめて、死にたくない痛いのは嫌だ」

バムは剣を引きずりながら近づく。

「美来っ! バムやめろ! 殺していいのかよ!?」

カクランは悪魔から手が離せない。

だが、バムは美来の前まで来て動きを止め声を絞り出すように話す。

「美来ちゃん……逃げて……」

「バム?」

すると、女性の声が部屋に響く。

「バム、約束通りあなたの体を貰うわよ、その子と一緒に居られるように」

木の前を見るとアイレが立っている。

アイレが微笑みかけるとバムは剣を落とし呻きだす。バムの足元には村で見たものと同じ魔法陣が浮かび上がっていた。

「ううっ……いやぁあ!」

美来は怯え後ずさる。バムは倒れ込み苦しそうに呻いている。

美来ちゃん……早く逃げて、本当は殺したくなんかない。

「っ……ごめん……ね美来ちゃん」

バムの頬などに切り傷ができる。バムはそのまま気を失い動かない。

「バム?」

カクランは美来に叫ぶ。

「バムから離れろ!」

美来が触れようとするのを止めるとバムが起き上がり美来を押さえつけ首を絞める。

「美来!」

――バンッ!

銃で押さえられていた扉がブチ破られる。カクランは一瞬諦めかけたが扉の方を見て驚く。

そこにはフードが脱げて横腹を押さえてボロボロになっているレゲインが立っていた。きっと外に居た悪魔と戦っていたのだからボロボロになっているのだろう。

レゲインはカクランを押さえている悪魔を短剣で斬り倒す。すると悪魔の体から黒い煙が抜けるように上がり消えていき体は力なく崩れ落ちた。

カクランは自分の上に横たわる悪魔の抜けた遺体を下ろし起き上がる。

「レゲイン、無事……じゃないか」

「おめぇのせいだ。それよりバムの契約物あの魔女が持ってるあの指輪だよ」

「分かった、それなら僕にもできるよ。二人はレゲインがどうにかしろよ」

レゲインは何も言わず美来とバムの方に行く。カクランは槍を持ち直しアイレの方に向かう。

「あら、私の相手は狐さんなの?」


「ぐぅぅ……」

苦しい、バムやめて、痛い。

レゲインが来てバムを蹴り飛ばし美来から離す。そして紙を投げザイルと唱える。魔法陣が現れロープが出る。そのロープはバムの動きを止めた。

「ケホッケホッ……バム」

「大丈夫か?」

レゲインが聞くと美来は頷きながらバムの方へ行こうとする。レゲインはそんな美来を止める。

「バムは? 殺したりしないよね?」

「しねぇよ、今ならまだ悪魔を引き離せる。けど、俺一人じゃ引き離すのと押さえるのを同時にはできねぇ。だから美来、お前がその銃でロープを出して押さえろ。あのロープが消える前に」

「う、うん分かったやるよ……」

レゲインは扉を押さえていた銃を渡す。美来は受け取り暴れているバムに向けて構える。ロープをイメージして引き金を引く。だが、ロープではなく杭の付いた網が発射されバムを床に押さえつける。

レゲインの出したロープは消えた。

レゲインは魔法陣の描かれた木の皮をバムのそばに置き手をつく。バムを中央にして白く光る魔法陣が現れる。

「痛い、いやめて! ううっ」

バムはまた苦しそうに呻く。

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