第27話 襲い掛かる理由

「カクラン、レゲイン大丈夫かな?」

「今の感じだと、こういう罠には引っかからないんじゃないかな? 魔女や悪魔に遇ったら分かんないけど」

「でも、私に襲い掛かってきた魔女追い払ったのレゲインだし」

そういえば、美来を襲った魔女はレゲインと顔見知りみたいだったな。レゲインの魔力は使うときの威力は不安定だけど、持ってる魔力はかなり高いから狙ってんのかもな。

「危ないから手、繋ごうか?」

美来は珍しくカクランを軽蔑した目で見る。

やばい人だ、この人。私にも分かるよ、ヘンなフラグを立てようとしてるの。

差し出された手を無視して歩く。

「あれ?」

拒否された……本気で言ったら拒否された。


レゲインは別の階段を見つけ二階に上がっていた。

牢屋などが並ぶ廊下に入る。突然大きな音を立て鉄格子が降りてきて戻る道を塞がれる。


美来とカクランの所には床が落ちるような大きな音が聞こえた。

「今の何?」

「レゲインの方で何かあったんじゃないかな?」

それか、何かを閉じ込めてた扉が開けられたとかだな。

「大丈夫かな?」

「心配しすぎだよ美来、レゲインは危ないと思ったら逃げるだろ」


レゲインの前にドレスの様な服を着た女が現れる。

魔女か。こいつは確か真空の魔女、アイレ、追放魔女の筈。何でここに?

「お久しぶり、レゲインちゃん」

笑みを浮かべて優しく話しかけてくる。

レゲインは警戒して両手に魔法陣の描かれた紙を握り、片手は後ろに隠し頭の中で唱える。

「フォルム、ドルホ」

その紙は消え代わりに術式の刻まれた短剣が握られる。

「そんなに警戒しなくてもいいのに。フードを取って顔を見せてよ。ただ協力してくれるだけでいいの」

「協力? それってよ、憑代にされる前に死ねってことだろ?」

「憑代になってほしいのよ。それが駄目ならそうしてもらいたいのだけど」

悪魔の憑代に? 追放された奴は魔女に力が付かねえよう憑代にされそうな奴を排除して悪魔を使おうとしなかったのにか?

「聞いて、きっとあなたなら……」


カクランと美来は廊下を走り悪魔から逃げていた。

「美来! 銃で動きを止められる強さの空気砲を撃て!」

美来はベルトから銃を取り出し追いかけて来る奴らに向けて撃つが、空気ではなく水を発射させた。

一応動きは止められる。

カクランは壁に数枚護符を貼って走る。

護符は通路に結界を作り悪魔の足止めをする。

「すごい……あれって?」

「霊術の結界だよ。でもあんまり長くはもたない」

しつこいなオレ一人じゃ美来は……。

「カクラン前にも!」

「っ……貸せ!」

カクランは美来から銃を取り前に居る二人の間に何かを撃つ。すると丁度二人の間で爆風が起き二人を吹き飛ばす。

カクランは突き当りの部屋に駆け込み、扉を閉め開かないよう美来の銃で止める。

「あっ……」

「ごめん、後で何とかするよ」

部屋を見渡すと中央に木の枝などが一階から突き抜けている広い部屋だと気が付く。

突然美来の背後に誰かが上から降りてきて、殴りかかった。

――ガッ……

「! カクランッ」

美来ではなくカクランが代わりに受け止めていた。美来とカクランは攻撃を仕掛けてきた者を見て驚いた。

「バム……何してるの?」

「美来ちゃん、来てくれたんだね」

カクランは美来をかばうようにしてバムから離れる。

「先生、そこをどいて」

「無理だ、バム……どの魔女とどんな契約をした?」

「契約ってなに?」

「大きな何かと引き換えに願いを叶えてもらうものだ、基本は残酷な形でな」

バムはゆっくり近づきながら一枚の白黒の写真を取り出し、それに竹串を刺す。

「美来ちゃん、友達だって思ってくれてるなら、どんな形でも私と居てくれるよね?」

竹串を刺した写真は白黒の剣に形を変える。その剣をバムは手に握りカクランに振り下ろす。美来は思わず目をつむる。

カッ……という音だけ聞こえたので恐る恐る目を開けると、カクランが赤いロープと小さな星の飾りが付いた槍で受け止めていた。

「美来逃げろ!」

美来は恐くて動けなくなっていた。

くそ……動いてくれ美来!

「うぐっ!?」

カクランは横から現れた悪魔に蹴り飛ばされる。

「美来ちゃん……」

美来はナイフを取り出し剣へと刃の形を変えて構える。

大丈夫、避けて剣で攻撃を防ぐだけ、バムには当てないように。

バムは容赦なく斬りかかってくる。美来はギリギリのところで避け防ぐを繰り返す。


カクランは悪魔の相手をする。殴りかかつて来るのを避け槍の鞘で殴り飛ばす、そして美来を助けに入ろうとする。だが、悪魔がすぐに起き上がり阻止する。

こいつをどうにかしないと……だが、オレには倒せない。

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