第26話 分裂の理由

美来は自分の世界でもあのようなモノをしょっちゅう目撃していた。だが、幼いころは親に暖かい目で流され小学四年の頃は物忘れが激しいうえ何かが見えるなんて何かの能力か脳がやられているのでは? と病院に連れて行かれたので気にしないようにしていた。

同じモノが見える人が居るのだと少し嬉しくなる。だが、人間ではない。

「欠片だからね、気を付けて。心に入ってきたリ、体に引っかかったりするから」

「引っかかるって?」

「欠けた部分が物理的に引っかかってるみたいなもの。ほら、肩が重いとかあるだろう?他にも首が消えたり。取りつかれるのは心に紛れ込むから見えないけど」

これには少し納得する。だから顔などが写真に写るのだと。いわゆる心霊写真だ。

だとしたら見えている美来には避けたり逃げたりできるので便利だ。

「答えられる範囲で質問にも答えてくれるんだよ。霊によるけど」


レゲインのところへ行くと地面に描かれた魔法陣を見ている。周りには血痕らしき跡がある。

美来が軽く触れようとするとレゲインが腕を強く掴み止める。

「魔力の弱い美来が触れるのはやめろ、身体が裂ける」

「これは?」

「魔女が描いた魔法陣、悪魔を憑依させるためのもの」

ここの奴ら、魂食われたか、憑代にされたみてぇだな

レゲインは魔法陣の上に立ち落ちている木の棒を取り魔法陣の線をそれでぐちゃぐちゃにする。

こんな物騒なモノ残さねぇ方がいい。

「レゲイン? 何してんだ?」

カクランが来る。何処から見つけてきたのかパンを食べている。

「消したのか、ここには本当に人が居ないみたいだ。一人の魔女にやられたんだとさ」

「食うなよ、人の家の食いもん」

レゲインが横目で見る。

カクランはパンを食いちぎりにくそうに食べている。多分、手を出したら数日間放置されていたパンは固くでも捨てるわけにはいかなくなったのだろう、嫌々食べている。

よく見ると少し苦しそうにしている。美来の肩をたたき下を向き、訴える。

「美……来、水ない? 喉に……詰まった、水……」

「えっ、水? その、えと」

「その辺の家から貰えよ、食うからそうなんだよ」

苦しんでいる人にレゲインは冷たくそう言った。少し喜んでいるようにも見える。


水を飲んで戻ってくると村の奥に向かい歩き出す。

「向こうに儀式を行ったりする神殿があるんだ、多分バムは向こうにいるから」

「悪魔も居るんじゃねーの?」

「多分ね、気を付けて。あいつらは容赦ないから。取り憑かれた人は助ける方法はないしね」

カクランに案内されるようにして神殿に着く。

神殿は大きな木を囲むように建てられており、木が屋根から突き出している。木造で、火を着ければ一瞬で燃えカスになりそうだ。でも一瞬ではあり得ない。

中に入ると木の板を通じて三人の足音と木の軋む音が聞こえる。これなら他の人が近づいて来ても分かりそうだ。

奥に進むが特に何も起きなかったがカクランが二階への階段を一段上がったところでレゲインが慌てて美来を階段の方に突き飛ばした。

「わっ!?」

すると、レゲインの目の前で廊下を塞ぐ壁のように大きな魔法陣が現れ光る。

「おい!」

カクランが気が付きレゲインのところへ行こうとするが魔法陣にぶつかり向こう側へ行けなくなる。

魔法陣は一度大きく光り消えていった。だが、そこには見えない壁が残った。

「何処の身代わりにひかれるやつだよ」

呆れたように見えない壁に手をついて呟くカクランをレゲインはいつものように見る。

「死んでねぇし……グフッ」

レゲインはいききなり顔を背けて笑い出す。

「なんだよ? 何で笑ってるんだよ?」

「別に。フッ……」

やばい、パントマイムしてるみてぇで笑える

レゲインは口を押えてこらえきれず笑う。

美来は心配そうに二人を見る。

もし、レゲインが一人で魔女とかに遇って無事でいられるのかな?

「レゲインどうするの? 壁壊しせないの?」

「無理だな、さすがに壊さない方がいいよ」

確かに、形を保っているとはいえど古い木造の建物だ。下手に振動をあたえたり破壊をしたりすれば崩壊しかねない。

「レゲイン、お前一人で戻れ」

「嫌だね。お前の指示なんて聞くか」

こいつ、流石に僕もイラつくかな……オレが成績付けてるのに。成績落とすぞ。

「俺は別の道を探す」

そう言って止めようとするカクランの声を無視して行ってしまった。仕方なく二人で先に進んむ。

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