第25話 不気味な理由
町の出口までさしかかるとカクランがこの国の説明を歩きながら話し始めた。
「シシア帝国はシシア神の宿るとされる赤い葉の大きな木、シ神木を祀るシシア教の国なんだよ。」
「さっきの見えてた木?」
カクランは頷く。
「不気味だよな、あの木」
「そうかな? 綺麗な赤い葉っぱじゃん、あの周りだけ光ってるように見えたけど」
「は!? マジで? 余計に不気味なんだけど……俺には血の色に見える」
レゲインはこちらを見て引いている。
そこまで不気味には見えないけどなぁ、何か不思議な雰囲気を感じるけど
「不気味だと僕も思うよ、だってシシア教は異端者の血肉を木に捧げるんだから。あの葉は血を吸ったからああなったとも言われてるしな。帝国ではカトゥルス王国と同盟やらした後からは家畜の豚を代用してるけど」
それを聞くとレゲインは呆れた目で美来を見る。
「で、でも、それなら生け贄にはならないんじゃないの?」
「帝国の町の中だけ。周りの森も帝国領だけど、まだ昔のままのシシア教の村が残ってたりしてね、三年前、僕の班の子が殺されそうになったんだよ」
ん? 三年前? 班って私たち生徒だけだし、普通に行くと三年間で卒業するから……ついこないだまでカクランは生徒だったの!?
「カクランって、教員一年目だったんだ」
「今更だね、美来ちゃん。僕は普通に君たちの先輩にあたるんだけど?」
「でもよ、二、三年の奴らに慕われてねぇつーか、寧ろ避けられてねぇか?」
「避けられてるよ。昔ナンパしたせいかな? レゲインに見られてたのか。避けられてるから親しい人、アウラーしか居ないんだぞ?」
いや、他の教師も避けてんのに、教師にもナンパしたのかよ? あの避け方、そういうのじゃないよ、昔、俺も……。
「でも、何であの先生だけなの? 助けた人だから?」
「さあ? 僕にも分からない、助けたのは別の人」
カクランってナンパしてきても避けるぐらい嫌な人じゃないのに。
避けられても明るく振る舞うカクランは何とも思っていないようにも、悲しそうにもみえるが、満足そうにも見えた。
美来はただ変わった人だとしか思わない。
「にしても、レゲインがシシア教知らないとは思わなかった」
「国の事はほぼどこの事も知らねぇよ」
知る機会がなかったし、知りたくなかった、そう心の中でレゲインは呟く。
町を出てからどれくらいたったのだろう。まだ目的地には着かない。日も傾きもしていない。一時間はたったはずだ。
「まだ? 何分ぐらい歩いたの?」
美来が聞くとカクランは時間を見る。
「四十分ぐらい、学校内でいう六時まで十時間あるから時間的には心配ないよ、もうすぐ着くしな」
「どういう意味?」
「学校のある海域の外は、一日が六十時間だよ、前に言ったはず」
また、忘れてたんだ。怒ってないかな? 忘れてたっていえばレゲインに何か奢らないといけないんだ。
「レゲイン、何を奢ればいいかな?」
レゲインは驚いたままこちらを見ている。
「俺に? 思い出したのか? そうだな、甘いチョコレートケーキとか食べたい」
「えっ、それでいいの? チョコケーキならなんでもいいの?」
何も言わず頷く。
乙女と言うと少しムッとされ睨まれた。
「分かった、じゃあ、無事にバム助けて帰れたら奢るよ」
「要件増してんだけど」
「二人とも着いたよ、ここだよ」
前を見ると家が何件か建っている村の門がそびえている。村の中からは人の気配がしない。
村の外にでも出かけているのだろうか?
「ここって無人なのか?」
レゲインが聞くとカクランはそばの家の窓から顔を出す。
「いいや、人が住んでたよ。でも誰も居ない。おかしいな……つい最近まで居た形跡あるんだけどな、でも居たら僕達危なかったよ、異端者だから」
レゲインは一人村の中央に歩いて行った。
まるでゴーストタウンだ。いや、人が居ないからまるでではない。
美来がカクランの方に向き直ると目の前を半透明の人が通り過ぎる。
「うわっ!?」
美来は驚くがカクランは驚いていない。見えていないのかとも思ったが目で追っていたので見えている。
「珍しいな、地縛霊か? 美来も見えるんだ」
「見えるって、幽霊?」
「そうだよ、だけど幽霊は魂の欠片だからね、憎しみとかの想いの強さで見えなかったりするんだよ、あと形も変わる。強い霊力があると想いが弱くても見えるんだ、美来や僕みたいに」
その話を聞いても感心の声も驚きもない。
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