第24話 生き残りが怨まれた理由

「移動塔って?」

「入ると別の場所に移動させられる部屋が大量にある塔」

「どうなってるの?」

「知らね、後であいつに聞けよ」

レゲインは塔に向かって歩き出す。美来は置いて行かれそうになり小走りで追いつき隣を歩く。

「生き残った人、何で恨まれたの?」

「そいつが自分のクラスメイトを皆殺しにしたから、二年前なんだしカクランも知ってんだろ? 戦いもしただろうし」

何でその人は皆殺しに? もう居ないだろうし。

思えば、そんな事件のあった場所で何も知らずに生活している。

「でも、話してくれるかな?」

「俺は知らない」

なんかこの話し始めた時から様子がおかしいし。苦しそうで、冷や汗もかいてた。


何で? あの手紙の主は誰なんだよ? 魔女と契約したあいつはもう、魔女に無理やり納まりきらない強さの悪魔を憑依させられて……じゃあ誰が?

カクランは部屋の入口でうずくまる。

「もう嫌だ、苦しい」

二人を連れて行ってもオレは戦えない、あんな光景見たくない。

恐い……怖い……。

行かないとバムが死んでしまうかもしれない。


「遅いね……倒れたりしてないかな?」

美来とレゲインは三十分間塔の入口で待っている。レゲインはゲームに夢中で美来の声は聞こえていない。

何となく顔を上げるとトボトボ歩いてくるカクランを見つけた。

「カクラーン」

呼ぶとこちらを見、困った表情で微笑んだ。

「クスッなに、その新たな神みてぇな呼び方」

ゲームに夢中になっていた筈のレゲインはこちらを見て笑っている。

あれ? 久しぶりにレゲインが笑ってるの見た。

「ごめん、遅くなって」

暗い表情でそう謝る。

「彼女にフラれたの?」

「何でそんな発想に? もしそうだったら、美来が慰めてくれるのかな?」

「変態だな」

「その発想する、レゲインがね」

レゲインは黙ってしまう。

「早く行こうか、バムが心配だし」

「てめぇが遅いんだろ」

塔の中は白い石の神殿の様な造りになっていた。円形に部屋が並び天井まで抜けている。

高い、広い。何処かの遺跡に居るみたい。

「部屋ってどうなってるの?」

階段を上がりながら美来が聞いた。

「ドラゴン達が作ってプログラムした巨大な魔石が入ってるんだよ。この塔もストーンドラゴンが魔石の力が部屋の中だけに作用するように建てたんだ」

「ドラゴンがいるの? コウモリの羽ついたトカゲの?」

「うん、美来は食い殺されたいのかな? それとも、冷凍保存されたいのかな?」

「え、嫌だ……」

ドラゴンって恐いんだ。でも、こんな大きなもの建てるって凄いな……。

「ドラゴンが? 魔女が入ると牢獄に送られたり、粉砕されたりしねーよな?」

明らかにレゲインは怯えてている。美来も不安になる。

「粉砕……恐いこと言わないで、一応ないはずだけどな」

何で、カクランまで怖がるの!?

三フロア上がり扉にシシア帝国と書かれたプレートが下げられている部屋で止まる。

「おい、センセイ。怖がるのやめろよ」

「大丈夫!」

扉を開けると中は紫の光に包まれて見えない。カクランがその中に入っていき消える。

美来がためらっているとレゲインが押し込みながら後に続いた。



カクランは到着した場所を見て溜息をついた。美来とレゲインも到着する。

そこは塔の中と同じ石で出来ている建物の中だった。

「どうしたの?」

「何でもないよ」

外に出ると中とは違い建物は全て緑と木で覆われている。遠くの方に赤い葉の大きな木が見える。その近くには木に飲み込まれるような形で建っている城があつた。

道を歩いている人は動物のアクセサリーなどを着けている。改めて異世界に来たということを実感する。

「ねぇ、僕一人で行ってもいいかな? 駄目だとして、レゲインが来るなら美来も来てほしいんだけど」

カクランがこちらを向きそう聞いてきた。

「俺、困るんだけど? 戦えず死なれたら退学とか困るし」

「そう……バムだけ助けてくるのも信用できないんだ?」

レゲインはフードの中からカクランを睨む。

――何言ってんだこいつ、信用してねぇのはお前もだろ……

「ほら、男二人で行くの、僕嫌だから」

よく見れば笑顔でそう言ったカクランもレゲインを睨んでいた。

――レゲインだけついて来たとして、僕が死んだらバムを殺す可能性もある……

美来はそんな二人を見て少し不安を感じる。

「でも、これから行くところは、この帝国内とは違って生け贄にされかねないから気を付けてよ?」

カクランはそう言って歩き出す。

「生け贄って? 何で?」

すぐ横に居るレゲインに美来は聞いたがレゲインは少し驚き、分からないと首を横に振った。

レゲインも知らないんだ……いつもは普通に答えるのに、何でも知ってるかと思ってた。

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