第23話 同行させる理由
「君たちにはバムを助け出すか抹殺するかをしてもらおうと思うのだが?」
何でバムを殺さないといけないの?
美来は不安になり隣に立っているレゲインに目をやるが、表情を変えずただ聞いているだけだった。
「なぜ、二人も同行なんですか? 僕一人じゃだめなんですか?」
「愚かな人間とつるんでいるからこうなるのだ。レゲイン、分かっているかね?」
教頭はレゲインの前に来て顔を覗く。
「これは、人間とつるむとどうなるか分からせる為にやっている」
「班の制度があるからバムと美来と居るだけだ。この命令を聞かねぇと退学になるなら別に反論はねぇよ」
いつも通りの言葉使いで話していたがいつもより冷たく感じた。美来はレゲインの言葉を聞き少し悲しくなる。
レゲインは何でそんなふうに言うんだろ? 私はもう友達だと思ってくれてるって思ってたのに……。
「下手をすれば二年前のような事が起きてもおかしくないんだぞ? カクラン、君はどう責任を取るつもりだ?」
教頭がカクランの前に来て蔑むように聞と明らかにカクランの様子が変わった。
「……前から言っているはずですが? オレは命をもって償っても構わないと」
「そうだったな。だが、死刑などの処罰は女王や王にしか下せない」
「じゃあ、聞かないでください。ところで手紙の内容を教えてくれるのですよね?」
「そうしないと、そこの彼女は納得できないだろうからね」
美来は自分を見てきたカクランの方を見るとカクランと目が合う。
「!……」
だがすぐに目を逸らす。カクランの目がいつもと違い真剣で、睨んでいたから。
バムが危ない? 助けるの? 殺すの? 二年前って? 二人とも……恐いよ? バムが居なくなったのはカクランのせい? 違う、私のせいかもしれない。私が約束を忘れた? 忘れてる記憶の中に言い争いとかあったのかも。
カクランは教頭から手紙を受け取る。
「ここで倒れるのはやめるんだぞ」
封筒から出そうとしたが注意をされ出しかけた紙を戻し美来の前に出す。
「え?」
「ごめんね、僕の代わりに読んでくれるかな?」
いつもの感じで申し訳なさそうに微笑んで美来に頼んできた。美来は頷き封筒を受け取る。紙を取り出し朗読した。
三年前のあの場所は覚えているよな?
君が初めて受けた依頼
あの場所が悲劇の場所になったら思い
出すんじゃないか?
あの子は確かバムといったね
カクラン、君に思い出させたいんだ二年
前の事を
「私はバムの居場所は分からないからね、健闘を祈るよ」
カクランは出口の方に歩き出す。美来とレゲインもその後に続く。屋外まで来るとカクランが二人の方を向き止まる。
「ごめん、僕のせいでこんなことになって」
「え? うん……」
「やめろよ、そのしんみりした空気作んの。お前らが反省してようがしてまいが俺は興味ないんだよ」
カクランは少し考え顔を上げる。
「それは、慰めと捉えるけどいいかな?」
いつもの明るい調子で言った。レゲインはそれを聞きムッとする。
「うざい、鬱陶しい」
「同じ意味の言葉を被せるなよ」
「最低だ……」
レゲインの嫌味はカクランに利用されされ空気が明るくなる。
「カクラン、二年前って何のこと?」
美来が聞くと軽くイチャついているように見えかけていた軽い取っ組み合いをやめ美来の方を向く。
「それは、そうだね、美来は知らないよね。」
カクランはレゲインに説明させようとレゲインを見るが、目を合わせられる。
「俺も知らね。二年前は九歳ぐらいであんまり情報に触れられなかったし」
「二年で七歳もいくの?」
「年数分年取らねえんだっつってんだろ、それに一ヶ月が六十日あんだよ」
「えっ!」
「美来に言わなかったっけ?」
驚くと同時にカクランがまずいというように呟く。美来は少し考える顔をすると澄ました顔でフォローを入れる。
「ん……覚えてないから大丈夫」
「じゃねーよ、それで、何があったんだ?」
「魔女による学校襲撃、一学級の崩壊、魔女との契約、ニュースで一年間何度もやった内容だよ」
少し苦しそう……カクラン大丈夫かな?
「あ、それなら聞いたことある、学級崩壊だけ。確か一人だけ生き残ったんだよな?」
「生き残ったって!? ひ、人が死ぬ出来事なの?」
美来は恐る恐る聞く。だが、一年間も、それもこの世界では三六五日以上の期間流されていたニュースだ。人が死んだからこそ注目度も高くおいしいネタだったのだろう。
「一人でも、その一人は哀れみじゃなく憎悪を向けられたみてーだけど?」
美来が聞こうとするとカクランが口を挟む。
「ごめん……僕、忘れ物したから取りに行くの時間かかるから移動塔で待ってて」
そう言い、走っていった。
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