第193話 交通事故

たまたまその現場に遭遇してしまったのだが。

買い物がてら、線路沿いを歩く練習をしていた。

帰り道、車道を横2列になって走る親子らしき自転車があった。

親が線路側、子供が道路側。

で、接触したのかたまたまよろけたのか判らないけど、車が通ったタイミングで子供が転んだ。

後続車が、車道に投げ出された子供の自転車のかごに入っていたものを轢いた。


運悪く、かごに入っていたのは、動物だった。

車はそのまま去った。

子供が泣いた。

親がどうしたかは知らない。

俺にそれ以上、その現場を見ている余裕が無かったからだ。


動揺して、出張中の相方に電話した。

電話口で、現場を離れるよう指示され、言われた通りにその場を後にして帰路を急いだ。

ほんの少しだけ落ち着いて、何か出来ることがあったのではないか、と言った。


「今の俺に何が出来るんだい?」


相方に言われた。

確かに、動揺して泣きそうになりながら相方に電話することくらいしか思いつかなかった俺に、その場で出来ることなど無かった。

マンションに着くまで、電話に付き合ってもらって、何とか帰るのがやっとだったくらいだ。

帰宅した今も、心臓がバクバクいっているのだが、文章にすることで、少し落ち着こうと考えて、今パソコンに向かっている。

・・・・実際、少し落ち着いてきた。

とは言え、手が震えて良いて、タイプミスが酷いのだが。


動物が何かは判らない。

近くのショッピングモール内にあるペットショップで身請けしてきたばかりの、箱に入った状態だったからだ。

箱の大きさから、子猫か子犬か兎だと思われる。

後続車に轢かれて、箱がつぶれ、子供が泣きだしたところまでは確認した。

中が無事だと良いのだが・・・希望的観測過ぎるだろうか。


関係ないと言ってしまえばそれまでだが、こつぶも同じペットショップで身請けした。

親の自転車のかごには、ペットショップの大きな袋があったから、たぶん新しく迎えた家族のための何某かだったのだと思う。


気の毒に思う。

が、それ以上にビックリしてしまって、何もできなかった。

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