第160話 家族について

唐突に。

本日2016年11月11日は、10年目の挙式記念日になる。

たまたまカウンセリングの日と重なり、そんな話をちらっとしたら、カウンセラーさんの食いつきが思いのほか良くて、今日のカウンセリングは結婚についてがメインになった。


カウンセラーさんにも話したのだが、俺には結婚するまで、結婚のビジョンが何もなかった。

これは実家の家庭環境に由るところが大きいのだが、微塵にもポジティブな絵を想像することが出来ず、憧れたこともないし、焦ったこともなかった。


相方だったから、結婚する気になったのだ。


俺の結婚観は、常に公言していることだが、結婚はゴールでもスタートでもなくて、生きていく上での選択肢の1つでしかないから、別にしなくたって構わないものだ。

憧れるようなものでもない。

ただ、その「しなくても構わないこと」をあえてするのであれば、折角結婚した以上は、その選択肢をお互いに尊重し、ポジティブに維持し続ける努力は必要だと思っている。


そう話したら、「相方さんと結婚したのはなぜですか?」とカウンセラーさんに訊かれた。


「相方となら、ポジティブに維持し続ける努力を、お互いに無理なく出来ると考えたから。」


と答えた。

実際、俺はこの10年、無理な努力はしていない。

片付けと掃除が壊滅的に出来ない俺に対し、相方が呆れることは多々あるので、その辺りの努力は、本当はもっと頑張らないといけないとは思いつつ、つい甘えて&怠けている。

済まん相方。


「結婚にビジョンがないって仰ってましたけど、この10年ってどんな10年だったんですか?」

とも訊かれた。


実は俺と相方は、挙式記念日の11月11日と、入籍記念日の6月22日には、「この○年、振り返ってどうだった?」とお互いに話している。

大抵は、何だかんだと楽しかったね、という辺りで落ち着く。

2年前はそれどころではなかったのだが。

なので。


「何だかんだと楽しかったと感じてますけど、そもそも理想もビジョンもなかったので、まっさらなトコロから築き上げてきた10年ですかねー。」


と答えた。

カウンセラーさんは重ねて。


「まっさらなトコロから築き上げてきた10年、って、何色ですか?」


何とも抽象的なことを訊かれて、ちょっと困ったのだが。


「俺も相方も画家でも写真家でもないから、綺麗なもの、上手なもの、専門的なもの、そういったものは描いてないですし、特別な道具も持ってないですけど、自分たちの持てっる具材を使って、自分たちが描ける限りの範囲で、なるべく良いものを描いてきた、そんな感じですかね。」


色で答えるのは難しかったから、キャンバスに例えて答えてみた。

敢えて色で言うなら、いろんな色があったように思う、それはパステルカラーだったり、黒かったり、どぎつくビビットな色だったり、それこそイロイロだ。

でも、全体をひっくるめて見たら、それなりに纏まった感じに納まっている、そんなイメージが浮かんだ。

相方はどうだろうか?


家族の在り方は千差万別で、多分正解はないのだろう。

相方は、「家族だから」と言う何とも抽象的な理由で(あるいはそうとしか表現できないのかも知れないが)俺を支えてくれている。

正直、「家族だから」ではあいまい過ぎて、さっぱり理由にならない俺にとっては、何度言われても意味が判らない。


だが、それでも、支えてくれている事実はしっかりとあって、それはとてもありがたい。

これから先も、何度も記念日を一緒に迎えたい。

そう思っている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る