第115話 相方のケア
更に引き続く話になる。
第114話でも触れたが、俺は相方に「早く帰ってきて」と泣きながら訴えた。
相方は「うん」とは言わなかった。
帰宅後、落ち着いてから、「何で『うん』って言ってくれなかったの?」と訊いた。
答えは「イラついたから」だった。
ふと思い当ることがあった。
相方は、以前に比べて、明らかに俺に対し、イラつくことが多くなった。
正確には、「イラついていることを隠さない」ことが多くなった。
俺は不安になった。
だから、思い切って訊いてみた。
「最近、俺に対してイラつくこと増えた?」
答えはNO。
「前は、こちらの感情を押し殺していなければいけなかったけど、最近は俺の調子が良くなってきたから、感情が出せるようになってきた(意訳)」
とのことだった。
成程な、と思った。
確かに以前の俺に対し、今のようにイラついた態度をとられたら、その都度筆舌に尽くせない絶望をしていたかもしれない。
相方が俺に対し、素直な感情を出せるようになったのは良いことだと思う。
それと同時に、だが、相方にもケアが必要なのではないかと考えた。
その話をしたら、「他人の心配してる暇があったら自分のことを何とかしてくれ(意訳)」と言われてしまった。
軽く凹んだ。
相方いはく、特別なケアの必要性は感じておらず、しいて言うなら「1人の時間」がとれていればいいとのこと。
宿泊を伴う出張が多いとはいえ、一緒に暮らしている限り、俺が言うのもナンだが、なかなか1人だけの時間を作るのは難しい。
だから今も、「もし今1人の時間が必要だったら、ちょっとコンビニ行ってくるけど?」と言ってみた。
相方は、「そんな必要はない」と言った。
「キミはそんな風に気を回している心算かも知れないけど、それは言い換えれば僕がキミに『出ていけ』って言ってるのと同じことなんだよ。僕はそんなに人でなしか?」
答えに詰まった。
ついさっき、救急車が通って、耳を塞いでにゃーにゃー鳴いていた俺に、「(1人になりたいから今すぐ)出ていけ」と言うような相方じゃないのは判っている。
相方のケアがしたい。
だが、今の俺に出来ることは限りなくなさそうで、泣きたい気分になっている。
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