第96話 頑張ってはみたものの
一昨日の夜から引きずって、昨日は気分が非常にすぐれない1日だった。
夕方までは。
一応昼間に散歩に出たりもしたのだが、どうも気分が浮上しない。
そんな夕方、北海道に日帰り出張に行った相方から、今から飛行機に乗るよ、と電話がかかってきた。
そこで、今日がつまらなかったことを話した。
相方は、「今日をこのままつまらない1日にするか、良い1日にするかは自分次第だよ。」と言った。
俺は、つまらない1日は嫌だと思った。
だから、発売日より前に入荷したという本屋に、本を買いに行こうと、電車に乗るべく出かけた。
その時間、19時。
普段俺が使っている駅は、帰宅ラッシュで改札口からして混んでいた。
怖いと思ったが、本を買ったら、相方も喜ぶのではないかと思って、(自分の分と2冊買う予定だった)頑張って改札を通り、ホームに立った。
ホームでも人があふれていて、来た電車は空いていたのだが、我慢できずに1駅で降りた。
そして、4km歩いて帰ってきて、家の中で泣きながら震えていた。
帰宅したのは21時だった。
21時半に、相方から羽田を出たとメールが届いた。
すぐさま折り返し、本を買いに行こうとして失敗したことを話した。
相方は、「(昨日&今日のテンションから鑑みて)そんなの当たり前じゃない。」と言った。
俺は悲しくなった。
続けて、「今日はもう寝てなさい」と言われた。
仕方なく俺は、布団に入った。
でも30分我慢して、我慢しきれず、ヤンデレている友人に電話した。
顛末を話すと「それは頑張ったね」と言ってくれた。
また、「失敗してもチャレンジ出来たんだから良いんだよ」とも。
ほっとした。
そのあと、雑談を交えて何だかんだと1時間くらい喋っていただろうか、すっかり落ち着いた頃に相方が帰ってきた。
折角なので相方に電話を渡し、相方も友人と少し話して、それから電話を切った。
帰ってきた相方と、話をした。
電話した際に、「頑張ったね」と相方から言って貰いたかった、と言うこと。
ヤンデレている友人は、どういうわけか、そのときに言って欲しい言葉をさらっといつも言ってくれている、と言うこと。
相方は、「僕はとてもじゃないけど、頑張ったね、なんて言葉はかけられなかったよ、そんなこと思いもしなかったもの」と答えた。
相方は、正直だ。
「思いつきもしない言葉を望まれても言えない」と言うのは、言われてみれば至極当たり前の話で、それなら仕方がないな、と俺も思った。
ただ、「当たり前じゃない」と言われてショックだったことは伝えた。
また、「そう言われた俺が、どう思うかは考えなかったのか?」と聞いた。
相方は、「そんなことを考えている余裕はなかった」と言った。
そこで、俺は改めてはっとした。
相方も人間だ、いつも冷静にどっしりと構えている印象があるので、忘れていたが、取り乱したり余裕が持てないときもあって当然だった。
相方は、俺が震えながら鳴き声で話した電話の向こうで、一昨日から引きずっていたテンションから、それはどう考えても無謀だっただろうと考えたのと同時に、無謀なことをした俺に対し、冷静ではいられなかったのだ。
今は落ち着いている。
本は、また今日、買いに行こうと思っている。
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