第91話 うつ病の情報を集めるということ

第90話に引き続く話になるのだが、今日帰ってきた相方に、俺がうつになってから、その手の本を読んだことがあるか聞いてみた。

相方は、あると答えた。

実際、いろいろと本もさらっとは読んだし、ネットでの文字情報も調べたらしい。

それでも、家にはその手の本は1冊もない。

もし、俺がその本を見てしまったとき、どう思うかが判らないから、という配慮からだった。

相方の気配りに改めて脱帽させられた一幕だった。


参考になったかを聞いてみた。

参考にならないということはないと思う、と相方は答えた。

ネットには、俺は調べたことがないのだが、うつで苦しんでいる人の声や、その家族の声、またお医者先生の声など、いろいろな情報がたくさんあるらしい。

ただ、それの情報収集も俺の罹患当初ではなく、少し落ち着いてから始めたのだそうだ。

俺が罹患して、何も出来なくなっていたころ、相方は相方で俺のことでいっぱいいっぱいになっていて、家では仕事も出来ないし、本も読めないし、TVゲームも出来ない、そんな状態だったらしい。

俺は余裕がなくて、当時の相方の様子は、まったく覚えていないのだが。


逆に俺がなぜ情報収集をしていないのかと言うと、単純にお医者先生とカウンセラーさんを信頼しているというのもあるが、俺はまだ自分自身の判断能力に信頼をおいていないし、そんな状態での自己判断は危険だと思っているからだ。

巷にあふれる情報は、セカンドオピニオンの代わりにはならない。

そして今、セカンドオピニオンが必要かと言われると、俺はその必要性を感じていない。


相方は、今でもネットや本で調べたりはしているらしい。

でも、俺が訊くまで、そのことについて語らなかった。

今回、俺は興味本位で初めて訊いてみたのだが、それに普通に答えてくれた理由は、「俺が今元気だから」だそうだ。


確かに、これだけ書けている俺は、元気だと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る