第80話 ストレスについて

「ストレスが原因」と言う言葉がある。

これは非常に便利で、かつ無責任な言葉だなと思っていた。


実は2014年4月ごろから、俺はうつを発症していたのではないか、と相方は言う。

帰ってくると、たいてい電気もつけない真っ暗いリビングで、柱に寄りかかって膝を抱えてぼーっとしていたそうだ。

当時は相方もうつ病とは知らず、その年の1月から新しい職場に転職したので、ちょうど疲れがたまってきた頃なんだろう、と思っていたらしい。


今まで敢えて触れてこなかったが、うつになったきっかけは、職場の人間関係とその仕事内容だった。

1月から3月までやっていた研修内容がほぼ役に立たないという、現場での仕事をやりくりするのは、正直大変だった。

その上に、これはお互い不幸な事故でしかないのだが、インストラクターとの相性が悪かった。


同期は6人いたが、入社2週間で1人が辞め、研修が終わり現場に入ってから暫くして、俺が眠れなくなったりして、出勤できない状態を上手く説明できないままに、欠勤連絡を毎日入れていた5月下旬~6月頭辺りまでの間に、また1人辞め。

残った俺以外の3人が、今でも同じ職場にいるのかどうかは、連絡を取っていないので判らない。


ただ、潜在的には、もっと根の深いところに原因があるのだろうな、とは思っている。

第23話で、実家の人間関係がちょっとややこしいと書いたが、そこに原因があるのだ。

詳細を書くと、それだけで1本書けてしまうくらいに濃いのでそれ以上は触れないが。

また、精神衛生上、まだそこに触れて、面と向き合うだけのエネルギーと覚悟と度胸が足りない。

ついでに、面と向き合ってもらわなければならない相手にも、その根性はないだろう。


実家の人間関係は、どうしようもないくらい俺のストレスになっている。


多分、「ストレスが原因」とされているすべてにおいて、深く掘り下げれば間違いなく具体的な原因があるだろう。

それを、簡単に「ストレスが原因」にしてしまうのは、どうなのだろうかと思っていた。


だが、今になって思えば、「ストレスの具体的な原因と正面切って向き合う」には、えてして、相当なエネルギーを使うことになるだろう。

弱っている人に対し、それをしろと言うのは、酷だ。


「ストレスが原因」は、多分、優しい言葉なのではないかと、今は思う。

原因は、本人が1番良く知っていて、それを外部からはつつかない、と言う意味で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る