第48話 外出できなくなったとき
時間軸は前後する。
第17話で、玄関に近寄れなくなったことがあると書いた。
この期間、実に1か月。
相方と一緒なら何とか外に出られるのだが、1人では玄関に近寄れなかったため、外出も不可能だった。
自宅のマンションは8階建ての6階で、まさかベランダから降りるわけにもいかず。
そんなとき、支えになり、また同時に心に傷をつけたものがある。
Twitterだ。
誰かと繋がっていたくて、1日中眺めていた。
眺めながら、友人たちの飯テロ写真なんかを見ると、心に刺さった。
なぜ俺はその場に居られないのかと、悔しくて悲しくて、閉じこもっている現実を否応なしに突き付けられて、辛かった。
相方には、「Twitterは見ない方が良い」と言われた。
確かに、そうするべきだったかもしれない。
相方は帰ってくるたびに、落ち込んでいる俺を目の当たりにしていたから。
それでも、誰かと繋がっていたくて、痛い思いをしながら、モニターにかじりついていた。
相方は相方で、俺が玄関に近づけるよう、工夫をしてくれた。
家には手触りの良い縫いぐるみがたくさんある。
俺が好きだからだ。
今でも、その名残で廊下には豆腐の縫いぐるみたちが整列しているのだが、玄関に近づけなくなってほどなくして、相方がおもむろにそれらを玄関近くの廊下に並べた。
そして、言った。
「豆腐、可愛いでしょ?撫でておいで。」
確かに豆腐は可愛い。
撫でれば手触りも良い。
俺は、頑張ったり頑張れなかったりしながら、1つずつ、豆腐の頭を撫でて行った。
昨日は2個目の豆腐まで行けたよ、今日は1個目だけだった、そんな報告を毎日していた。
あるとき、頑張った結果、全部の豆腐を撫でられた。
リビングに居た相方は、喜んでくれた。
嬉しかった。
相方が喜んでくれたことも、全部の豆腐を撫でられたことも、玄関に、少しでも近づけたことも。
だからと言って、すぐに1人で外出できるようになったわけではなかったが。
相方と豆腐のおかげで、再び外に出ることができるようになったのは確かだ。
そして、外への恐怖もありながら、同時に興味を失わずにいられたのは、Twitterで繋がってくれている皆だった。
ありがとう。
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