第19話 元気そうに見えても
ここまでの流れで、順調に回復してきているような印象を受けた方も多いのではないだろうか。
実はそんなことなくて、躓くときは躓いた。
後退したときは後退した。
例えば、近所の公園で開催された夏祭り。
家の中で聞こえていた祭囃子は楽しそうで、覗きに行きたくなった。
行ってみて・・・いや、正確には行けなかった。
マンションを出てすぐの信号を渡れば会場なのだが、人混みと音がとにかく怖くて、引き返さざるをえなかった。
家に帰ってきたら、聞こえてくる楽しそうに思えていた祭囃子が、不安を煽るものに変化していた。
同じ音なのに、である。
それから、暫く1人で外出が出来なくなった。
夏祭りに付随して、外が恐ろしいものに思うようになってしまったからだ。
こんなのは一例にすぎず、調子が良ければ大丈夫でも、ちょっと躓けはすぐにダメになる。
ただ、調子が良い時は本当に調子が良いので、自分でも、最早病気は治っていて、ただ怠けているだけなのではないか?と考えてしまうことも度々ある。
今現在は電車がとにかく怖いので、そんなことは思っていないが。
正直、電車が通る音も聴きたくない。
なので、家の中でもウォークマン必須である。
これを書いている今も、ウォークマンで外界の聴覚情報はシャットアウトしている。(しろたんが居るので、家の中で音楽をかけるのは遠慮しているのだ)
・・・そのうち難聴になるかも知れない。
話が少しずれてしまったが、元気なときは自分でも「最早病気は治っていて、ただ怠けているだけなのではないか?と考えてしまう」ことがあるくらいなのだから、傍から見たら、本当に病気なのかどうか、判らないだろう。
友人関係、および結婚相手(相方)とその親族には大変恵まれているが、元気なときは本当に元気そうに見えることもあり、友人たちの中には、俺が病人であるという認識が薄れてしまうこともある。その度に、申し訳ないが重ねて説明しているのが現状だ。
友人たちですらそうなのだから、他人様にはもっと判らないだろう。
電車の中で、ウォークマンの音漏れが、昔は気になってイラついていた。
今は、自分が垂れ流しているかもしれない状態で、そうなって初めて、もしかしたらかつて俺がイラついた知らない誰かも、同じ病気を抱えていたのかもしれない、と思い当るようになった。
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