第18話 目には見えないからこそ

以前、内臓系の病気を抱えていた友人と話をしたとき。

「骨折とか、目で見て判りやすいのって良いよね。」

と言う話題で盛り上がったことがある。

決して、骨折が良いと言ってるんじゃない、「見た目で判りやすい」のが良いのだ。


うつ病も内臓疾患も、見た目では判らない。

見た目で判らないから、他人様から見たら一見、元気に見えてしまう。

そして、主観的な辛さは当然だが本人にしか判らない。

(それは骨折も同じだが)


例えば。

電車が怖くてたまらない俺が、どーしても電車に乗らなきゃいけなくて、それなりに混雑している電車に乗り込んで、たまたま空いていた優先席に座り込み、目をつぶっていたとしよう。

寝たふりをしているわけじゃない、怖いから外界情報を視界に入れないようにしているのだ。

そして、隣に骨折している人と妊婦さんが座っていたとしよう。

そんな座席設定で、新たに優先席を欲している人が乗ってきた場合。


「オマエ寝たふりしてないでどけよ」


って、思われるかもしれない。

冗談じゃないのである、と言うか、それなりに混雑しているだけで人混み扱いで、それはそれで怖いから、足がすくんで立つことなんて出来ない。

でも、当然妊婦さんと骨折している人は、あぁこの人たちは仕方ないなで皆が納得する、それで済む。


だけど、「電車が怖い」「人混みが怖い」は、理解されづらい。


「私も人混み嫌いだよ。一緒一緒。」


と言われたこともある。

違う。そうじゃない。

「嫌い」なのと「怖い」のは違うのだ。


もともと人混みは好きではなかった。

だが、怖くはなかった。

今は、怖いのだ。人が、見知らぬ人たちが大勢いる場所が、たまらなく怖いのだ。

最近でこそ、我慢できるようになってきているが、酷かった時は「奇声をあげて泣きながら頭を抱えてしゃがみこみ、震える」くらいに。


だが、これも傍から見たらただの奇行だ。

人混みが嫌いなだけでは、そんな奇行には走らないだろう。


目で見てわからないからこそ、理解されづらいのは実感している。

だが、これはあくまで個人的な意見だが、同じ病気を抱えている人は、周りにカミングアウトをした方が良いと思う。

黙って隠していても、良いことは多分ないと思うから。

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