第9話 いろいろ試してみる

音楽が再び聴けるようになったことで、相変わらず電車は怖いし、本も読めないけれど、他にも出来なくなったことがあるんじゃないかと思って、その洗い出しをするために、体当たりな実験を片っ端からやってみた時期がありました。


結果。

鬱になった経緯を聞かれると不安になることが判った、とか。

電車は乗れないけどバスは乗れるとか。

妙に歩くのが遅くなったとか。

判断力が落ち、曖昧なことを言われるとさっぱり理解できないとか。


特に4つ目は如実でした。

あるとき、相方に話しかけたら「ちょっと黙ってて」と言われたので、黙ったんだけど。

いつまで黙っていたら良いのかが判らず、だけどどうしても話したい案件があったため、暫くしてから恐る恐る「話しかけても良い?」と聞いたら、「良いよ、何でそんなこと訊くの?」と逆に返され。

え、だってさっき黙ってろって言ったじゃん??え??あれ???みたいな。


あとは、予定が立てられない。自分で何も決められない。

もともと予定を立ててどーこーするタイプではなかったんだけど、明日何をしたらいいかさっぱり思いつかないので、「何したら良いと思う?」と毎日いちいち聞く生活。

相方は辛抱強く答えてくれていたなぁと、今でこそしみじみ思うけど、当時はそんな余裕はなかったから、言われたことをやるだけの日々。


これは、無気力とは違う。

ただ、判断ができないだけ。


と言うか。

実際、無気力だった時期もあったと思う。

その当時のことは、あんまり覚えていないのだけど。

ただ、同じ「自分では何も出来ない」でも、その意味合いは全然違うのだ。


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