2-2 〈傍観者〉と【スルー】

 静謐さすら感じるような静けさの中で、紙を捲る音だけが響く。

 迷宮都市アルヴァリッドの中にありながらも、まるで外界とは隔絶した地にあるかのような静かな世界に一人。

 まるで時間からも切り離されているかのような感覚に陥りながら、また紙を捲る。


 アルヴァリッドにある、ファルム王立図書塔。

 ファルム王国内でも最も蔵書が多いとされるだけあり、円柱状の建物の壁沿いに並ぶ書架にはギッシリと本が並べられている。

 階層を繋ぐように中心部には階段が儲けられ、吹き抜けとなった中央部にある柵をぐるりと囲うテーブルと椅子が設置されているが、利用者はほぼいない。


 そんな中で、また一枚ページを捲る。


 僕の目の前に平積みされているのは、錬金術や魔法陣、魔導具に使われる魔法陣――魔導陣などの研究書だ。


 つい先日のみんなの高熱に関しては理由も判っていない。

 ついでに僕が持ち帰ったアルミット草と似た葉の植物についてもまだ何も判っていないので、色々な本を読み、情報を収集しにきたのである。


 別に僕だけが特にやる事がないとか、そういうのじゃない。

 ほら、知的探究心を抑えきれないっていうか、うん。


 まぁそんなわけで、忙しい時間を割いてこうして調べているわけだ。


「……〈フェアリーの鱗粉〉に〈セイレーンの涙〉、〈マーメイドの紅玉〉。もう名前からしてファンタジーな薬の名前ばっかりだなぁ」


 高熱という症状に当てはまりそうな条件で見かけた病の薬として挙げられていた幾つかの魔法薬を見つめながら、つい独りごちる。

 ベルタ草と呼ばれる草や、ファミーリス草なんて言われてもまったく聞いた事がないんだけど。

 この本に書かれてる草なんかは、昔――初代勇者のリュート・ナツメがいた時代には存在していた薬みたいだ。


 なるほど、さっぱりだ。

 一応佐野さんのためにもこの文献の名前だけはチェックして帰ろう。


 気を取り直して、魔導具に使われる魔導陣に関する書物へと目を通す。


 一般的に魔法として知られているのは、言葉に魔力を乗せて紡ぐ『詠唱魔法』だ。

 詠唱魔法は”節の数”、”指定される文言”、”注がれる魔力量”という三つの要素から放たれるもので、詠唱魔法が完成すると、その属性の魔力色を放った魔法陣が浮かび上がり、そこから魔法が放たれる。

 使い手としてはエキドナが記憶に新しいけど、どうにも魔族については別格と考えた方が良さそうだ。魔族は〈普人族ヒューマン〉の放つ魔法とはあまりにもかけ離れた強い威力の魔法を、短い詠唱で放てるらしいし。


 この辺りはその内エルナさんにでも実践してもらいながら確認してみようかな。


 一般的な詠唱魔法ではあるけれど、発動時に浮かび上がった魔法陣を解析していく内に、幾つかの法則性が見つかった。

 その法則を利用して魔法を口伝しようと考えたために始まった解析だけれど、残念ながら地面に本物の魔法陣と相違ない魔法陣を描いても、魔法が発動する者としない者に分かれてしまうという差が生じてしまったようだ。

 その差を明確にしようと検証を重ねた結果、導き出されたのはスキルの影響らしい。「スキルのない者では、例え正しい魔法陣を描いても魔法は発動しない」という結果に落ち着いたようだ。


 けれど、この世界の人々もそれで終わるわけにはいかなかった。


 どうにかして解析した法則性を活かし、魔法陣を利用した魔法研究が進められること数十年。

 ついにスキルさえなくても魔導陣を刻印する事で、魔法を発動できる存在――魔導具が生み出された。

 これにより、魔法スキルの所有者とそうではない者の間にある圧倒的な格差が埋められ、より暮らしの水準が高いものへと変わっていった。

 

 ――――これが魔導具の来歴みたいだね。

 てっきり魔法陣を描いて魔力さえ流し込めば、僕も魔法は使えると思ったのに、そうそう甘くないみたいだ。


 一度本から目を離して、伸びをしながら座っていた背もたれに背を預け、ゆっくりと理解を深めるように得た情報を整理していく。


 そうして一つ深呼吸して目を開けると――お爺さんが僕の顔を覗き込んでいた。


「……あの……?」

「おぉ、おぉ、これはすまなんだ。驚かせるつもりはなかったんじゃよ、許しておくれ」

「はあ、まぁ驚きはしましたけど怒ってはいませんよ?」

「ほほっ、それは何より。さて、少し隣りに座っても良いかのう?」

「えぇ、どうぞ」


 好々爺然とした白髪の老人は、垂れ下がった目尻に皺をさらに増やしながら、僕の隣にある椅子に腰掛けた。


「ここまで熱心に知識を得ようとしておる若者は、つい珍しくてのう」

「そうですか?」


 そうは問い返しつつも、このお爺さんの口にしている意味はなんとなく僕も察しがついた。

 閑散としていて、時折見かける人も専門的な分野にしか興味がないのか、早足で目当ての本を探し、それを見てすぐに出て行ってしまう人が数名いるぐらいだ。


 なんというか忙しないというか、あまりゆっくり本を読むような人は滅多に見かけない。


「世界は魔物が跋扈し、今や魔族や魔王などという存在もおる。そんな中で貪欲に知識を得ようとする存在は、決して多くはないんじゃよ」

「……なるほど」


 日々の生活に余裕がないのでは知識は最低限でもいい。

 余裕がない生活では娯楽がなかなか生まれないように、知識もまた専門的な分野に携わる者でもなければ必要ない、という当たり前の真理なのかな。


 僕だって、もしもこの世界で生まれ育っていたら、きっと多くの知識を得る事の意味なんて考えたりもせず、日々をどう生きていくかといった考えばかりに捕われていたかもしれない。


「それにしてもお主、何やら面白い発想をしていそうじゃ。一つ、聞かせてもらえんかのう?」

「面白い発想、ですか?」

「うむ。さすがは異世界からやって来た存在、というところかのう」

「……お爺さん、ボケてるんですか?」

「ほほっ、儂はボケとりゃせんよ。おるのはお主の方じゃろう、ユウ・タカツキ」


 思わず目を瞠りそうになって、僕はお爺さんをじっと見つめた。

 僕の名前を知っているにしても、どうにもエキドナのような、魔族のような危険さは感じられないのだ。むしろ穏やかな祖父と会って話しているような、そんな錯覚すら覚える程に僕の心は凪いでいる。


 ――なるほど、どうやららしい。

 理解して苦笑を浮かべて嘆息する僕とは対照的に、お爺さんは実に愉快そうに細い目をさらに細めた。


「……やはり、お主は聡く賢しい。儂の正体を見破るのも早いのう」

「これだけヒントを出してもらっておいて、それでもシラを切るわけにもいかなそうですしね。――神様、と呼ばれる存在、ですね」

「左様。儂こそが――『叡智』を司る神、ルファトスである」

「あの、そんな「かの有名な」みたいな表現で溜めてまで自己紹介されても、僕この世界の神様事情とかイマイチ知りませんけども」

「っ!?」


 お爺さん改め、神様がショックに胸を押さえた。


 無茶言わないでほしい。僕は平々凡々な日本人だよ。

 八百万の神々という神様のバーゲンセールをしつつ、正月には神社、葬儀は仏教、冬にはキリスト教にかこつけつつもサンタという名の貢物をくれる相手に媚びを売るという、一年を通して一貫性がないどころか、そもそも僕に至っては神の存在すら信じてなかった人間だ。

 いや、この世界に女神様がいるのは聞いてるよ。

 ステータスのフレーバーテキストさんも女神の一言を載せてるし、アルツェラ様の存在があるんだろうなって程度には信じてもいるよ、うん。


 だからって、そんな僕がこっちの世界に来てそれなりには時間が経っているとは言っても、神様の名前なんてしっかりチェックしてるわけがない。


「……儂は『叡智』の神ルファトスじゃ」

「あ、はい」

「……それだけかの?」

「……存外面倒臭い性格なんですね、神様」

「っ!?」


 なんか大袈裟なリアクションを期待するように見られても、僕には無理な相談なのに。

 涙目になられても困る。


「ま、まぁ良かろうて。そういうお主だからこそ、アルツェラもやけに気に入っておるのじゃ。うむ、儂問題ない」

「アルツェラ様が僕を気に入っているんですか?」

「そうじゃ。戦いの能力に秀でるどころか、いっそ正反対なところにありながらも魔族の一角を崩してみせたりとのう。まぁもっとも、あやつがお主を気に入っておるのはこの世界に呼び出した時からじゃが……」

「あぁ、そうでしょうね……」


 確かに僕の称号には〈女神の抱腹対象〉といういかにもな称号があるしね。


「――さて、冗談はここまでにしようかのう。わざわざこうして姿を見せたのは、何もこうして雑談に興じようという訳でもないからの」


 まぁ確かにそうだろうとは思ったけれど。

 お爺さんことルファトス様は細い目を少しだけ開いて、僕を見つめた。


「いくつか、疑問に答えてやろうと思うてのう」

「疑問、ですか?」

「そうじゃ。そろそろお主も仮定や仮説ばかりではなく、少しぐらいは明確な答えが必要じゃろう?」

「まるで僕の日々を見てきたかのような言い草ですね」

「我々神にとっても、お主らは十分に注目に値しておる。――殊更、お主のような存在には、のう」

「……なんか迷惑な話ですね」

「お主、なかなか失礼じゃのう……」


 なんだかドン引きするような目で見られていたけれど、僕のプライバシーまで全部見られているんだとしたら、迷惑な話以外の何物でもないんだけども。

 僕のジト目にルファトス様もジト目で返しつつも、気を取り直すかのように一つ咳払いをしてこちらを見つめた。


「さて、まずはお主だけが気付いておる違和感――つまりはお主らはこの世界に来る際、かつての身体をベースに作り変えた身体を与えられておるという点についてじゃがのう。――正解を言えば、その考えは正しい」


 唐突に告げられた、僕の抱いていた疑問の残る考えに対する解答。

 自分の身体との見た目なんかでの差はないし、ご丁寧に腕にあるホクロの位置まで一緒。ましてレベルまで上がってしまえば、僕だって気付かなかったような小さな違和感があったからこそ抱いた疑問を見通し、この人は答えてみせた。

 正直、目の前に自分が神だと言いながら現れるような存在なんて信じるつもりはなかったけれど、もはや疑いようはなかった。


「……つまり、僕らの身体はやっぱり作られたものだったんですか」

「左様。お主らの身体は神の力によって作られた。とは言え、特にそう難しく捉えることはない。一般的なヒューマンに比べれば多少は頑丈にはなっておるが、基本はあくまでもヒューマンのままじゃ。老いもすれば子も産める」

「……そうですか。じゃあ、僕らは向こうの人達にとっては死んだ人間として処理されている、ということですね。姿が消えたとかではなく」

「うむ。魂魄の器であった肉体は残っておるからの」


 改めて向こうで死んだと告げられて、思わず言葉に詰まった。


 分かっているつもりだった。


 けれど、こうしてハッキリと断定されてしまうと…………うん。

 別になんとも思わないかもしれない。


 他のみんなには言い難い内容ではあるけれど、別に改めて言わなくちゃいけないような事実じゃないんだし。

 昨日の赤崎くん達の一件で過ぎった可能性――つまりはこの世界の病気による、僕らの抗体のなさといった問題は考えなくていいのなら、僕としてはありがたい情報だ。


「……自分の身体が変わってしまった事に「この身体は偽物なのか」とか、そういった葛藤は生まれんのか?」

「え? いえ、別に偽物も何もないでしょう。そもそも地球での人間としての身体のままの方が色々と厄介な事が多そうですし、特には。むしろそれを聞いて、おかしな病気に蝕まれなくて済むっていう意味では安心しましたけど」

「そ、そうか。……やはり変わっとるのう」


 ぼそっと呟いてる失礼な一言はしっかりと聞こえてるけども。


「幾つか質問に答えてくれるって、さっきそう言いましたよね?」

「うむ。何か気になっておる事でもあるのかの?」

「えぇ。――僕の職業についてです」

「ほう……?」


 僕だけに与えられた、〈傍観者〉という職業について、僕はずっと不思議に思っていた。


 なんだかんだと言いながら、こっちの世界に来てからというものの、僕は以前ほど傍観者状態で周りを見ているだけといった行動はしていないし、お世辞にも傍観者とは到底言えるような状態ではない。

 なのにどうしてか、職業が変わろうとしない。

 それが全員かと言えばそうではないらしく、赤崎くん達を筆頭に、今のみんなは職業が更新されている。例えば赤崎くんなら〈勇者『盾』〉といったように、その職業と戦い方の象徴を表すような名前になっているのである。


 今のところ、まだそれらしい行動を起こしていない橘さんと僕だけが、職業という括りが変わっていない。

 彼女もまだ学生のままで、僕もまた傍観者のままだ。


「もしも行動によって左右されて職業が更新されるのであれば、僕は〈傍観者〉足り得ない。ただの〈傍観者〉であったなら、こうしてあなたのような神とも出会わないでしょうし、エキドナとの戦いで目をつけられる事もなかったでしょう? 僕は当事者となって行動を起こし、皆を巻き込んでいます。これでは筋が通らないですよね」

「ほう、ほうほう。なるほど、やはり鋭い。して、その理由をどう見ておる?」


 愉快そうに声を弾ませて、まるで謎解きをさせるかのような楽しげな物言いのルファトス様の声を聞いて、僕は僕自身が立てていた仮説の正しさを心のどこかで確信した。


「……僕にが、〈傍観者〉というわけですか」


 エルナさん曰く、職業とは『選定の神』によって定められるそうだ。

 例えば村に住まう人ならば〈村人〉、冒険者として行動している者ならば〈冒険者〉、アメリア王女様ならば〈ファルム王国王女〉といった具合に定められ、職業として与えられる。

 職業がまるでゲームのように職業補正としてステータスに影響したりといったものでもなく、要するに「その人の在り方」を指すものとなるそうだ。

 けれど、そうではない者もいる。それは、神によって歩むべき道を定められた存在。巫女や勇者など、神によって道を定められ、自ずとその職業が指し示すような環境へと進む者だ。


 つまり僕に求められた役割は、〈傍観者〉だったという意味なのではないか。

 その話を聞いた時、僕はこの可能性に行き着いていた。


 ――なら、何故エキドナは僕を狙った?

 ――もしも僕に与えられた運命が〈冒険者〉なら、そんな事態に陥ったりもしなかったのでは?


 その疑問を払拭してみせる要素が、僕にはあって。

 その可能性とは――――


「しかし、お主は【スルー】という神さえも予想しなかった【固有術技オリジナルスキル】を手に入れた。故に、


 ――――僕の持つ【スルー】というスキルが、そこまでの役割をもしも果たしているのだとすれば、ある意味納得できる内容なのではないか、と考えた事がある。

 はたしてそれは、肯定されてしまった。


「って、ちょっと待ってください。まさか【固有術技オリジナルスキル】は神様が作ったわけじゃないんですか?」

「うむ、そうじゃな」


 どうやら、かつての僕の推測は間違っていたらしい。

 てっきり僕は、女神アルツェラが『スルー』の意味を曲解してしまったが故に僕のスキルが生まれてしまったのかと思っていたけれど、少し違っていたみたいだ。


「お主らが【固有術技オリジナルスキル】と呼んでおるのは、正式には〈原初の因子オリジン〉と呼ばれる代物じゃ。お主らが【原初術技オリジンスキル】と名付けておるのはある意味では正しいのじゃよ」

「〈原初の因子オリジン〉、ですか」

「左様じゃ。本人の特性によってのみ生まれる、唯一無二のスキルじゃ。これは我々が意図的に操って創りだすような真似はできぬし、ましてやお主らはそもそもこの世界にはいない存在じゃからの。必然的に〈原初の因子オリジン〉はお主らに宿る、という訳じゃ」


 この世界にやって来た僕らは、文字通りに〈原初〉の存在となってしまう。

 それ故に、『スルー』という単語が持つ「英単語としての意味」と「若者言葉」として使われている意味を持つそのものがスキル化し、【原初術技オリジンスキル】の【スルー】が生まれてしまった、という事だろう。


「……つまり、「〈傍観者〉である事を【スルー】してしまった結果、〈傍観者〉とは真逆の結果を引き寄せてしまっている」というわけですか」

「うむ。本来遭遇すべきではない事件に遭遇し、それを解決してみせた。普通であればまず間違いなく命を落とす戦いでありながらも、しかしお主が運命を【スルー】し、お主らは死ななかったんじゃ」

「……な、なんだろう、すごく理不尽だよ……!」

「カッカカッ! 永らくこの世界を見てきておるが、お主ほど運命というものに真正面から喧嘩を売ってるような者は、見たこともないのう」


 呵々と笑うルファトス様だけど、僕はむしろ気分が落ち込む一方だよ。

 僕から見れば、レベルも上がらないのに災いが猛ダッシュして突っ込んでくるようなものじゃないか……。


「なんで僕に〈傍観者〉なんてものを定めたんですか……。そもそもただの〈学生〉だったなら、そんな事にはならなかったんじゃ……」

「決まっておる。お主自身のせいじゃ」

「へ? 僕のせいですか?」

「例えお主が”ありのまま”でいたとしてもこうなる可能性があったのじゃ。お主は周りに対して与える影響が強すぎる。それを回避する意味で、お主には〈傍観者〉が与えられたのじゃが……結局は元の鞘に戻ったとも言えるかもしれぬ」

「僕の与える影響って、そんなの余計なお世話だったと思いますよ。僕なんて至って普通の、平々凡々な高校生です」

「……お主、鏡を見てそれを真顔で言えるのかの?」

「言えるわけないじゃないですか。バカみたいですよ、それ」

「そういう問題じゃないわい!」


 おかしいな、ルファトス様がツッコミを入れる理由が分からない。


「とにかく、お主のその不幸を招き入れるかのような状態については諦めることじゃ。お主にはお主の持つ特色が強すぎて、神も介入できなくなってしもうておる。運命と思って受け入れよ。それに、お主らの世界のヒーローは行く先々で殺人事件が起きるんじゃろ? 似たようなもんじゃ」

「酷い勘違いです。それは創作物の探偵限定ですからね。そもそも僕、レベルも上がらないのにこれからどうしろって言うんですか」

「ふむ。アルツェラが抱腹しておったのう、そういえば」

「知ってたのか、アルツェラ様は……ッ!」


 どうやらアルツェラ様が抱腹していた理由は、僕の『存在力スルー』の件だったらしい。ホント、笑ってるだけじゃなくてどうにかしてくれないかな。


「しかし、それではあまりに酷じゃのう。レベルが上がらぬのでは苦労もしよう。どれ、儂がお主に加護を授けよう」

「ま、魔法とかですか!?」

「……儂、『叡智』担当。『魔法』担当、違う」

「あ、はい」


 片言で眉をピクピク動かしながら言われてしまった。

 でも、『叡智』の神なら何か、色々な知識が手に入ったりするかもしれないし、期待できる。


 ルファトス様が僕の額に触れると、視界が眩い光に包まれた――――











 ――『『叡智の神』による加護をスルーしました』。









「……」

「…………」

「……なんなんじゃ、お主はぁっ!」

「叫びたいのは僕の方ですよ!」


 そりゃそうだ、とも思っていたけれどね……。 

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