mimicry writing ~西村賢太~

仙石勇人

第1話 浦島太郎

浦島太郎(32歳独身)は、日がな、行き場のない性欲を鬱屈とした毎日に持て余すような生活を送っていた。自ら進んでするはずもない漁師という仕事をほぼ惰性のままにこなしていた。一日の仕事を終え、家に帰れば、目に移すだけで運気も逃げ出すようないかにも覇気のない母親に、「てめえのせいでこんなくだらねえ生活してんだ。わかってんのかっ」とどうしようもない自分をここまで育て上げてくれた母に対する恩義も持ち合わせず、時たま暴力をふるうような腐行を繰り返していた。


ある日、大量のゴミの打ち上げられた小汚い浜辺で、おそらく将来は中卒の肉体労働者になるであろうガラの悪い近所の子供たちが、一匹の子ガメをつつきまわしているのを見たので、日頃の行いの罪悪感からか、妙な正義感が働き、助けて海へ逃がしてやった。数年後太郎が海で釣りをしていると、大きな亀がやってきて、昔助けてくれたお礼にと海の中の竜宮城へと連れていかれた。この見返りに、ひどくうれしい気持がして、一端の善人を気取れたような気持ち。「やっぱ僕は特別な人種なんだ。いつも俺を馬鹿にしてきやがる村の連中は、せいぜい芋ブス彼女の乳でも吸ってるんだなあ」

 竜宮では美しい乙姫さまに歓迎され、魚たちの踊りや素敵なご馳走で毎日もてなされた。しかし、性犯罪者の父を持つ性が出たのか乙姫さまを見る目が情欲に滲み、油ギッシュで小太りな暑苦しい見た目も相まって、気づかぬうちに乙姫からは気味悪がられてはいたが、楽しい毎日を過ごした。


しかし、何日か経つと、根がひどく甘ったれにできている太郎は村に残した母のことが気になり、だんだんとしおらしく、センチメンタルな心持ちになってきた。それを察した乙姫さまは「村に帰って、もし困ったことがあったらこの玉手箱を開けなさい」といって、太郎を送り出した。


太郎が亀の背に乗って村に帰ると、自分の家はおろか村の様子がすっかり変わっていて、太郎の知っている人が一人もいなくなっていた。太郎が竜宮城で過ごしているうちに、地上では何十年もたっていたのだった。困った太郎は、ふと、乙姫様にもらった玉手箱のことを思い出した。


ふたを開けると、ファッションヘルスの無料券が数枚入っており、店名の個所には「ヘルス竜宮城」とあった。また、併せて乙姫さまの真っ赤なパンティが入っていた。

興奮した太郎はすぐさま近くの個室トイレに入り、自らの放射物でそれを白く汚してしまった。

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