第5話 隠れ見る者
フェリシアが獣の背に乗り逃げていたその頃、木の上から会場内を見下ろす
者達がいた
「うふふ、面白いことになりそうね」
1人が楽しそうに口元を緩める
冷笑を浮かべる女の隣にいた少女は不満げに唇を尖らせた
「お姉さま、あれの何処が面白いんですか? 無様に逃げてるだけじゃないですか」
こんなの見ていても楽しくない、つまんないと言う少女に
女は少女が喜びそうなことを言う
「あとで存分に好きなだけ殺さしてあげる、だから今はおとなしくするのよ?」
「はーい!」
少女は一気に上機嫌になり、ニコニコと会場内に視線を戻した
でも、やはり長くは続かず。思い付いたことを隣に居る、お姉さまに質問する
「お姉さま、銀狼は竜に匹敵するほど賢く強いって聞いてました、だけど、なんで攻撃しないの?」
「それはね、出来ないの。昔、ある人間と約束したことだから」
「ふーん」
眉根をよせて聞いている少女は、人間と約束なんて馬鹿じゃないのと呟く
そして、思い出したかのように上を見上げる
「アイツは何しに来たのよ、なにもしないでボーっとして!」
言葉通りボーっとしていた青年は少女の喚き声に瞼を閉じ、無視をきめこむ
返事をしない青年に少女はムスっとしたが、お姉さまの言葉で視線を戻す
「彼は銀狼から大事な物を盗ってきてもらったのよ」
「銀狼から?」
「ええ、銀狼は死んだら美しい宝石になるの、宝石って言っても魂が結晶になったものだけど」
「じゃあ、その宝石をとってきたってことですか?」
「そうよ、銀狼は家族を大切にする種族。もし、魂の結晶を盗られたりしたら……」
女は視線を会場内に向ける
「リオン、そろそろ出番よ」
『リオン』と呼ばれた青年は興味無さげに空に浮かぶ月を見ていた
私は自由を求め王太子殿下から逃げ延びます! 蒼井 茉己 @aomidori
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